ライバル視していた隣国の魔術師に、いつの間にか番認定されていた

飯田 いち太郎

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11話 ロッカー① ※軽R18

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俺がノアディアのお嫁さんだ発言をしてから三日が経過した。放課後になって誰もいない教室で、落ち着かない心臓を抑える。

ここ最近、ノアディアと顔を合わせると心拍数が上がったり、目を見つめることが困難になってしまう謎の現象が起きている。その為近頃は挨拶以外まるっきり会話をしていない。

明日からはちゃんと話せるようにならないといけないよなと、うだうだ物思いにふける。

はぁ。何やってんだ俺、早く部屋に戻ろう・・・と教室の扉に手を掛けようとしたら、急に扉が外側から開かれた。

扉を開けた犯人は、瓶底メガネ少女だった。

「こんにちは、ライ君!私ヒロイン。今、乙女乙女しい場面に遭遇しているんです!助けて下さい!」

と、混乱気味に言い放ち、手を鷲掴みにしてくる。
物凄い力で手を離そうとせず、上目遣いでこちらを見つめる瓶底メガネ少女。
必死な様子ではあるが、正直言って乙女乙女しい場面には正直関わりたくはないな・・・。

「ごめん、俺これから帰るとこだから。じゃあな。正々堂々頑張れ!」

「どうかお慈悲を!」

帰ろうとしたら行く手を阻まれ、土下座で頼み込まれた。
土下座なんてするヤツ本当に存在するのかよ。

「お慈悲をって言われても、俺にできることなんて何も無いだろ。顔を上げろよ。」

「お願いですううぅぅぅ!見捨てないで下さいぃぃぃ!!」

そう言って必死にしがみついてきてすすり泣く。わざとらしい演技に呆気に取られるが、あまりにも必死な様子に少し同情してしまう。

「嘘泣きはやめろよ。仕方ないな・・・。」

「協力してくれるんですね!頼りになるーっ!」

おいおい、勝手に協力者扱いするなって。現金なヤツだな。さて、どうしたものか。

しょうがないので協力しようかと思ったが、この国の第二王子であるレイフォンド・ラティスが優雅に歩いてこちらに向かっている所を窓から確認した。

・・・もしかすると、乙女乙女しい場面でのお相手って、第二王子なのか!?ここで彼女を助けたら反逆罪になったりするのか!?

なんて考えていると、窓越しに物凄い嫌そうな顔で睨まれたので、身を守る為にすぐさまこの場から退散する事にした。ごめん、同胞よ。健闘を祈る。

しがみついていた瓶底メガネ少女を振り払い、ダッシュして廊下に出た。
瓶底メガネ少女は俺から引き剥がした時にメガネを落としたので、掛け直している間に上手く撒くことに成功した。

思いもよらず教室で一悶着あったが、どうにか逃げきれ安心していたのだが・・・。

運が悪い事に・・・教室を出た先の廊下で、今一番出会いたくないヤツに会ってしまった。

ノアディアだ。

「ライ、先程教室で誰と一緒に何を話していたのか、詳しく説明を・・・。」

そう言ってくるが、背後には第二王子の影が見えた。
それに瓶底メガネ少女ももうすぐ追いかけて来る事だろう。

今は緊急事態だ。何やら複雑そうな顔をしているノアディアの腕を引っ張り、近くにあった隠れられる場所・・・咄嗟にロッカーへと身を潜めることにした。

授業で扱う魔道具が入ったロッカーの扉を開け、ノアディアを押し込み自分も中に入る。

「ちょっと、待って下さい!お慈悲を・・・あれ?」

隠れた直後、瓶底メガネ少女が教室から飛び出し、俺を探しに来たが、何とかバレずに済んだ。

「ライ・・・?きゅ、急にどうしたのですか?一体どうしてっ」

声量を下げて話しかけて来たが、念の為口を手で塞ぎ、瓶底メガネ少女が去るのを待つことにした。

密着状態になってしまったが、少しは我慢して貰おう・・・。

「ちょっと揉めちゃって、静かに・・・あっ、シーッ。」

王子が段々と近付いてくる。

「探したよ。リリーア。なんでいつも逃げようとするかな?」

「ヒエッ。」

「そんなにボクを避けても無駄だって、昔から知っているよね?」

そう王子に言われた瓶底メガネ少女────今更だけど、リリーアって名前だったのか────は第二王子に手を引かれて教室の中へ入っていった。





念の為もう少し隠れていた方が良さそうだ。
狭いロッカーの中で身じろぐ。体勢を変えたせいで、俺はノアディアとかなりの密着状態となってしまった。

「ライ、お願いします、もう少し離れて・・・。」

そう言いノアディアはロッカーの扉側へ移動し距離をとる。
この反応はもしや、俺の体臭がキツいとかそんな感じか!?
いや、毎日お風呂には入っているし、清潔にしているからそんなはずはないが・・・今日は気温が高かったからな、汗臭い可能性はある。

離れた方がいいかもなと一瞬思ったが、俺はキスやその他もろもろ最近受けた仕打ちの仕返しをしてやろうと考えつき距離を詰めた。

「ら、ライ!!??」

「ごめん、ちょっとふらついちゃって。」

棒読みでそう言いながら胸に寄り掛かる。剣を扱えるぐらい鍛えているだけあって、触れた体は俺とは比べ物にならない程に筋肉質で頑丈そうであった。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないかも・・・。」

「ライ、待って下さい。これ以上はいけません。離れて下さい。」

何やら必死そうに訴えられたが、無視してより一層体重をかける。
暗くてよく分からないが、きっと迷惑そうな顔をしていることだろう。
一人ほくそ笑んでいると、太もも辺りに何やら硬い感触があった。何だろうと気になり、手で触れてみるとそこは・・・。

「ダメですよ、触っては。」

触れた直後に反応したノアディアの手によって腕を掴まれ、一瞬何かに触れたが手を離させられた。
だがまぁ、一瞬触れただけだったが、が何か勘づいてしまう。

これはもしかして・・・もしかして、勃ってるのか!?この状況で!?何でだよ!!

「お、おまっ!?な、なんで!?」

「ですから・・・。離れて下さいって言いましたよね。」

「あ、ごめん、そんなつもりじゃっ。」





「さっきから五月蝿うるさいなぁ。ロッカーに隠れて一体何をしているワケ?」

煩わしそうにレイフォンド様がロッカーを開けようとする。

って、ちょっと待て!今扉の方にノアディアと俺が寄っかかってるんだが!このまま開けれたら転倒してしまう。

そんな思いを裏腹に、ロッカーは勢いよく開かれる。

危惧した通り、開いた瞬間俺たちは勢いよく倒れてしまった。

ゴン。と鈍い音がした。

ノアディアを押し倒す形となったので、俺は特に怪我はなかったが、ノアディアはめちゃめちゃ痛そうだ。

回復魔法をつかさず掛ける。

「あああ!だめだよ逢い引きの邪魔しちゃっ!ほら、私達はもう行くよ!お邪魔しましたぁぁぁっ!!」

と叫び、王子の服を握り締め、引き摺る勢いで瓶底メガネ少女は俺達から離れていった。

同胞よ、王子に対してそんな事して大丈夫なのか・・・。首が飛ばないことを祈るばかりだ。
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