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25話 淡い夏休み②
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「ここが俺の部屋だけど・・・。」
気は進まないが、ノアディアを俺の部屋に案内した。
部屋を見られたくなかった理由は・・・まあ、見れば分かるだろう。
「ここが・・・ライの。」
やっぱり引いてるな、俺がこんな物、沢山部屋に置いているとか・・・いや、でも仕方ないだろう、母さんがどっかから調達してくるんだし。確かいつも公爵領とかに行った後に買ってきてたっけな。
「晩御飯作ってくるから!あー・・・このぬいぐるみは特に気にしないでくれ。俺の趣味で集めているワケでは無いからな!断じて!」
そう言い放ってキッチンへと急ぐ。
母さんは小さい頃からずっと、可愛いぬいぐるみや小物類を買い与えてくる。
俺の事をまだ小さな子供だと思っているのかと聞いてみれば、女の子が欲しかったのよ、とか言っていた。
だからと言ってぬいぐるみ買い与えるか普通。やめて欲しい、売るぞと言ったら泣かれてしまったのでしょうがなく部屋に飾っている。
俺は母さんの元へと戻り、夕食の手伝いをする。母さんはメイン料理を作っていたので、俺はサラダやスープを隣で作る事にした。
久しぶりに一緒に料理するよな、と言ったら母さんは何故か泣いていた。
「何で泣くんだよ?」
「もうすぐお嫁に行っちゃうのよね。そうしたら一緒にお料理なんて、できなくなるじゃない・・・お母さんとても寂しいわ。」
「・・・いや行かねえよ!?」
だから泣くなよ。
「あら、ノアディア君は本当にただのお友達なの?・・・・・・ごめんなさい、勘違いしちゃったわ。」
「別に・・・友達というか・・・。」
言いよどんでしまう。いや、だって俺は友達と思っているというよりも、今は・・・。
「あらぁ?・・・うふふ。」
────取るに足らない雑談をしながら夕食を作り終えたので、ノアディアを呼びに自宅へと戻る。
何かをしている物音が聞こえたが、気にせず部屋の中に入る。
「ノア、ディア・・・?」
ノック、すべきだったな・・・。
そこにはぬいぐるみを包丁で掻っ捌いているノアディアがいた。
それ包丁の本来の使い方じゃないだろ・・・。一体何してんだよ、奇行にも程があるぞ。
「処分しましょう。」
「はっ!?」
「監視魔法、盗聴魔法、魅了魔法、遠隔操作魔法、認識力低下魔法・・・。」
呪文か何かか?というより人の物勝手に捨てようとするなよ。このぬいぐるみ達の惨状、母さん見たら号泣するぞ。
「一体誰が・・・。」
ノアディアがぬいぐるみを睨みつけながらそう言う。
まあ、恐らく誰かがさっきノアディアが唱えていたというか、言っていた魔法をぬいぐるみに掛けていたんだろうな。だからって、お前ぬいぐるみ刺すとか・・・
「こわっ。」
あ、まずい、つい本音が。
でも普通に怖いだろ、人の部屋で包丁持ってぬいぐるみ刺しまくるとか・・・ひとりかくれんぼでもするつもりなのかよ。俺怖い話とかあんま好きじゃないんだけど。
「!?・・・す、すみません。ライの大切なぬいぐるみが・・・。」
いや別に・・・俺より母さんに謝れ。・・・ん、声が出てないな。
「怖くありませんよ、大丈夫です、無害ですから。」
包丁を置いてからゆっくりとにじり寄ってくる。
そう言われると余計に怖いんだが。というか隠れたい気分なんだが。
こう、部屋でだらけてたら急に誰かが勢いよく扉を開けて来た時みたいな感覚だ。
「俺の事、刺さないよな?」
念の為聞いてみた。
「っ!?無論です!そんな事・・・絶対にしませんよ。」
それなら安心だ。刺すのとか、刃物とか、沢山血が出るのとか・・・苦手だからな・・・。
そっと抱き締められる。
「怯えさせてしまって、申し訳ございませんでした・・・。」
怯えてなんか・・・って、何でだ、手が小刻みに揺れているな。
・・・あれ、俺、震えていたのか。
「ノアディア君、ライちゃんを・・・あら、お取り込み中・・・なのかしら?」
母さんの声が聞こえたので、瞬時に無惨な状態になったぬいぐるみを魔法で移動させて隠す。
ノアディアの胸の中から抜け出そうと足掻くが、その前に扉が開いてしまった。
「違う!違う!新しい魔法についてを教えて貰ってたんだ!これは!!それで、何か用!?」
「ライちゃん達が来るの、ちょっと遅いから心配になっちゃって。夕飯冷めちゃうわよ?」
そうだ、俺そういえば夕飯出来たってノアディアに伝えに来たんだった。
「分かった!今行く!」
ノアディアは意地でも離れようとしないので、扉の方へ振り返って歩き出す。
今度は後ろから抱き締められた状態になったのだが、これはこれで物凄く歩き辛い。何故か全然重くはないのだが、図体がデカいせいで足を踏んでしまいそうだ。
「久しぶりの手料理、楽しみです。」
楽しみにしているとこ悪いんだが・・・
「お前もう、帰ってくれ!!」
気は進まないが、ノアディアを俺の部屋に案内した。
部屋を見られたくなかった理由は・・・まあ、見れば分かるだろう。
「ここが・・・ライの。」
やっぱり引いてるな、俺がこんな物、沢山部屋に置いているとか・・・いや、でも仕方ないだろう、母さんがどっかから調達してくるんだし。確かいつも公爵領とかに行った後に買ってきてたっけな。
「晩御飯作ってくるから!あー・・・このぬいぐるみは特に気にしないでくれ。俺の趣味で集めているワケでは無いからな!断じて!」
そう言い放ってキッチンへと急ぐ。
母さんは小さい頃からずっと、可愛いぬいぐるみや小物類を買い与えてくる。
俺の事をまだ小さな子供だと思っているのかと聞いてみれば、女の子が欲しかったのよ、とか言っていた。
だからと言ってぬいぐるみ買い与えるか普通。やめて欲しい、売るぞと言ったら泣かれてしまったのでしょうがなく部屋に飾っている。
俺は母さんの元へと戻り、夕食の手伝いをする。母さんはメイン料理を作っていたので、俺はサラダやスープを隣で作る事にした。
久しぶりに一緒に料理するよな、と言ったら母さんは何故か泣いていた。
「何で泣くんだよ?」
「もうすぐお嫁に行っちゃうのよね。そうしたら一緒にお料理なんて、できなくなるじゃない・・・お母さんとても寂しいわ。」
「・・・いや行かねえよ!?」
だから泣くなよ。
「あら、ノアディア君は本当にただのお友達なの?・・・・・・ごめんなさい、勘違いしちゃったわ。」
「別に・・・友達というか・・・。」
言いよどんでしまう。いや、だって俺は友達と思っているというよりも、今は・・・。
「あらぁ?・・・うふふ。」
────取るに足らない雑談をしながら夕食を作り終えたので、ノアディアを呼びに自宅へと戻る。
何かをしている物音が聞こえたが、気にせず部屋の中に入る。
「ノア、ディア・・・?」
ノック、すべきだったな・・・。
そこにはぬいぐるみを包丁で掻っ捌いているノアディアがいた。
それ包丁の本来の使い方じゃないだろ・・・。一体何してんだよ、奇行にも程があるぞ。
「処分しましょう。」
「はっ!?」
「監視魔法、盗聴魔法、魅了魔法、遠隔操作魔法、認識力低下魔法・・・。」
呪文か何かか?というより人の物勝手に捨てようとするなよ。このぬいぐるみ達の惨状、母さん見たら号泣するぞ。
「一体誰が・・・。」
ノアディアがぬいぐるみを睨みつけながらそう言う。
まあ、恐らく誰かがさっきノアディアが唱えていたというか、言っていた魔法をぬいぐるみに掛けていたんだろうな。だからって、お前ぬいぐるみ刺すとか・・・
「こわっ。」
あ、まずい、つい本音が。
でも普通に怖いだろ、人の部屋で包丁持ってぬいぐるみ刺しまくるとか・・・ひとりかくれんぼでもするつもりなのかよ。俺怖い話とかあんま好きじゃないんだけど。
「!?・・・す、すみません。ライの大切なぬいぐるみが・・・。」
いや別に・・・俺より母さんに謝れ。・・・ん、声が出てないな。
「怖くありませんよ、大丈夫です、無害ですから。」
包丁を置いてからゆっくりとにじり寄ってくる。
そう言われると余計に怖いんだが。というか隠れたい気分なんだが。
こう、部屋でだらけてたら急に誰かが勢いよく扉を開けて来た時みたいな感覚だ。
「俺の事、刺さないよな?」
念の為聞いてみた。
「っ!?無論です!そんな事・・・絶対にしませんよ。」
それなら安心だ。刺すのとか、刃物とか、沢山血が出るのとか・・・苦手だからな・・・。
そっと抱き締められる。
「怯えさせてしまって、申し訳ございませんでした・・・。」
怯えてなんか・・・って、何でだ、手が小刻みに揺れているな。
・・・あれ、俺、震えていたのか。
「ノアディア君、ライちゃんを・・・あら、お取り込み中・・・なのかしら?」
母さんの声が聞こえたので、瞬時に無惨な状態になったぬいぐるみを魔法で移動させて隠す。
ノアディアの胸の中から抜け出そうと足掻くが、その前に扉が開いてしまった。
「違う!違う!新しい魔法についてを教えて貰ってたんだ!これは!!それで、何か用!?」
「ライちゃん達が来るの、ちょっと遅いから心配になっちゃって。夕飯冷めちゃうわよ?」
そうだ、俺そういえば夕飯出来たってノアディアに伝えに来たんだった。
「分かった!今行く!」
ノアディアは意地でも離れようとしないので、扉の方へ振り返って歩き出す。
今度は後ろから抱き締められた状態になったのだが、これはこれで物凄く歩き辛い。何故か全然重くはないのだが、図体がデカいせいで足を踏んでしまいそうだ。
「久しぶりの手料理、楽しみです。」
楽しみにしているとこ悪いんだが・・・
「お前もう、帰ってくれ!!」
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