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その3
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その週末は残業もせず、ササっと帰宅し
土曜日も外出せずに部屋の掃除と洗濯をして過ごしました。
仮にショッピングに出かけても、誰にも見つかるはずがないのですが、嘘をついた手前、会社の彼女達に悪いように思えたからです。
夕方になり小腹がすいて、着の身着のまま近くのコンビニに買い出しに向かい、自動ドアを開ける位置に立つ手前で
「小林さん」
「!!」
ドアが開く前に、ソイツに止められました。
「な…中村さん…何…で…ココに…?」
「頼みがある」
私の狼狽えぶりがおかしいとばかりに、職場と変わらない口調と表情で中村さんは立っていました。
傍らに、見覚えのある車がエンジンをかけたまま駐車されていて、それに気付かなかった自分を軽く悔やんでいると
「スマホを無くしたみたいなんだ…悪いけど、小林さんのスマホから、オレの番号にかけてもらえない?」
「え?あ、はい…」
それがココにいる理由なら仕方ありません
ちょと警戒し過ぎていた自分が、恥ずかしくすら思えます。
「0…9…0…」
中村さんはゆっくり自分の番号を教えてくれました。
「……………」
「……………」
呼び出し音は鳴りますが、誰も出そうな気配はありません
「誰も…出ませんね…」
「飯、まだならファミレスでも行こう
折り返しかかってくるかもしれないし」
「あー…」
いない叔父を殺してしまったばかりで
断る理由が見つからず、返事をしないでいると
中村さんは手慣れた様子で助手席側のドアを開けて待っていて
申し訳無さ気にシートに座るしか出来ませんでした。
車が走り出すなり
「葬儀終わったの?」
「…えぇ…滞りなく…」
「へぇ~…」
中村さんのそれは
“信じてないけどどうでもいい”の“へぇ~”でした
「いつから…あのコンビニにいたんですか?」
「あ?さっき。
あそこなら駅まで行くにしろ帰るにしろ通るだろ?」
確かに駅までの間にあのコンビニがある。
でも中村さんの言葉に違和感もある。
ただ問い詰めるのも図々しく思えたので、それ以上聞くのはやめました。
ファミレスに着いてドリンクバーを飲みながら、料理を待つ間の沈黙に耐えられなかったのと、早く解決して欲しいのとで
「スマホ…無くした場所とか…心当たりないですか?」
「ないよ。そもそも無くしてないし」
「へ…?」
間抜け顔の私に対し
勝ち誇った表情でスマホを取り出した中村さん
「小林さんも登録しといて。ついでだからラインもよろしく」
登録している中村さんの姿を正面に
“まんまと嵌められた”と気付くまでも時間を要しました。
「もしかして…コンビニで待ってたのって…」
「あぁ、今日会えなかったら明日も張るつもりだった」
「それは…ストー…
カーと続く前に中村さんの言葉に遮られ
「逆にそこまでしないと番号を教えてもらえないってどうよ?」
「す…すみません…」
何故か私が謝っていました。
「避けてるよな?」
「………」
「無言で誤魔化そうとするなら、首の動きにも注意を払え」
無意識に微かに頷いていたようです。
“オムライスお待たせしましたー”
丁度料理が運ばれて
2人の前にオムライスが並べられました。
「まぁ、頼まれた通りこの2カ月間死んでたから」
「は…?」
「オマエが言ったんだろ?1回死んでくれます?って」
「言いましたけど…」
「ありがとうは?」
「って言うか…実際1回も死んでないですよね…」
生き還った中村さんはその言葉はスルーして、綺麗な作法で美味しそうにオムライスを食べはじめました。
「いただきます」
いない叔父さんを殺したバチは、こんな形で返ってきたようです。
土曜日も外出せずに部屋の掃除と洗濯をして過ごしました。
仮にショッピングに出かけても、誰にも見つかるはずがないのですが、嘘をついた手前、会社の彼女達に悪いように思えたからです。
夕方になり小腹がすいて、着の身着のまま近くのコンビニに買い出しに向かい、自動ドアを開ける位置に立つ手前で
「小林さん」
「!!」
ドアが開く前に、ソイツに止められました。
「な…中村さん…何…で…ココに…?」
「頼みがある」
私の狼狽えぶりがおかしいとばかりに、職場と変わらない口調と表情で中村さんは立っていました。
傍らに、見覚えのある車がエンジンをかけたまま駐車されていて、それに気付かなかった自分を軽く悔やんでいると
「スマホを無くしたみたいなんだ…悪いけど、小林さんのスマホから、オレの番号にかけてもらえない?」
「え?あ、はい…」
それがココにいる理由なら仕方ありません
ちょと警戒し過ぎていた自分が、恥ずかしくすら思えます。
「0…9…0…」
中村さんはゆっくり自分の番号を教えてくれました。
「……………」
「……………」
呼び出し音は鳴りますが、誰も出そうな気配はありません
「誰も…出ませんね…」
「飯、まだならファミレスでも行こう
折り返しかかってくるかもしれないし」
「あー…」
いない叔父を殺してしまったばかりで
断る理由が見つからず、返事をしないでいると
中村さんは手慣れた様子で助手席側のドアを開けて待っていて
申し訳無さ気にシートに座るしか出来ませんでした。
車が走り出すなり
「葬儀終わったの?」
「…えぇ…滞りなく…」
「へぇ~…」
中村さんのそれは
“信じてないけどどうでもいい”の“へぇ~”でした
「いつから…あのコンビニにいたんですか?」
「あ?さっき。
あそこなら駅まで行くにしろ帰るにしろ通るだろ?」
確かに駅までの間にあのコンビニがある。
でも中村さんの言葉に違和感もある。
ただ問い詰めるのも図々しく思えたので、それ以上聞くのはやめました。
ファミレスに着いてドリンクバーを飲みながら、料理を待つ間の沈黙に耐えられなかったのと、早く解決して欲しいのとで
「スマホ…無くした場所とか…心当たりないですか?」
「ないよ。そもそも無くしてないし」
「へ…?」
間抜け顔の私に対し
勝ち誇った表情でスマホを取り出した中村さん
「小林さんも登録しといて。ついでだからラインもよろしく」
登録している中村さんの姿を正面に
“まんまと嵌められた”と気付くまでも時間を要しました。
「もしかして…コンビニで待ってたのって…」
「あぁ、今日会えなかったら明日も張るつもりだった」
「それは…ストー…
カーと続く前に中村さんの言葉に遮られ
「逆にそこまでしないと番号を教えてもらえないってどうよ?」
「す…すみません…」
何故か私が謝っていました。
「避けてるよな?」
「………」
「無言で誤魔化そうとするなら、首の動きにも注意を払え」
無意識に微かに頷いていたようです。
“オムライスお待たせしましたー”
丁度料理が運ばれて
2人の前にオムライスが並べられました。
「まぁ、頼まれた通りこの2カ月間死んでたから」
「は…?」
「オマエが言ったんだろ?1回死んでくれます?って」
「言いましたけど…」
「ありがとうは?」
「って言うか…実際1回も死んでないですよね…」
生き還った中村さんはその言葉はスルーして、綺麗な作法で美味しそうにオムライスを食べはじめました。
「いただきます」
いない叔父さんを殺したバチは、こんな形で返ってきたようです。
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