ライバル視していた隣国の魔術師に、いつの間にか番認定されていた

飯田 いち太郎

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26話 淡い夏休み③ 友達

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食卓には3人分の料理が均等に並んでる。

主食とデザートは今朝買ってきたという白パンと桃のゼリー。主菜は母さんの作ったグリルチキン。副菜は俺の作ったチョレギサラダとキノコ野菜スープという献立だ。ちゃんと栄養バランスも考えられているので、口に合えばいいのだが。

「とても美味しいです。」

と、ノアディアは的確に俺の作った物のみを食べて俺に向かって言う。・・・何で分かるんだよ。

「それはどうも。」

ハズいな。何か。あと、まあ・・・嬉しい。

ただ美味しいと言われただけなのに、浮き足立つ気持ちになる。

それにしても依然として綺麗な食べ方だな。目で動きを追っていると、自然と俺も上品に食事をしてしまう。

「そういえばね、さっきお手紙届いたんだけど、お父さんお仕事大変みたいで夏休み中は帰って来れないそうなのよ。」

「えっ!?・・・そっか、残念。」

会えると思っていたのだが、仕事なら仕方ないか。父さん元気にしてるといいな。

それから俺たちは、学校で起きたことや最近の流行りは何だとかの世間話をぽつぽつと話しながら夕食を食べ終えた。





夕食後、食器類を片付けようとしたが、疲れているだろうから早くお風呂入って寝なさいと母さんに言われたので、俺は風呂に入ることにした。

どうやらノアディアは厚かましいことに、俺が帰って来る前に先に風呂に入ったという。遠慮という物を知らないのだろうか?

まあ、それよりも問題なのは、俺の寝間着だ・・・。

寝間着は母さんが作ってくれた物を着ているのだが・・・肌触りがいいので愛用してはいるのだが・・・。

トップスは動物柄、ズボンは無地とシンプルではあるがどういう訳か短パンなのだ・・・。勿論デザインに抗議したが、泣き落とされてしまったので今では普通に着るようになっていた。

はあ、これしかないよな、着る物。私服は材質的に硬くて寝間着に使えないし・・・。





お風呂に入った後、寝間着に着替えて俺は自室へと戻った。言うまでもなく今回はしっかりとノックして、返事が聞こえてから扉を開ける。

ノアディアは椅子に座って本を読んでいたが、俺が入ってくるなりこちらに目を見やる。

「早かったですね・・・ライ!?」

大声で名前を呼ばれる。そんな驚くことかよ。言っておくがこれも母さんの趣味だぞ、と心の中で言い訳をする。

「何だよ。」

「足を・・・足を隠して下さい・・・。」

手を目に当てて見ないようにしているみたいだが、がっつり指の間からこちらを見詰めている。

「何でだよ。」

そんなみっともないのかよ。あんま見るなよ・・・。

「とにかくこれを。」

そう言ってどこから出したのか、絹でできた長ズボンをくれた。

流石絹、肌触りは極上だ。高そうなので返却しようとしたが、さっきから足を凝視してくるので観念して履くことにした。
ちなみにその場で履こうとしたら穴があくほど見られたので、一旦部屋から出て履いた。





「なあ、今更だけど、さ。」

扉越しにノアディアに向かって言う。

「?」

「お前にとって俺は、友達・・・でいいのか?」

ノアディアにこんなこと聞くなんて、本当、思いもよらなかったな。かなり勇気を出したぞ。

扉越しだからこそ、何とか聞けた。多分、ノアディアは俺のこと友達だって────

「いえ!友達でいい訳ありません!!」

「はっ。」

「ですが今は・・・友達ということに致しましょう。」

「・・・。」

は・・・何だそれ。友達じゃないとか言いながら、結局友達なのかよ。

「ふっ。あはは。」

「ライ・・・。」

「はは、ごめん、なんかよく分からないけど、ノアディアって面白いよな。」

初めて言われたとでも言いたげな表情をノアディアがする。ははは、だろうな。いつも余裕な態度だし、真面目にしてるもんな。面白いとは疎遠だよな。

「ごめん、今まで突っぱねてきて。じゃあこれからは友達な。」

扉を開いてノアディアへと手を差し出す。握手くらいできるだろ?

「ライ・・・。」

近付いてきたので握手してくれると思ったのだが、予想外にも下側から俺の手をすくい上げ、差し伸ばした手に・・・

────チュ。

何故かキスを落とす・・・





は!?お前!?何してくれてるんだよ!?隣国では手の甲にキスすることが友好の証なのかよ!?

「~~~っや、やっぱりお前、今すぐ故郷に帰れ!」
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