ライバル視していた隣国の魔術師に、いつの間にか番認定されていた

飯田 いち太郎

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2話 キャラ弁

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「なぁ、されて嫌な事って何だ?」

昨日は壁ドン作戦が思うように上手くいかなかったので、誰かに助言を貰う事にした。

今までろくにクラスメイトと話してこなかったが、今後の行動の参考にすべく、後ろの席のピンク頭の瓶底メガネ少女に質問を投げかけた。

「ふぁっ!?あ、えーと、嫌な事ででですか!?」

挙動不審な少女は、真剣に悩んだ後、答えてくれた。

「うーん、そうだなぁ、付きまとわれたり、急に愛をささやかれたり、友達でもないのにスキンシップとか激しいのとかは嫌だなぁ。」

はぁ、とため息をつき、その後彼女は「本当、乙女ゲームとか嫌だなぁ」等と呟いたが、まぁ、気にしないでおこう。

「ハッ!!ライ君、もしかして気になる人がいたり!?誰!?誰!!」

急に声を荒らげ、興奮気味に質問される。

「えっと、いや、まぁ、気になるというか・・・ほら、去年転校してきたノアディ」

「なんとなんとなんと!!こ、ここに来てやっとオアシスが・・・ああ、神よ、私はもう天に召されると言うのか・・・・」

よく分からないが、彼女は天を仰ぎ、祈りを捧げるポーズをして固まってしまった。薔薇だのビーエルだの呟いていたが、まぁ、聞き間違いだろう。転生者特有の発作なのだろう。きっと。

第六感がこの瓶底メガネ少女には近付かない方が良いと警告しているので、俺も転生者だとは打ち明る事無く、次の授業が開始された。

とにかく・・・彼女の奇行は見なかった事にした。

それよりも・・・そうか、付きまとう、愛をささやく、スキンシップ過多、とメモ帳に記入し、早速行動に出ることにした。中々参考になる助言をしてくれたな。





昼食時、俺は何時もはお弁当を作って誰もいない場所で食事をするが、今日はノアディアと共に食堂に行こうと思い、声をかけた。

「今日のお昼暇?一緒に昼食食べる?」

「暇ですが・・・私はいつも食堂で済ましていて・・・ライの様にお弁当は持ってきてはいないのですが・・・」

「ん、大丈夫。今日は食堂で食べるよ。」

「ですが、今日作ったお弁当はどうするのですか?」

というよりも何故いつもお弁当を作っていることを知っているんだよ。まぁ、いいか。

「んー、夜ご飯の時に食べようかな」

「今日は暑い日ですから、腐ってしまう可能性が・・・」

そんなに一緒に昼食を食べたくないのか!?どんだけ嫌われているんだよ俺!?

「じゃあもういい。一人で食べる。」

「待ってください!」

「何??」

「その、宜しければ・・・その、ライの作ったお弁当を私が食べても宜しいでしょうか?」

「・・・いいけど。」

意図が分からないが、これもノアディアの嫌がらせ?なのだろう。もしかしたら、不味い料理を作っているヤツだと思われているのかもしれない。
残念だったな。お弁当はまあまあ上出来な仕上がりだと自負しているので、勝気な表情で迷いなくお弁当を差し出した。

そして俺の分の昼食を獲得しに、二人で食堂へ向かう。

途中、瓶底メガネ少女の言葉が脳裏に浮かんだ。
(友達でもないのにスキンシップとか激しいのとかは嫌だなぁ。)
ふむ、スキンシップか。先程の嫌がらせ?の仕返しにちょっと試してみようかな。

と思い、すぐそこにあった左手をぎゅっと繋いでみた。

「ラ・・・・ラ、ライ!?」

とても驚いた様で、手を振り払われ、向かい側の壁に頭を激突させていた。かなり痛そうだ。心配になり、頭に傷が出来ていないかを確認する。

「大丈夫か!?ごめん、ちょっと驚かせすぎちゃったな。」

どうやら頭に負傷は無く、大丈夫そうだ。少し嫌がればいいと軽い気持ちでやったのだが・・・傷が出来てしまう様な事をするのは主義に反する。
申し訳なさでノアディアの頭を撫で、治癒魔法で痛みを無くしていると

「い、いえ・・・もう平気ですので、食堂へ行きましょう。」

と言い、手を繋がれ、一緒に食堂へ入ることとなった。
・・・ん?頭をぶつける程、手を繋ぐのが嫌なんじゃないのか?
まさか、これは仕返しか・・・!





初めて食堂で昼食を食べるが、流石貴族や王族の通う学校だ。クオリティが違う。
高級な牛肉に柔らかいパン、オシャレなデザートなどなど、ビュッフェ形式であり、どれも美味しそうである為、つい取りすぎてしまった。

ノアディアは俺の作った、前世では平凡なお弁当を食べる様だが・・・なんだか場違いな気がして恥ずかしくなってしまう。

「や、やっぱり、お弁当返してく」

「お先にいただきますね、ライ。」

羞恥心が勝り、お弁当を返して欲しかったが、食べる気満々のノアディアのせいで奪還できなかった。
お弁当箱の蓋を開けると・・・

「・・・これは?」

「・・・タコさんウィンナー」

そ、そういえば・・・!!今日はキャラ弁にしてしまったことをすっかり忘れていた!

早起きをし過ぎたせいで、お弁当を作る時間が余った為、おにぎりはヒヨコの様な見た目になるように作り、ウィンナーはタコの様な見た目になる様に、目をつけたり工夫をしたり、花やハートを散りばめたりと、可愛い見た目にしてしまった。

どうせ一人で食べるからいいかと思った自分を呪いたい気持ちになった。

そんな俺の内心を知ってか知らずか、コイツはいつの間にかお弁当を全部平らげてしまった。

「美味しかったです。今度は私の為に作って頂きたい位の美味しさでした。」

綺麗な所作でお弁当を完食し、甘いセリフを爽やかな顔で言ってのけた。俺はもう恥ずかしさの余り顔を真っ赤にして睨む位しか出来なくなった。

「ごちそうさま。先に教室に戻る。」

これ以上一緒にいては火照る顔を見られてしまうと思い、大急ぎで完食し、空になったお弁当箱をかっさらい、教室に帰った。

・・・今更だが、ノアディアは隣国でどういった地位なのだろうか・・・立ち居振る舞い的には貴族であることは間違いないのだろうが、あまり偉そうじゃないからそこまで位は高くないんだろうな。

じゃ、ない!何故今ノアディアの事を考える!?
俺はアイツから受けた嫌がらせの仕返しをして、アイツよりも秀でた魔術師であることを証明するんだ!

・・・仕返し、か。

そんな事しても、意味が無い事くらい分かってはいたが、急に自分が情けなく思えてくる。

だが、今日の恥ずかしい思いをさせたことの仕返し位はさせてもらおうか・・・。
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