ライバル視していた隣国の魔術師に、いつの間にか番認定されていた

飯田 いち太郎

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4話 実技テスト②

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暫くラスボスが現れるのを待っていると、急に背後から物音がした。

ギギッ

ほんの少しの変化に俺よりも先に直ぐ様反応をしたのは、ノアディアだった。

「後ろにいます、下がって!」

後ろを振り向くと、氷で出来た全長4m程の巨大な蜂が3匹、空中をさまよっていた。
ここでは炎系の魔法は使えないのならば、水系の魔法で氷を溶かそうと思い、魔法を唱える。
しかし、それにいち早く気が付いた一番大きな蜂に、どうやら俺はターゲットにされてしまったみたいだった。

ギギ、ギッ

目にも止まらぬスピードで距離を詰められ、攻撃がかわせない事を自覚する。
一瞬の内に攻撃を受ける覚悟をし、結界、と反射的に唱え、魔法を使用し身を守ったが、衝撃はいくら待ってもやっては来なかった。

シャキィッ

また、ノアディアに助けられたのだろう。
剣によって氷が割られる音が響いた。目を開くとやはり、清々しい顔をしたノアディアがすぐそこにいた。

そういえばコイツ・・・剣術も得意だったな・・・。もしかして、前世は勇者だったりするのか・・・?

このままではコイツに敵を全て倒されてしまうと感じた為、つかさず魔法を唱えることにした。

「ウォーターフォール!」

滝が上空から現れ、一番遠くに居た蜂に直撃する。少量の水で攻撃をしてもすぐに凍ってしまう為、大量の水で倒した方が良いと即座に判断をし、魔法を放ったが、どうやら当たりの様だ。

蜂はみるみるうちに溶け始め、残る敵は1匹のみとなった。同じ魔法をもう一度ぶつけようと詠唱を試みるが、力が抜けてしまい、ペタリとしゃがみ込んでしまった。

咄嗟に現在の魔力量マジックポイントを確認すると、殆どゼロに近い数値だった。

そういえば、今朝は魔法の練習をしたり、実技テストに向けて鍛錬をしてしまい、挙句の果てに時間停止魔法は魔力の半分を使う大魔法であったなと後悔した時にはもう遅かった。

ギギギギギ!

攻撃される・・・と、身構えていたが・・・

「アイシクル!」

大きな氷柱つららが飛び出し、氷の蜂に直撃。蜂は魔法石(魔物の体内にある心臓の様な物)以外、綺麗に粉砕していき、ラスボスを倒した証である魔法石を3つ獲得した。

怪我ひとつなく実技テストが終わり、気が抜けた影響か、今まで我慢してきた分の寒気が一気に回ってきた。

「コートありがと。お疲れ様、先に先生に報告しておいて、ちょっと用事あるから!!」

震えそうになる身体をどうにか誤魔化し、コートと魔法石を素早く渡し、ダンジョンの外まで続くワープゲートへと一目散に走り、くぐり抜けた。





アイツに見つからない様に、学園とは反対側にある森の中まで走り、体温が戻るまで待つことにした。

前世も今世も冷え症な俺は、身体が温まるまで結構な時間がかかる。そのせいで成績に関わってしまったら最悪だ。申し訳ないが、攻略したと先生に報告するのはアイツに任せておこう。

と、思ったのだが・・・

「ライ!探しました!・・・どうしてこんな所に・・・?」

何故かコイツはついてきた様だ。早く先生に報告をして貰いたいのだが、意図を汲んではくれなかったみたいだ。

「いいから、早く報告、してきて・・・。」

ぶっきらぼうにそう言うが、どうも俺の様子が変だと察したらしい。どんどんと俺に詰め寄り、距離を縮めてくる。

「ライ・・・!?」

「ちょっ!!」

急に触ってきたが、寒さで上手く身体が反応せず、避けられなかった。
そしてどうやら俺の身体の冷たさに驚愕した様子だった。

「こんなに冷えてしまっているのに、何故私に教えてくれなかったのですか!?」

「大丈夫だって・・・」

「震えながら言っても説得力ありませんよ。ほら、おいで。」

両手を広げて俺がそこへ来るように促す・・・いや、なんで行くと思った?コイツの胸の中とか、冗談か?それとも新手の嫌がらせなのか?

「だから、いいから・・・」

距離を取ろうと後ずさりしたが、それを察してか、俺をつかさず腕の中に閉じ込めた。

「ん?暖かい・・・」

「保温魔法を自分自身に掛けてみました。寒い場所が苦手なら、私に全て任せれば良かったのに・・・急にどこかへ行ってしまったので、心配しましたよ。」

そう言ってより一層強く抱き締めてくる。
なんか暑苦しいな。にしても任せっきりにしていいだなんて、そんな事して成績を上げたいとは思っていないのに・・・俺は他人任せな最低なヤツだとでも思っているのか?

「もういい、十分温まったし、ノアディアの言いたいことは十分・・・分かったからな。」

そう嫌味を言って睨みつけると、何故かとても安心した表情を見せてきた。

「そうですか・・・今後は無理をしないで下さいね?」

コイツは、もしかしたら本当に心配してくれていたのかもな・・・。
柔らかく微笑みながら伝えられたせいか、毒気を抜かれてしまった。

十分に体温が戻った後、先生に討伐の報告をしたが、どうやら三着目だった様だ。いつも俺とノアディアは一位であったので、何かトラブルがあったのかとても心配させてしまった。

だが、なんだかいつもより充実した実技テストになったなと感じてしまった自分がいた。
まぁ・・・きっと、気のせいだろう。きっと。
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