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愛しい番①(sideレーク)
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「ユリスと婚約したい、か。」
「ああ。任務のために・・・協力してくれ。」
レギン・シュイル子爵のもとを訪れたのは、他でもない、ユリィ───ユリス・シュイルに、婚約を申し込むためだった。
任務だなどと、もっともらしい理屈を並べて、本心を隠しながら、言葉を紡ぐ。
「・・・相応の報酬は払う。」
「いくら出せますかな?」
この方は、何よりも利益を重んじる人物であることは、事前の調査で把握していた。
金さえ積めば、この婚約にも応じる可能性がある。ならば、差し出すべきはただ一つ。
「全財産。」
小国一つを買えるほどの資産。それが私の交渉材料だった。
「冗談が過ぎますよ、ヴォルロード卿。」
しかし、意外にもあっさりとかわされてしまった。もっと具体的な金額を提示すべきだったと反省する。
「可愛い一人息子を、そう易々と渡せる訳ないでしょう。お引き取り下さい。」
その言葉は鋭く、氷の刃のように胸に突き刺さった。
だが、今ここで退くわけにはいかない。拳を握り、力を込めて、声を張る。
「金は払う。彼のことも守る。任務が完了したら、婚約を解消しても構わない。」
どうにか平静を装ったつもりだったが、喉の奥が引き攣ってしまった。焦りで心臓が早鐘を打つ。このままでは、交渉決裂だ。
人の姿でユリィに近づく術を・・・完全に失ってしまう。
「ユリスの経歴に傷を付けても構わないと?」
「いや、それは、違う・・・。」
私は、自身の言った言葉の意味を理解して、口ごもってしまった。
「はあ。惚れたなら惚れたと言えばいい。金はいらん。ただし、泣かせたら全財産頂きますからね。」
「・・・!」
思わず背筋が伸びる。静かに放たれた一言だったが、その瞳は真剣そのものだった。
シュイル子爵は、きっと最初から気付いていたのだ。私がユリィに対して、特別な感情を持っていることを。
隠していたつもりだったが、彼のような人物には通じない。
シュイル子爵は少し視線を逸らした後、ふっと表情を曇らせ、重たく口を開いた。
「ユリスは今、命を狙われているんです。私の雇った護衛では、歯が立たなくなってきた。・・・守ってやって下さい。」
決意の込もったその声に、身が引き締まる。彼は立場も威厳もある大人だ。それでも、深く頭を下げて懇願する姿に、ユリスへの愛情と、焦燥が滲み出ていた。
その想いの強さに応えるように、私は迷いなく答えた。
「番を守るのは、当然のことだ。」
私のその言葉を聞いたシュイル子爵は、目を点にさせていた。
───話し合いの後、シュイル子爵は私に向かって、「ユリスに事情を説明する。おまえも来なさい。」と、静かに言った。
その歩みの後ろをついていく間、緊張で心臓がじわじわと軋んでいた。
合図をしたら後から入ってくるようにと言われ、部屋の前で待機する。私は耳が良いので、扉越しに二人の会話を盗み聞きしていた。
少しの間待機していると、子爵から合図があり、そっと部屋の中へと足を踏み入れた。
簡単に挨拶をし、そして───
「母国、ギルンス国から帰還命令が出た。しかし、秘匿の任務はまだ終わっていない。婚約者がいれば、滞在を延長できる。」
私の口から出る言葉は冷たく、打算的に響くものだった。
「・・・。」
シュイル子爵をチラリと見ると、残念なものを見る目で、渋い顔をしていた。
「・・・お父様、いくら積まれたんですか。」
ユリィの小さな、凛とした声が空気を切った。愛らしい口元が動いているだけで、心が簡単に揺れ動いてしまう。
「探りを入れるな。問題ない、いずれ婚約破棄すればよい。」
彼のその言葉は、まるで私に対する当てつけのように聞こえた。
───ギルンス国の王族は、人と獣、二つの姿を使い分ける能力を持っている。しかし、それは国家機密として伏せられてきたことであり、その事実を知る者は、ほんの僅かしかいない。
私がユリィを見つけたのは、二年前のこと。
ギルンス国から、この国に移動してしまった緑竜を討伐しに来た時だった。
深い森の奥。団員たちの足並みに合わせていては、犠牲が出るのは時間の問題だった。そう判断した私は、結局、単独で竜と対峙することを選んだ。
回復薬も支援もない。普通ならば、絶望的な状況。
それでも私は、なぜか確信していた───この竜を倒すことには、特別な意味があることを。
風に乗って、甘い香りがした。
心の奥底が震えるような、甘い、甘い匂い───いるのだ、この国に。
私の、番が。
───獣人族には、“番”という、運命の相手が存在する。
先天的に定められた“番”の存在は、生まれた時から本能が知っている。
しかし、“番”に出会えたという獣人族は、全体の約一割に満たない。
───私は、産まれてから他人に興味を持ったことが一度もなかった。
愛だの恋だの、そんなものは時間の無駄だと思っていた。
けれど、番の気配を嗅いだ瞬間、そんな自負は音を立てて崩れてしまった。
「大丈夫か!」
獣の姿で泥だらけで倒れていた私を、助けてくれたのが、私の番・・・ユリィだった。
淡い栗色の髪、透き通るような水色の瞳、小柄な身体に秘めた優しさと強さ。
手当をしてくれた手が、あたたかかった。頬に手が触れるたび、どうしようもなく胸が高鳴った。
───ああ、この人だ。
私のすべてを捧げたい、たった一人の人。
「───どうした!よそ見してるとちゅーするぞ!」
見とれていると、番からの唐突な台詞に思考が飛んだ。
「んー!」
頬に、柔らかい感触が当たる。
───なに? 何だ? 何が起きているんだ。
心臓が、壊れそうだった。顔中にキスを浴びせられ、頭が真っ白になる。
耳や尻尾に触れられるたび、敏感に反応してしまう自分が情けないやら嬉しいやら───
「あ、オスだ。」
仰向けになっていた私に乗りかかり、ユリィはそう言った。
羞恥で頭が爆発しそうだった。
勢いよく起き上がり、軽く押し返す。
「わぁっ。」
バランスを崩したユリィのシャツがはだけ、白い肌が艶やかに覗いた。
理性が飛びかける。どうにか自制心を保ちつつ、つい、舌が、胸へ───
「あっ、こらっ!俺はメスじゃないから、おっぱい出ないぞ!」
・・・怒られてしまった。
───人の姿で堂々とユリィの傍にいられる時間は、とても特別なものだった。
ふたり並んで街を歩き、互いのイメージカラーを織り込んだ服を仕立ててもらう。その何気ない一日が、私にとってどれほど満たされた時間だったか───言葉ではとても言い尽くせない。
あの日、淫らな下着を身に着けたユリィの姿を目にしたときは、理性が揺らぎ、誘惑に呑まれそうになった。
・・・いや、正直、かなり危なかった。
結局、後日また仕立て屋を訪ね、アロマ殿からユリィが身に着ける予定だった下着をいくつか買い取ってしまった。
もしそれをユリィに知られたら、恐ろしいほど怒られるのは間違いない。
それにしても、ユリィの命を狙っている刺客たちは、どうにも様子がおかしい。
手に持つ武器は、ギルンス国のものであり、戦闘技術も、我が国特有の癖があった。
一体、何が起こっているのだろうか。
───秘めた想いを胸に、私はユリィへの手紙を何通も書き綴っていた。
しかし、いくら手紙を送っても、返事は来ない。
焦りに焦った。
契約的な婚約だと思っているユリィ。もしかすると、他の誰かと付き合っているのだろうか?
その相手を殺しかねない自分が、怖かった。
───いや、殺すだろう。確実に。
───どれだけ待っても返ってこない返事に焦りを覚え、私はついに、人の姿を捨て、狼の“ウルフ”としてユリィに会いに行く決意をした。
「ウルフ!」
ぱあっと弾ける笑顔を見せるユリィ。私には、“レーク”には見せないその笑顔。
「どこ行ってたんだよ、寂しかったんだからな・・・。」
すがるように抱きついてくるユリィ。細い腕から伝わるぬくもりと、ふわりと香る甘い匂いに、胸の奥がざわめいた。
我慢の限界だった。今までよく耐えてきたと、自分でも思う。
たまらず、私はそっと顔を寄せて、彼の柔らかな唇に、自分の口を重ねた。
微かに漏れる、ユリィの甘い声。その響きだけで、心臓が、身体が、疼いて疼いて仕方ない。
キスを・・・してしまった。
「ど、どうしたの・・・?」
怒る訳でもなく、ただ心配そうに見上げてくるユリィ。
口元に手を添え、ほんのりと赤らんだ頬がたまらなく愛おしい。
私は堪えきれず、もう一度、そっと唇を重ねてしまう。
「もしかして・・・ちゅーして欲しかったり?」
くすくすと笑うユリィは、どこかいつもより色っぽくて、無邪気なのに妖艶で。その笑顔に、胸がぎゅっと締めつけられる。
しなやかな手が私の首元に回され、頬に、額に───
「・・・っん。」
───そして最後に、唇にやさしくキスを落としてくれた。
ユリィは、私の正体も、想いの深さも、何も知らない。それでも、その一つひとつの仕草が、私の心と身体を本能的に揺さぶってくる。
あの場にリゼ殿がいなければ、きっと、私はユリィを押し倒していただろう。
無理やり奪っていた。身体も、心も。
そうならずに済んで、よかった。
・・・私はもう、戻れない。
ユリィ以外の誰かを、結婚相手として受け入れることはできない。
たとえ母国へ戻れと言われても、彼を置いて一人で帰るつもりはない。
・・・そういえば、ユリィと婚約してから、国王からの───叔父上からの手紙が、増えたような気がする。
「ああ。任務のために・・・協力してくれ。」
レギン・シュイル子爵のもとを訪れたのは、他でもない、ユリィ───ユリス・シュイルに、婚約を申し込むためだった。
任務だなどと、もっともらしい理屈を並べて、本心を隠しながら、言葉を紡ぐ。
「・・・相応の報酬は払う。」
「いくら出せますかな?」
この方は、何よりも利益を重んじる人物であることは、事前の調査で把握していた。
金さえ積めば、この婚約にも応じる可能性がある。ならば、差し出すべきはただ一つ。
「全財産。」
小国一つを買えるほどの資産。それが私の交渉材料だった。
「冗談が過ぎますよ、ヴォルロード卿。」
しかし、意外にもあっさりとかわされてしまった。もっと具体的な金額を提示すべきだったと反省する。
「可愛い一人息子を、そう易々と渡せる訳ないでしょう。お引き取り下さい。」
その言葉は鋭く、氷の刃のように胸に突き刺さった。
だが、今ここで退くわけにはいかない。拳を握り、力を込めて、声を張る。
「金は払う。彼のことも守る。任務が完了したら、婚約を解消しても構わない。」
どうにか平静を装ったつもりだったが、喉の奥が引き攣ってしまった。焦りで心臓が早鐘を打つ。このままでは、交渉決裂だ。
人の姿でユリィに近づく術を・・・完全に失ってしまう。
「ユリスの経歴に傷を付けても構わないと?」
「いや、それは、違う・・・。」
私は、自身の言った言葉の意味を理解して、口ごもってしまった。
「はあ。惚れたなら惚れたと言えばいい。金はいらん。ただし、泣かせたら全財産頂きますからね。」
「・・・!」
思わず背筋が伸びる。静かに放たれた一言だったが、その瞳は真剣そのものだった。
シュイル子爵は、きっと最初から気付いていたのだ。私がユリィに対して、特別な感情を持っていることを。
隠していたつもりだったが、彼のような人物には通じない。
シュイル子爵は少し視線を逸らした後、ふっと表情を曇らせ、重たく口を開いた。
「ユリスは今、命を狙われているんです。私の雇った護衛では、歯が立たなくなってきた。・・・守ってやって下さい。」
決意の込もったその声に、身が引き締まる。彼は立場も威厳もある大人だ。それでも、深く頭を下げて懇願する姿に、ユリスへの愛情と、焦燥が滲み出ていた。
その想いの強さに応えるように、私は迷いなく答えた。
「番を守るのは、当然のことだ。」
私のその言葉を聞いたシュイル子爵は、目を点にさせていた。
───話し合いの後、シュイル子爵は私に向かって、「ユリスに事情を説明する。おまえも来なさい。」と、静かに言った。
その歩みの後ろをついていく間、緊張で心臓がじわじわと軋んでいた。
合図をしたら後から入ってくるようにと言われ、部屋の前で待機する。私は耳が良いので、扉越しに二人の会話を盗み聞きしていた。
少しの間待機していると、子爵から合図があり、そっと部屋の中へと足を踏み入れた。
簡単に挨拶をし、そして───
「母国、ギルンス国から帰還命令が出た。しかし、秘匿の任務はまだ終わっていない。婚約者がいれば、滞在を延長できる。」
私の口から出る言葉は冷たく、打算的に響くものだった。
「・・・。」
シュイル子爵をチラリと見ると、残念なものを見る目で、渋い顔をしていた。
「・・・お父様、いくら積まれたんですか。」
ユリィの小さな、凛とした声が空気を切った。愛らしい口元が動いているだけで、心が簡単に揺れ動いてしまう。
「探りを入れるな。問題ない、いずれ婚約破棄すればよい。」
彼のその言葉は、まるで私に対する当てつけのように聞こえた。
───ギルンス国の王族は、人と獣、二つの姿を使い分ける能力を持っている。しかし、それは国家機密として伏せられてきたことであり、その事実を知る者は、ほんの僅かしかいない。
私がユリィを見つけたのは、二年前のこと。
ギルンス国から、この国に移動してしまった緑竜を討伐しに来た時だった。
深い森の奥。団員たちの足並みに合わせていては、犠牲が出るのは時間の問題だった。そう判断した私は、結局、単独で竜と対峙することを選んだ。
回復薬も支援もない。普通ならば、絶望的な状況。
それでも私は、なぜか確信していた───この竜を倒すことには、特別な意味があることを。
風に乗って、甘い香りがした。
心の奥底が震えるような、甘い、甘い匂い───いるのだ、この国に。
私の、番が。
───獣人族には、“番”という、運命の相手が存在する。
先天的に定められた“番”の存在は、生まれた時から本能が知っている。
しかし、“番”に出会えたという獣人族は、全体の約一割に満たない。
───私は、産まれてから他人に興味を持ったことが一度もなかった。
愛だの恋だの、そんなものは時間の無駄だと思っていた。
けれど、番の気配を嗅いだ瞬間、そんな自負は音を立てて崩れてしまった。
「大丈夫か!」
獣の姿で泥だらけで倒れていた私を、助けてくれたのが、私の番・・・ユリィだった。
淡い栗色の髪、透き通るような水色の瞳、小柄な身体に秘めた優しさと強さ。
手当をしてくれた手が、あたたかかった。頬に手が触れるたび、どうしようもなく胸が高鳴った。
───ああ、この人だ。
私のすべてを捧げたい、たった一人の人。
「───どうした!よそ見してるとちゅーするぞ!」
見とれていると、番からの唐突な台詞に思考が飛んだ。
「んー!」
頬に、柔らかい感触が当たる。
───なに? 何だ? 何が起きているんだ。
心臓が、壊れそうだった。顔中にキスを浴びせられ、頭が真っ白になる。
耳や尻尾に触れられるたび、敏感に反応してしまう自分が情けないやら嬉しいやら───
「あ、オスだ。」
仰向けになっていた私に乗りかかり、ユリィはそう言った。
羞恥で頭が爆発しそうだった。
勢いよく起き上がり、軽く押し返す。
「わぁっ。」
バランスを崩したユリィのシャツがはだけ、白い肌が艶やかに覗いた。
理性が飛びかける。どうにか自制心を保ちつつ、つい、舌が、胸へ───
「あっ、こらっ!俺はメスじゃないから、おっぱい出ないぞ!」
・・・怒られてしまった。
───人の姿で堂々とユリィの傍にいられる時間は、とても特別なものだった。
ふたり並んで街を歩き、互いのイメージカラーを織り込んだ服を仕立ててもらう。その何気ない一日が、私にとってどれほど満たされた時間だったか───言葉ではとても言い尽くせない。
あの日、淫らな下着を身に着けたユリィの姿を目にしたときは、理性が揺らぎ、誘惑に呑まれそうになった。
・・・いや、正直、かなり危なかった。
結局、後日また仕立て屋を訪ね、アロマ殿からユリィが身に着ける予定だった下着をいくつか買い取ってしまった。
もしそれをユリィに知られたら、恐ろしいほど怒られるのは間違いない。
それにしても、ユリィの命を狙っている刺客たちは、どうにも様子がおかしい。
手に持つ武器は、ギルンス国のものであり、戦闘技術も、我が国特有の癖があった。
一体、何が起こっているのだろうか。
───秘めた想いを胸に、私はユリィへの手紙を何通も書き綴っていた。
しかし、いくら手紙を送っても、返事は来ない。
焦りに焦った。
契約的な婚約だと思っているユリィ。もしかすると、他の誰かと付き合っているのだろうか?
その相手を殺しかねない自分が、怖かった。
───いや、殺すだろう。確実に。
───どれだけ待っても返ってこない返事に焦りを覚え、私はついに、人の姿を捨て、狼の“ウルフ”としてユリィに会いに行く決意をした。
「ウルフ!」
ぱあっと弾ける笑顔を見せるユリィ。私には、“レーク”には見せないその笑顔。
「どこ行ってたんだよ、寂しかったんだからな・・・。」
すがるように抱きついてくるユリィ。細い腕から伝わるぬくもりと、ふわりと香る甘い匂いに、胸の奥がざわめいた。
我慢の限界だった。今までよく耐えてきたと、自分でも思う。
たまらず、私はそっと顔を寄せて、彼の柔らかな唇に、自分の口を重ねた。
微かに漏れる、ユリィの甘い声。その響きだけで、心臓が、身体が、疼いて疼いて仕方ない。
キスを・・・してしまった。
「ど、どうしたの・・・?」
怒る訳でもなく、ただ心配そうに見上げてくるユリィ。
口元に手を添え、ほんのりと赤らんだ頬がたまらなく愛おしい。
私は堪えきれず、もう一度、そっと唇を重ねてしまう。
「もしかして・・・ちゅーして欲しかったり?」
くすくすと笑うユリィは、どこかいつもより色っぽくて、無邪気なのに妖艶で。その笑顔に、胸がぎゅっと締めつけられる。
しなやかな手が私の首元に回され、頬に、額に───
「・・・っん。」
───そして最後に、唇にやさしくキスを落としてくれた。
ユリィは、私の正体も、想いの深さも、何も知らない。それでも、その一つひとつの仕草が、私の心と身体を本能的に揺さぶってくる。
あの場にリゼ殿がいなければ、きっと、私はユリィを押し倒していただろう。
無理やり奪っていた。身体も、心も。
そうならずに済んで、よかった。
・・・私はもう、戻れない。
ユリィ以外の誰かを、結婚相手として受け入れることはできない。
たとえ母国へ戻れと言われても、彼を置いて一人で帰るつもりはない。
・・・そういえば、ユリィと婚約してから、国王からの───叔父上からの手紙が、増えたような気がする。
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