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第六章
人物相関図
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私は、自分の人物相関図をノートに書き出してみた。
そこには、晃平や雪乃、隼人や莉奈、支配人、両親や柚希の名前が連なる。
「うーん…」
30歳、相澤瑞希。
今、私が重点を置くべきことは果たして…
ピンポーン…
インターホンが鳴って、玄関を開けると柚希が立っていた。
「やっほー、上がるねー」
そう言って大きな荷物を持った柚希が部屋に入ってくる。
「え?ちょっとちょっと、何その荷物」
「亮が美容研修で3日間出張なの。だからその間泊まるねー」
〝自由だなぁ〟と苦笑していると、柚希が私の人物相関図を見つけた。
「何これ…」
「人物相関図」
「見れば分かるし」
「人生について真剣に考えようかと…」
何それと笑う柚希だったが、ノートに書かれた〝福岡〟の文字を見て、笑いを止める。
「福岡…って、何?」
「あ…」
「お姉ちゃん…、福岡に行くの?」
寂しげな柚希の表情。
柚希にもちゃんと、説明しなきゃ。
「福岡に、新しいゲストハウスが出来るの。そこの、支配人にならないかって、話が来てる…」
「その話、受けるってこと?」
「まだ、迷ってるの。チャンスだとは思うけど、正直今の私には荷が重いとも思ってる」
柚希は、もう一度人物相関図に目を落とした。
「福岡に行けばまた、この人物相関図は作り直しになっちゃうね…」
そうだ…、福岡に行けば晃平も雪乃も、隼人も莉奈も居ない。
両親や柚希とも離れ離れだ。
「お姉ちゃんは、もう晃平さんのことは諦めるの?」
「柚希…、晃平は雪乃さんと結婚するし…」
「でも、気持ち伝えてないじゃない」
「っ…」
「晃平さんのこと何とも想ってなくて、本当に支配人になりたいっていうなら、私は福岡行き応援するよ。
でも、晃平さんを諦めるために福岡に行くなら、私は応援出来ない」
柚希の言葉で、私は自分が書いた相関図を見る。
晃平の横に書かれた雪乃の名前。
胸が苦しかった。
本当は今でも、晃平の名前は私の隣に居てほしい。
〝先に寝るね〟と柚希が横になってからも、私は一人相関図を見つめながら、これからの仕事のことや、晃平とのことを考え続けたのだった。
翌日の出勤途中…
駅のホームで相変わらず相関図を思い描いていると、
「瑞希ちゃん?」
その声に振り向くとそこには…
「将太くん!」
晃平の同僚である将太の姿。
「うわ、久しぶりー」
「将太くん、ここのホーム使ってるの?」
「今日は朝から営業でねー、ここで乗り換えなんだ」
将太との再会に懐かしさが込み上げる。
三年ぶりとは思えないほど、晃平や将太との思い出が蘇ってきた。
声を掛ける時に難しい顔をしてたと将太に笑われた私は、人物相関図について考えてたと将太に話す。
電車に揺られながら、まるで自分の心も揺れているような感覚だった。
「…瑞希ちゃんの〝今〟にはさ、まだ晃平が居るってことだよね?」
「え?」
「じゃなきゃ、人物相関図に載らないでしょ」
将太はにっこり笑う。
さらっと言われてしまったが、未練タラタラなことに気付かれたようだ。
「晃平にはさ、瑞希ちゃんが必要だと思うよ」
「…そうかな…」
「まぁ、瑞希ちゃんがどうしても福岡に行きたいって言うなら、俺は止めないけどさ」
「どうしてもってわけじゃ…」
将太がニヤニヤする。
「…何か言いたそうだね」
と突っ込むと、
「ほらね、もう決まってんじゃん。瑞希ちゃんが本当はどうしたいか」
「え、いや、そういうんじゃ…」
「素直になりなよ」
〝あ、俺ここ!じゃあね、瑞希ちゃん。またね〟
と言って将太は颯爽と電車を降りていった。
「まるで、木枯らし…」
あっという間の将太との会話。
だけど、その中で気付かされることは多く、瑞希はなんとなく胸に引っ掛かってるものが取れたような気がした。
そこには、晃平や雪乃、隼人や莉奈、支配人、両親や柚希の名前が連なる。
「うーん…」
30歳、相澤瑞希。
今、私が重点を置くべきことは果たして…
ピンポーン…
インターホンが鳴って、玄関を開けると柚希が立っていた。
「やっほー、上がるねー」
そう言って大きな荷物を持った柚希が部屋に入ってくる。
「え?ちょっとちょっと、何その荷物」
「亮が美容研修で3日間出張なの。だからその間泊まるねー」
〝自由だなぁ〟と苦笑していると、柚希が私の人物相関図を見つけた。
「何これ…」
「人物相関図」
「見れば分かるし」
「人生について真剣に考えようかと…」
何それと笑う柚希だったが、ノートに書かれた〝福岡〟の文字を見て、笑いを止める。
「福岡…って、何?」
「あ…」
「お姉ちゃん…、福岡に行くの?」
寂しげな柚希の表情。
柚希にもちゃんと、説明しなきゃ。
「福岡に、新しいゲストハウスが出来るの。そこの、支配人にならないかって、話が来てる…」
「その話、受けるってこと?」
「まだ、迷ってるの。チャンスだとは思うけど、正直今の私には荷が重いとも思ってる」
柚希は、もう一度人物相関図に目を落とした。
「福岡に行けばまた、この人物相関図は作り直しになっちゃうね…」
そうだ…、福岡に行けば晃平も雪乃も、隼人も莉奈も居ない。
両親や柚希とも離れ離れだ。
「お姉ちゃんは、もう晃平さんのことは諦めるの?」
「柚希…、晃平は雪乃さんと結婚するし…」
「でも、気持ち伝えてないじゃない」
「っ…」
「晃平さんのこと何とも想ってなくて、本当に支配人になりたいっていうなら、私は福岡行き応援するよ。
でも、晃平さんを諦めるために福岡に行くなら、私は応援出来ない」
柚希の言葉で、私は自分が書いた相関図を見る。
晃平の横に書かれた雪乃の名前。
胸が苦しかった。
本当は今でも、晃平の名前は私の隣に居てほしい。
〝先に寝るね〟と柚希が横になってからも、私は一人相関図を見つめながら、これからの仕事のことや、晃平とのことを考え続けたのだった。
翌日の出勤途中…
駅のホームで相変わらず相関図を思い描いていると、
「瑞希ちゃん?」
その声に振り向くとそこには…
「将太くん!」
晃平の同僚である将太の姿。
「うわ、久しぶりー」
「将太くん、ここのホーム使ってるの?」
「今日は朝から営業でねー、ここで乗り換えなんだ」
将太との再会に懐かしさが込み上げる。
三年ぶりとは思えないほど、晃平や将太との思い出が蘇ってきた。
声を掛ける時に難しい顔をしてたと将太に笑われた私は、人物相関図について考えてたと将太に話す。
電車に揺られながら、まるで自分の心も揺れているような感覚だった。
「…瑞希ちゃんの〝今〟にはさ、まだ晃平が居るってことだよね?」
「え?」
「じゃなきゃ、人物相関図に載らないでしょ」
将太はにっこり笑う。
さらっと言われてしまったが、未練タラタラなことに気付かれたようだ。
「晃平にはさ、瑞希ちゃんが必要だと思うよ」
「…そうかな…」
「まぁ、瑞希ちゃんがどうしても福岡に行きたいって言うなら、俺は止めないけどさ」
「どうしてもってわけじゃ…」
将太がニヤニヤする。
「…何か言いたそうだね」
と突っ込むと、
「ほらね、もう決まってんじゃん。瑞希ちゃんが本当はどうしたいか」
「え、いや、そういうんじゃ…」
「素直になりなよ」
〝あ、俺ここ!じゃあね、瑞希ちゃん。またね〟
と言って将太は颯爽と電車を降りていった。
「まるで、木枯らし…」
あっという間の将太との会話。
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