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たくさんの小さな思い出
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「好きな花は何かありますか?」
彼が僕に聞いた。
僕は少し考えてから答えた。
「紫陽花が好きです。今は冬だから季節じゃないですけど。」
「紫陽花、綺麗ですよね。どの辺が好きなんですか?」
「あ、えーと…紫陽花って『家族団らん』っていう花言葉があるらしいんです。小さな花が集まって咲く様子が家族が仲睦まじく過ごす姿に見えるかららしいんですけど。僕、家族に恵まれなくて。ある日、雨に濡れている紫陽花がとても綺麗に見えて、僕が描く家族よりもずっとずっと綺麗に思えて、立ち止まってずっと見ていたんです。」
ここまで話をして、ハッとした。
僕は初対面の人に何を話しているんだろう。普段心に秘めている事がこんな風にスラスラと口から流れ出してしまっていた事に僕は驚いた。
多分、この人の安心感を与えてくれる柔らかい雰囲気がそうさせたのだと感じた。
「そう思える貴方の心はとても美しいですね。」
彼の思いもよらぬ言葉に僕は驚き、顔を赤らめる。
「あ、あの、そちらは好きな花、ありますか?」
照れ隠しで早口になっているのが自分でわかった。
「カランコエかな。花言葉は『たくさんの小さな思い出』。紫陽花と同じで、小さな花がたくさん集まって咲く様子から付けられたんですよ。」
彼は、少し間を置いてから続けた。
「俺にも沢山の小さな思い出があります。その一つ一つがとても大切な思い出なんです。」
胸に手を置いて目を閉じながらそう言った彼は、まるで自分自身に言い聞かせているようにも見えた。
何と答えるべきか分からずにいると、彼は「ちょっとお待ちくださいね。」と言って店の奥に入り、一輪の花を差し出してくれた。
「ラナンキュラスという花です。」
「わ、綺麗な花。」
それは、絹のドレスを幾重にもまとったような、可憐で気品ある赤い花だった。
「貴方に似合うと思ったので、もし迷惑じゃなければ受け取ってもらえませんか。」
「え、いや、花は好きなので迷惑とかはないですけど…。」
「それなら良かったです。お代はいりません。ただ…受け取って欲しいと思っただけなので。」
そう言われ、僕はその花を受け取った。
「ありがとうございます。大切にします。」
少し照れながらそう答えると、彼はとても嬉しそうな笑顔を浮かべて「はい、ぜひ。」と答えた。
彼が僕に聞いた。
僕は少し考えてから答えた。
「紫陽花が好きです。今は冬だから季節じゃないですけど。」
「紫陽花、綺麗ですよね。どの辺が好きなんですか?」
「あ、えーと…紫陽花って『家族団らん』っていう花言葉があるらしいんです。小さな花が集まって咲く様子が家族が仲睦まじく過ごす姿に見えるかららしいんですけど。僕、家族に恵まれなくて。ある日、雨に濡れている紫陽花がとても綺麗に見えて、僕が描く家族よりもずっとずっと綺麗に思えて、立ち止まってずっと見ていたんです。」
ここまで話をして、ハッとした。
僕は初対面の人に何を話しているんだろう。普段心に秘めている事がこんな風にスラスラと口から流れ出してしまっていた事に僕は驚いた。
多分、この人の安心感を与えてくれる柔らかい雰囲気がそうさせたのだと感じた。
「そう思える貴方の心はとても美しいですね。」
彼の思いもよらぬ言葉に僕は驚き、顔を赤らめる。
「あ、あの、そちらは好きな花、ありますか?」
照れ隠しで早口になっているのが自分でわかった。
「カランコエかな。花言葉は『たくさんの小さな思い出』。紫陽花と同じで、小さな花がたくさん集まって咲く様子から付けられたんですよ。」
彼は、少し間を置いてから続けた。
「俺にも沢山の小さな思い出があります。その一つ一つがとても大切な思い出なんです。」
胸に手を置いて目を閉じながらそう言った彼は、まるで自分自身に言い聞かせているようにも見えた。
何と答えるべきか分からずにいると、彼は「ちょっとお待ちくださいね。」と言って店の奥に入り、一輪の花を差し出してくれた。
「ラナンキュラスという花です。」
「わ、綺麗な花。」
それは、絹のドレスを幾重にもまとったような、可憐で気品ある赤い花だった。
「貴方に似合うと思ったので、もし迷惑じゃなければ受け取ってもらえませんか。」
「え、いや、花は好きなので迷惑とかはないですけど…。」
「それなら良かったです。お代はいりません。ただ…受け取って欲しいと思っただけなので。」
そう言われ、僕はその花を受け取った。
「ありがとうございます。大切にします。」
少し照れながらそう答えると、彼はとても嬉しそうな笑顔を浮かべて「はい、ぜひ。」と答えた。
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