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39話 最果てへの誘拐① 作戦
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ライがどこかへと消えた後、ティルミアは役目を果たしたと言い、再び短剣で自尽を試みる。暴れ出した彼女を第一王子が抑え込む。
「ノアディア殿、ティルを・・・!!」
「ええ・・・助けますよ。」
「すまない・・・お願いする・・・。」
動きが止まっている内にノアディアが解除の魔法を掛ける。
ティルミアは向日葵色の光に覆われ、憑依されていた状態から開放される。
その途端、彼女は第一王子の腕の中で気絶した。
第一王子は亡き王妃からプレゼントされた携帯電話を取り出し、第二王子にライが攫われたこと、西館1階の廊下にある不自然な部屋にいることを伝える。
その後ルイヴィンはティルミアの血のついた服を洗浄魔法で綺麗にし、呼吸や脈拍を確認する。ノアディアはその間、隠し部屋を隅々まで分析していた。
「ライ君が攫われたぁぁあああっ!?」
「声が大きいよ、リリーア。ボクもビックリしたけどさ、そんな命知らずいるんだって。」
「・・・。何この部屋。」
「おいおい、それってホントなのか!?今すぐ助けに行こう!!オレは仲間を見捨てない!!」
「まあ、落ち着いてくれ。レイ、何でこんなにいっぱい引き連れて来たんだ?」
連絡を入れて数分後、ヒロイン、第二王子、魔術師団団長令息、騎士団団長令息が部屋へとやって来た。
悪役令嬢は顔色が少し良くなってきたものの、まだ眠ったままだった。
「ボクに聞かないでよ。皆が勝手についてきたの。」
レイフォンドが続けて、連絡を取り合っていた時に近くに3人がいて話を聞かれてしまったと煩わしげに説明をする。
「ね、ねえ、レイ君。さっきからノアディア様凄いことしてるけれどさ、このままじゃ世界壊れちゃうんじゃない?」
一斉にノアディアへと目を移す。一見冷静そうな表情をしているが、先程から魔法を使い続けていることから苛立っていることは確かだろう。
魔法の影響で部屋全体が輝き出したと思ったら急に暗黒に包まれたり、一部の空間を歪ませたりしている。
「結界っと・・・だよねー、でもアレ、どうやって止めるワケ?」
レイフォンドはノアディアを包囲する様に結界を張り、焦りの色を見せて話す。
「ノアディア殿は怒りを抑えてくれ。これでは救えるものも救えない。」
ルイヴィンが落ち着かせようと呼び掛ける。
「ええ、ええ。そうですね。貴様らの様な塵介共には私の最愛は助けられまい。図に乗るなよ。」
いつもより低い声で周囲に重圧をかける。空気がピリつき、全員膝を突き始める。
「無効化・・・落ち着いて下さいぃぃっ!魔王、出ちゃってます!!どうにかしますから、命だけはまだ奪わないで下さいっ!!!」
声を出すこともままならない状況であったが、ヒロインだけは事態を把握しており、威圧を緩和させる魔法を自身に掛けた後、ノアディアへ命乞いをする。
「・・・申し訳ございません。私らしくありませんでしたね。それで、私でも・・・どうにもならないこの状況を、どう打開するおつもりで?」
「それは・・・わたくしに、案がありましてよ。」
「ティル!まだ寝ていないと・・・。」
悪役令嬢が目を覚まし、ノアディアへ言葉を発する。疲労困憊であるにも関わらず、彼女は話を続ける。
「いいえ、わたくしのせいで、お友達が・・・ライ様が、酷い目にあってしまいましたの。お友達のたった一人も救えなくては、この国の未来の王妃失格ですわ。話させて下さいまし。」
覚悟ができている彼女の様子を見て、ノアディアは黙って耳を傾ける。第一王子は心配そうに彼女を支えている。
「魔法陣はすぐに消滅して何もわかりませんでしたが、私を操った犯人の魔力は、まだこの学園内に残っていることが微かですが分かりますの。・・・犯人さえ見つければ、きっとどうにかなりましてよ。」
「ティル、魔力の特徴は分かるのか?」
「ええ。あれはまるで────」
体内魔力には、指紋のように人によってそれぞれ異なった特徴がある。
例えば、相手の魔力に触れると柔らかく感じたり、熱さを感じたり。人によっては味がしたり、匂いがしたりする。
魔力量が多ければ多い程、体内魔力の特徴が顕著に現れる仕組みとなっている。
その為、魔法で暗殺を行う者達は、身元が判明しない様に魔力量が少ない者達が行っている。しかし、今回はティルミアが犯人に憑依されたことで、魔力の特徴が知られてしまっていた。
「────まるで、400年前に封印されたと言われている魔王の様に禍々しかったのですわ。ですので、学園にいる者全ての体内魔力を確認したら直ぐに分かると思いますの。」
ティルミアは震えながらも謹厳な表情でノアディアへ訴える。
「・・・そうですか。確かにそれはいい案ですね。この学園にいる全ての生命を奪えば今直ぐに解決致しますね。」
部屋に散乱している物を魔法で圧縮していく。激しい怒りに平静さを失っていることは明らかであった。
「ノアディア様がバーサーカーモード入っちゃった!?・・・待って待って、ブラックホールを作ろうとしないでっ!?犯人殺しちゃったらライ君も無事じゃ済まないよ!!」
リリーアの叫びに反応したノアディアは魔法を解除する。しかし、今度は別の魔法を繰り出そうと動き出す。
「ティルちゃんこうなったら私達で犯人を割り当てるしかない!レイ君とルイヴィン様はノアディア様の暴走を止めてて!私達4人で探してくる!!」
「ちょっ!ボク!?」「俺らがか!?」
目にも留まらぬ早業で二人の王子の背中を押し、ノアディアの方へ差し向ける。
「・・・大丈夫ですよ。私が殺った方が早く終わりますので、手を借りるまでもありません。」
「じゃ、任せたよ!」
「嘘でしょ!?」「嘘だろ!?」
「ノアディア殿、ティルを・・・!!」
「ええ・・・助けますよ。」
「すまない・・・お願いする・・・。」
動きが止まっている内にノアディアが解除の魔法を掛ける。
ティルミアは向日葵色の光に覆われ、憑依されていた状態から開放される。
その途端、彼女は第一王子の腕の中で気絶した。
第一王子は亡き王妃からプレゼントされた携帯電話を取り出し、第二王子にライが攫われたこと、西館1階の廊下にある不自然な部屋にいることを伝える。
その後ルイヴィンはティルミアの血のついた服を洗浄魔法で綺麗にし、呼吸や脈拍を確認する。ノアディアはその間、隠し部屋を隅々まで分析していた。
「ライ君が攫われたぁぁあああっ!?」
「声が大きいよ、リリーア。ボクもビックリしたけどさ、そんな命知らずいるんだって。」
「・・・。何この部屋。」
「おいおい、それってホントなのか!?今すぐ助けに行こう!!オレは仲間を見捨てない!!」
「まあ、落ち着いてくれ。レイ、何でこんなにいっぱい引き連れて来たんだ?」
連絡を入れて数分後、ヒロイン、第二王子、魔術師団団長令息、騎士団団長令息が部屋へとやって来た。
悪役令嬢は顔色が少し良くなってきたものの、まだ眠ったままだった。
「ボクに聞かないでよ。皆が勝手についてきたの。」
レイフォンドが続けて、連絡を取り合っていた時に近くに3人がいて話を聞かれてしまったと煩わしげに説明をする。
「ね、ねえ、レイ君。さっきからノアディア様凄いことしてるけれどさ、このままじゃ世界壊れちゃうんじゃない?」
一斉にノアディアへと目を移す。一見冷静そうな表情をしているが、先程から魔法を使い続けていることから苛立っていることは確かだろう。
魔法の影響で部屋全体が輝き出したと思ったら急に暗黒に包まれたり、一部の空間を歪ませたりしている。
「結界っと・・・だよねー、でもアレ、どうやって止めるワケ?」
レイフォンドはノアディアを包囲する様に結界を張り、焦りの色を見せて話す。
「ノアディア殿は怒りを抑えてくれ。これでは救えるものも救えない。」
ルイヴィンが落ち着かせようと呼び掛ける。
「ええ、ええ。そうですね。貴様らの様な塵介共には私の最愛は助けられまい。図に乗るなよ。」
いつもより低い声で周囲に重圧をかける。空気がピリつき、全員膝を突き始める。
「無効化・・・落ち着いて下さいぃぃっ!魔王、出ちゃってます!!どうにかしますから、命だけはまだ奪わないで下さいっ!!!」
声を出すこともままならない状況であったが、ヒロインだけは事態を把握しており、威圧を緩和させる魔法を自身に掛けた後、ノアディアへ命乞いをする。
「・・・申し訳ございません。私らしくありませんでしたね。それで、私でも・・・どうにもならないこの状況を、どう打開するおつもりで?」
「それは・・・わたくしに、案がありましてよ。」
「ティル!まだ寝ていないと・・・。」
悪役令嬢が目を覚まし、ノアディアへ言葉を発する。疲労困憊であるにも関わらず、彼女は話を続ける。
「いいえ、わたくしのせいで、お友達が・・・ライ様が、酷い目にあってしまいましたの。お友達のたった一人も救えなくては、この国の未来の王妃失格ですわ。話させて下さいまし。」
覚悟ができている彼女の様子を見て、ノアディアは黙って耳を傾ける。第一王子は心配そうに彼女を支えている。
「魔法陣はすぐに消滅して何もわかりませんでしたが、私を操った犯人の魔力は、まだこの学園内に残っていることが微かですが分かりますの。・・・犯人さえ見つければ、きっとどうにかなりましてよ。」
「ティル、魔力の特徴は分かるのか?」
「ええ。あれはまるで────」
体内魔力には、指紋のように人によってそれぞれ異なった特徴がある。
例えば、相手の魔力に触れると柔らかく感じたり、熱さを感じたり。人によっては味がしたり、匂いがしたりする。
魔力量が多ければ多い程、体内魔力の特徴が顕著に現れる仕組みとなっている。
その為、魔法で暗殺を行う者達は、身元が判明しない様に魔力量が少ない者達が行っている。しかし、今回はティルミアが犯人に憑依されたことで、魔力の特徴が知られてしまっていた。
「────まるで、400年前に封印されたと言われている魔王の様に禍々しかったのですわ。ですので、学園にいる者全ての体内魔力を確認したら直ぐに分かると思いますの。」
ティルミアは震えながらも謹厳な表情でノアディアへ訴える。
「・・・そうですか。確かにそれはいい案ですね。この学園にいる全ての生命を奪えば今直ぐに解決致しますね。」
部屋に散乱している物を魔法で圧縮していく。激しい怒りに平静さを失っていることは明らかであった。
「ノアディア様がバーサーカーモード入っちゃった!?・・・待って待って、ブラックホールを作ろうとしないでっ!?犯人殺しちゃったらライ君も無事じゃ済まないよ!!」
リリーアの叫びに反応したノアディアは魔法を解除する。しかし、今度は別の魔法を繰り出そうと動き出す。
「ティルちゃんこうなったら私達で犯人を割り当てるしかない!レイ君とルイヴィン様はノアディア様の暴走を止めてて!私達4人で探してくる!!」
「ちょっ!ボク!?」「俺らがか!?」
目にも留まらぬ早業で二人の王子の背中を押し、ノアディアの方へ差し向ける。
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