16世紀のオデュッセイア

尾方佐羽

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第2章 海の巡礼路(西洋編) フランシスコ・ザビエル

幕間のことばにかえて

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献辞にお出しした司祭さまのおはなし


 フランシスコ・ザビエルのお話を書こうと思ったとき、なぜか司祭さまとお話がしたくなりました。私が20歳の頃に何度かお話しただけで、そのあと長くまったくお会いしていませんから、きっと覚えていらっしゃらないだろう。それなのに、どうしてもお話したいと思ったのです。

 キリスト教徒ではない私が書いてもいいのか、とても迷っていたのです。

 とはいえ、司祭さまがどちらにいらっしゃるのかまったく分かりません。何となくあの辺りにいらっしゃるようだ、と分かったのはだいぶ後のことでした。

 私は無謀です。その近辺のカトリック教会に手紙を書いたら届けてもらえるだろうかと思い、それを本当にやってしまいました。

 司祭さまからお電話をいただいたのは、偶然フランシスコ・ザビエルの日(12月3日)の前日だったか、翌日だったと思います。
 私のことは覚えていらっしゃいませんでしたけれど、それは自然なことでしょう。

 手紙はずいぶん迷子になって司祭さまのお手元に届いたとのこと、私は恥ずかしくて真っ赤になってしまいました。

 司祭さまは、かつて教会で話した20歳の娘がどんな生活をしているのか、ゆっくりとお尋ねになりました。私がぽつりぽつりと答えると、「そう、それはよかった」とおっしゃって、私が20歳の時と同じように、いろいろなお話を電話でしてくださいました。歳月は過ぎましたけれど、何も変わっていらっしゃいませんでしたね。

「目は見るため、耳は聞くためのもの。では心は何のため?」

 司祭さまがよくなされる問いかけです。
 私は大人になったのに、相変わらずとんちんかんな答えをしてしまいました。

 答え、わかりますか?

 お話ができたことで、ふっきれました。

 その電話から1年後、司祭さまからまた突然お電話をいただきました。私はとてもとても驚きました。

 司祭さまはふと手紙の束を見られて、私の手紙の封筒を見つけて、前に電話したことは忘れていて、それでまたかけてくださったのでした。素敵なもの忘れです。

 その時に、司祭さまは先月(電話の)イタリアに帰郷した話をされました。帰りの飛行機で具合が悪くなり、日本の空港から救急車に乗ったそうです。

 私は、司祭さまに大事がなかったことに心から「よかった」と思い、口にもしましたが、ひとつだけ、ひとつだけ、思ったことがありました。でも口にはできませんでした。

「お国に帰りたいと思うことはないのですか」

 司祭さまは20代の前半で来日して、ずっと日本で務められて、その年数は67年になります。だからそんなことを考えたのですが、聞くことはできませんでした。

 フランシスコ・ザビエルもそうでした。

 「海の巡礼蕗」はフランシスコ・ザビエルが三洲嶋で臨終の床につき、通訳のアントニオに対して告白するお話です。

 実際その時に、アントニオが全く解することのできない言語で、フランシスコはうわごとを言っていました。識者のかたはバスク語だろうとみていますが、私も同感です。

 司祭さまに思ったことを、フランシスコに対しても思います。

 しばらくそのことは考えていようと思います。

 あのときの2回の電話があって、フランシスコ・ザビエルのお話を書いて、それが今、折り返し地点に来ました。
 まだ早いかもしれませんが、司祭さまに心から感謝していることを書いておきたいと思います。

 フランシスコのお話は3章も4章も5章もまたいで、6章になりますが、以降もどうかまたよろしくお願いいたします。

        おがたさわ

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