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カサブランカ
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萌世(もえよ)から最後のLINEが来たのは3日前のことだった。
あ、順番がさかさまだけど、彼女とは、その前に会って食事をしていた。そのときのことからはじめたほうがいいかな。
彼女は仕事で悩んでいるみたいで、「もう、辞めようかな」とうつむいていた。そのときすでに彼氏とも別れていた。いろいろなことに疲れているみたいだと思ったけど、
「人生、誰でもそういうときがあるって。何とかなるよ」
私はそんな、分かったようなことを言っていた。彼女も、「そうだよね~」なんていつもの萌世に戻ったから、私はそれほど気にしていなかったんだ。
あぁ、でも別れ際にちょっとだけ、本当にちょっとだけ、どうしようもなく暗い表情になっていた。今思い出すと、だけど。
そういうのって、LINEじゃわからないよね。
とにかく、3日前に萌世からLINEのメッセージが入っていて、私は、「天気がよくってラッキーだね」って返した。既読付いたけど、その後はもう返信が来なかった。忙しいのかなって、気にしていなかったんだけど。
彼女が行方不明だという知らせが来たのは、きのうの夜だった。
萌世のお母さんから電話がかかってきた。たぶん、それはスマホの履歴とかではなく、中学の頃の連絡網を見てかけたんだと思う。だって、スマホは萌世が持ってるでしょう。
それと、中学の頃から萌世とずっと付き合いがある人間は私ぐらいしか、思い浮かばなかったんだろうな。
萌世のお母さんは私が自宅にいることに驚いて、というよりショックを受けていた。そして、慌てて説明をはじめた。
3日前、萌世は友達と旅行に行くと言って家を出た。私にLINEをくれた日の朝だ。家族はその友達を私だと思っていたらしい。2泊で戻ってくると言っていた彼女は、夜になっても帰ってこない。遅くなるとか連絡もない。家族が電話しても、スマホの電源は切られている。
「私ね、ひかりちゃんと一緒に旅行に行ったんだとばかり思ってたの」
「いいえ、私とではないです。でも、誰とだろう……申し訳ないんですが心当たりがなくて」
お母さんは途方に暮れていたけど、もう二十歳をとうに過ぎているから、そんなことあれこれ詮索しないのが普通かもしれない。
このときは私も少しパニクっていた。
「彼女から何か連絡が入る可能性があるから、寝ないで待っています。何かあったら、私にも連絡をください。共通の友人にも聞いてみます」って言ったら、萌世のお母さんはすがるような声で言った。
「ひかりちゃん、よろしくお願いします。ありがとう」
でも、こういうときって何もできないって思い知った。私と萌世の共通の友人に一斉メール(LINEじゃなく)をすると、あとはもうすることがない。一晩中、寝ることもできずにテレビをつけっぱなしにしてNHKを流していた。ニュース速報とかで出てこないかって。出てくるわけないよね。
そんなざわざわした気持ちのまま、次の1日が過ぎて、次の1日になった。お母さんやお姉さんから何回か電話が来たけど、まだ行方不明の捜索中だってことしか分からない。私はふと、萌世のLINEを見た。あ、最後に来てたのをね。そこにはこう書いてあった。
「伊豆なう。花がたくさんあって微妙」
それから、ツイッターも見た。でも、そこには写真が1枚あがっているだけだった。私へのLINEと同じ日。で、写真は海の景色だった。砂浜じゃなくて、ごつごつした岩場。
私は何か見てはいけないものを見たような、そんなこと思っちゃいけないんだけど、でもそんな気がして、画面を閉じた。これは萌世の家族に見せなきゃな。
そして、萌世のお姉さんから電話がかかってきたのだ。
「もえ、見つかった。伊豆の海岸で……心肺停止で、病院に運ばれたけど、死亡が確認されたって」
予感はしていたけど、それでも、ガン!と頭を殴られたようで、しばらくものが言えなかった。お姉さんもショックで声が震えていた。萌世のお父さんとお母さんは伊豆の警察署にもう向かったという。
私は、申し訳ない気持ちになって、「ごめんなさい、何もできなくて」とだけ、やっとそれだけ言った。
「ひかりちゃんは何も……心配してくれてありがとう……悪いんだけど、葬儀の日時が決まったら友達への連絡をお願いしてもいいかな」
「もちろんです」
私は電話を切って、しばらく呆然としていた。何でこういうことになっちゃったんだろうって、普通は思うものなのかもしれない。でも、私はそんなことを思うこともできず、ただ呆然としていた。この前会ったときの萌世の顔を思い出そうとしたけれど、どうしても思い出せない。
もう一度萌世から来たLINEを見た。特に何の変哲もない一文だった。
「助けて」とか、そういうことを書くものじゃないだろうか。でも、こういうことに、私もそうだけど、おそらくは萌世も慣れていないはずだったから、仕方ないのかな。
見つかった次の日、萌世はお父さんやお母さんと一緒に帰ってきた。司法解剖があったけど、事件性はないということだった。彼女はうちでゆっくりすることもなく、葬儀屋さんに移った。お通夜が2日後に決まったということで、私にも連絡が来て、私はお姉さんにお願いされた通りに友達に一斉メールをした。それを電話で知らせたとき、お姉さんはすごく涙声で私に何度も、「ありがとう」と繰り返した。
お通夜の日、私は萌世のLINEとツイッターを見せなきゃって思って、早めに葬儀会場に出かけた。彼女の家族はとても忙しそうだったけど、私の姿を見つけるとみんな駆け寄ってきてくれた。私はあいさつをしてから、萌世のLINEとツイッターを見せた。案の定、どちらも家族は知らなかった。
「これは、遺書じゃないわね……」とお母さんがつぶやいた。それを聞いたお父さんがたしなめるように言う。
「そんなことを言うな……ごめんな、ひかりちゃん。伊豆の警察でさんざん、理由に心当たりがないかって聞かれて……私たちは答えられなかったんだ。どうして、こういうことになってしまったんだろうって、母さんはずっとそればかり……」
そういうと、萌世のお父さんは涙声になり話ができなくなった。
それから私は萌世に対面した。
化粧をされて唇がほんのり赤くて、今まで見たこともないぐらい、キレイな顔だった。
祭壇には花がたくさん飾られている。胡蝶蘭とか大輪のカサブランカや菊、結婚式でもたくさんお花を使うけれど、葬儀のほうが多いんじゃないだろうか。そんなことを考えながら、萌世の遺影に手を合わせていると、ふっと鼻腔に強い香りがぶつかってきた。
カサブランカは香りが強いなぁ。
その時、不意に萌世の最後のLINEの文字が甦ってきた。
「伊豆なう。花がたくさんあって微妙」
そうだ。
私は受付で係の人と話をしている萌世のお姉さんに声をかけた。
「何かあった? ひかりちゃん」
「あの……もえちゃんはお花、嫌いじゃなかったですか」
お姉さんは首を傾げている。
「そうねぇ、あまりそういう話はしてなかったと思うんだけど……ちょっと待ってね」
お姉さんは、少し離れたところでソファに腰かけているお母さんのところに行き、話をしていた。それから、お母さんはこちらにやってきた。
「ひかりちゃん、確かにもえは自分で花を買ってきたことはないわ。うちでもお花を飾ったりすることがあまりなかった。もえとそういう話をしたことがある?」
私は何かまずいことを言ってしまったような気がして、ちょっと肩をすくめて小さな声で言った。
「あの……変なこと言ってすいません。彼女は花は嫌いだって。中学の卒業式のときに飾られたお花を、終わった後にみんなで分けたときも、もえちゃんはいらないって。触ると痒くなるし、カサブランカは匂いがキツくて頭痛がするって言ってたので」
それを聞いていたお母さんは、大きく目を見開いて黙ったままでいた。その目から涙があふれて、頬をぽたぽたと伝って落ちていく。しばらくして、お母さんはようやく口を開いた。
「そうだったのね。小さい頃、もえはアトピーがひどくて、どうしてなのか分からなくて、いろいろアレルギー検査をしてもわからなくて、小学校の低学年までずっとそんな感じだったの……そうだったのね。そうだったのね。それなのに、花でたくさん飾って下さいなんて……ひかりちゃん……ありがとう」
私は去っていくお母さんの姿を見ながら、やっぱり言わないほうがよかったのかもしれないと思っていた。
通夜と告別式の場からカサブランカは外されていた。
翌日の告別式で、彼女の棺に花を皆で入れるセレモニーも変更になった。
私の一言がいけなかったのかなって申し訳なく感じたけど、斎場に行く彼女を見送りながらほんのちょびっとだけ、これでよかったような気がした。
カサブランカの匂いはあなたにはキツイよね。やっぱり。
ーfinー
あ、順番がさかさまだけど、彼女とは、その前に会って食事をしていた。そのときのことからはじめたほうがいいかな。
彼女は仕事で悩んでいるみたいで、「もう、辞めようかな」とうつむいていた。そのときすでに彼氏とも別れていた。いろいろなことに疲れているみたいだと思ったけど、
「人生、誰でもそういうときがあるって。何とかなるよ」
私はそんな、分かったようなことを言っていた。彼女も、「そうだよね~」なんていつもの萌世に戻ったから、私はそれほど気にしていなかったんだ。
あぁ、でも別れ際にちょっとだけ、本当にちょっとだけ、どうしようもなく暗い表情になっていた。今思い出すと、だけど。
そういうのって、LINEじゃわからないよね。
とにかく、3日前に萌世からLINEのメッセージが入っていて、私は、「天気がよくってラッキーだね」って返した。既読付いたけど、その後はもう返信が来なかった。忙しいのかなって、気にしていなかったんだけど。
彼女が行方不明だという知らせが来たのは、きのうの夜だった。
萌世のお母さんから電話がかかってきた。たぶん、それはスマホの履歴とかではなく、中学の頃の連絡網を見てかけたんだと思う。だって、スマホは萌世が持ってるでしょう。
それと、中学の頃から萌世とずっと付き合いがある人間は私ぐらいしか、思い浮かばなかったんだろうな。
萌世のお母さんは私が自宅にいることに驚いて、というよりショックを受けていた。そして、慌てて説明をはじめた。
3日前、萌世は友達と旅行に行くと言って家を出た。私にLINEをくれた日の朝だ。家族はその友達を私だと思っていたらしい。2泊で戻ってくると言っていた彼女は、夜になっても帰ってこない。遅くなるとか連絡もない。家族が電話しても、スマホの電源は切られている。
「私ね、ひかりちゃんと一緒に旅行に行ったんだとばかり思ってたの」
「いいえ、私とではないです。でも、誰とだろう……申し訳ないんですが心当たりがなくて」
お母さんは途方に暮れていたけど、もう二十歳をとうに過ぎているから、そんなことあれこれ詮索しないのが普通かもしれない。
このときは私も少しパニクっていた。
「彼女から何か連絡が入る可能性があるから、寝ないで待っています。何かあったら、私にも連絡をください。共通の友人にも聞いてみます」って言ったら、萌世のお母さんはすがるような声で言った。
「ひかりちゃん、よろしくお願いします。ありがとう」
でも、こういうときって何もできないって思い知った。私と萌世の共通の友人に一斉メール(LINEじゃなく)をすると、あとはもうすることがない。一晩中、寝ることもできずにテレビをつけっぱなしにしてNHKを流していた。ニュース速報とかで出てこないかって。出てくるわけないよね。
そんなざわざわした気持ちのまま、次の1日が過ぎて、次の1日になった。お母さんやお姉さんから何回か電話が来たけど、まだ行方不明の捜索中だってことしか分からない。私はふと、萌世のLINEを見た。あ、最後に来てたのをね。そこにはこう書いてあった。
「伊豆なう。花がたくさんあって微妙」
それから、ツイッターも見た。でも、そこには写真が1枚あがっているだけだった。私へのLINEと同じ日。で、写真は海の景色だった。砂浜じゃなくて、ごつごつした岩場。
私は何か見てはいけないものを見たような、そんなこと思っちゃいけないんだけど、でもそんな気がして、画面を閉じた。これは萌世の家族に見せなきゃな。
そして、萌世のお姉さんから電話がかかってきたのだ。
「もえ、見つかった。伊豆の海岸で……心肺停止で、病院に運ばれたけど、死亡が確認されたって」
予感はしていたけど、それでも、ガン!と頭を殴られたようで、しばらくものが言えなかった。お姉さんもショックで声が震えていた。萌世のお父さんとお母さんは伊豆の警察署にもう向かったという。
私は、申し訳ない気持ちになって、「ごめんなさい、何もできなくて」とだけ、やっとそれだけ言った。
「ひかりちゃんは何も……心配してくれてありがとう……悪いんだけど、葬儀の日時が決まったら友達への連絡をお願いしてもいいかな」
「もちろんです」
私は電話を切って、しばらく呆然としていた。何でこういうことになっちゃったんだろうって、普通は思うものなのかもしれない。でも、私はそんなことを思うこともできず、ただ呆然としていた。この前会ったときの萌世の顔を思い出そうとしたけれど、どうしても思い出せない。
もう一度萌世から来たLINEを見た。特に何の変哲もない一文だった。
「助けて」とか、そういうことを書くものじゃないだろうか。でも、こういうことに、私もそうだけど、おそらくは萌世も慣れていないはずだったから、仕方ないのかな。
見つかった次の日、萌世はお父さんやお母さんと一緒に帰ってきた。司法解剖があったけど、事件性はないということだった。彼女はうちでゆっくりすることもなく、葬儀屋さんに移った。お通夜が2日後に決まったということで、私にも連絡が来て、私はお姉さんにお願いされた通りに友達に一斉メールをした。それを電話で知らせたとき、お姉さんはすごく涙声で私に何度も、「ありがとう」と繰り返した。
お通夜の日、私は萌世のLINEとツイッターを見せなきゃって思って、早めに葬儀会場に出かけた。彼女の家族はとても忙しそうだったけど、私の姿を見つけるとみんな駆け寄ってきてくれた。私はあいさつをしてから、萌世のLINEとツイッターを見せた。案の定、どちらも家族は知らなかった。
「これは、遺書じゃないわね……」とお母さんがつぶやいた。それを聞いたお父さんがたしなめるように言う。
「そんなことを言うな……ごめんな、ひかりちゃん。伊豆の警察でさんざん、理由に心当たりがないかって聞かれて……私たちは答えられなかったんだ。どうして、こういうことになってしまったんだろうって、母さんはずっとそればかり……」
そういうと、萌世のお父さんは涙声になり話ができなくなった。
それから私は萌世に対面した。
化粧をされて唇がほんのり赤くて、今まで見たこともないぐらい、キレイな顔だった。
祭壇には花がたくさん飾られている。胡蝶蘭とか大輪のカサブランカや菊、結婚式でもたくさんお花を使うけれど、葬儀のほうが多いんじゃないだろうか。そんなことを考えながら、萌世の遺影に手を合わせていると、ふっと鼻腔に強い香りがぶつかってきた。
カサブランカは香りが強いなぁ。
その時、不意に萌世の最後のLINEの文字が甦ってきた。
「伊豆なう。花がたくさんあって微妙」
そうだ。
私は受付で係の人と話をしている萌世のお姉さんに声をかけた。
「何かあった? ひかりちゃん」
「あの……もえちゃんはお花、嫌いじゃなかったですか」
お姉さんは首を傾げている。
「そうねぇ、あまりそういう話はしてなかったと思うんだけど……ちょっと待ってね」
お姉さんは、少し離れたところでソファに腰かけているお母さんのところに行き、話をしていた。それから、お母さんはこちらにやってきた。
「ひかりちゃん、確かにもえは自分で花を買ってきたことはないわ。うちでもお花を飾ったりすることがあまりなかった。もえとそういう話をしたことがある?」
私は何かまずいことを言ってしまったような気がして、ちょっと肩をすくめて小さな声で言った。
「あの……変なこと言ってすいません。彼女は花は嫌いだって。中学の卒業式のときに飾られたお花を、終わった後にみんなで分けたときも、もえちゃんはいらないって。触ると痒くなるし、カサブランカは匂いがキツくて頭痛がするって言ってたので」
それを聞いていたお母さんは、大きく目を見開いて黙ったままでいた。その目から涙があふれて、頬をぽたぽたと伝って落ちていく。しばらくして、お母さんはようやく口を開いた。
「そうだったのね。小さい頃、もえはアトピーがひどくて、どうしてなのか分からなくて、いろいろアレルギー検査をしてもわからなくて、小学校の低学年までずっとそんな感じだったの……そうだったのね。そうだったのね。それなのに、花でたくさん飾って下さいなんて……ひかりちゃん……ありがとう」
私は去っていくお母さんの姿を見ながら、やっぱり言わないほうがよかったのかもしれないと思っていた。
通夜と告別式の場からカサブランカは外されていた。
翌日の告別式で、彼女の棺に花を皆で入れるセレモニーも変更になった。
私の一言がいけなかったのかなって申し訳なく感じたけど、斎場に行く彼女を見送りながらほんのちょびっとだけ、これでよかったような気がした。
カサブランカの匂いはあなたにはキツイよね。やっぱり。
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