ポケットに隠した約束

Mari

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第六章

光の出口

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その週の土曜日、私が担当する結婚式がまた一つお披楽喜おひらきを迎えた。

私はゲストの見送りを一通り見届けてから、ブライズルームへ足を運ぶ。
一年かけて準備してきた結婚式を終えて、この時間が無性に寂しく感じるのは、毎度のことだ。

「今日は本当におめでとうございます」
「相澤さん、本当にありがとうございました」
手を取り合い、握手を交わす。
新郎新婦のこの言葉と笑顔で疲れなんて一気に吹き飛んでしまうようだ。


新郎新婦は二次会へと向かうため、ブライズルームを出る。
名残惜しそうに会場を一度見渡すと、私へ向き直った。
「相澤さん」
「はい」
「一年間ありがとうございました。たくさん我が儘を聞いて頂けて、こんなステキな結婚式にして頂けて、感謝しかないです」
新婦が涙ぐんでそう告げる。

「お二人の結婚式のお手伝いが出来て嬉しいです」
そう伝えると、新婦は私の手を取って言った。
「相澤さんが担当で本当に良かったです。これからもたくさんの結婚式を作り上げていって下さいね!
私も友達に相澤さんをどんどん紹介するので!」
「ありがとうございます」

やっぱりこの仕事をやってて良かった…そう思える。
お客様と一緒に作り上げる結婚式は、私の心をも満たしてくれるものだった。


オフィスに戻ると、フロアマネージャーと莉奈が何やら話し込んでいる。
「あ、瑞希お疲れ様ー!ねえねえ、瑞希知ってた?」
莉奈が手招きして私を呼んだ。
「何?」
「マネージャー、一年前に支配人にならないかって話、蹴ったんだって!」
「え…、知らなかった…」
フロアマネージャーは、今年36歳で結婚式の担当件数が多いにも関わらず要領良く仕事をこなしていて、人望も厚い、支配人としても申し分のない人。
それなのに、話を断ったのはなぜだろう。
そんな疑問が浮かぶ。

「どうして、断っちゃったんですか…?」
私は素直に疑問を投げ掛けてみた。
「もう少し、プランナーで居たかったからかなあ」
マネージャーはそう言って微笑むと、話を続ける。
「支配人や副支配人になってしまえば、プランナーとして担当を持つこともなくなるでしょう?」
私も莉奈も、うんうんと耳を傾けた。

「売上や運営、管理の仕事も、もちろんやりがいはあるだろうし、スキルアップにも繋がるとは思うの。
でも、私はもっとたくさんの結婚式を担当していたかったの。今自分がやりたいことを優先させただけよ」


その時のマネージャーの顔はとってもキラキラしていて、この仕事が好きだということも、プランナーとして誇りを持っていることも分かる。

〝今自分がやりたいことを優先させただけ〟
その言葉が私の中にストンと入ってきた。

私が今やりたいこと…

支配人になりたい?
それとも、プランナーとして結婚式のお手伝いをしたい?

そっか…
そう考えれば答えなんてすぐだったんだ…

雪乃さんと結婚する晃平と会わずに済むとか、そんなこと今は考えずに、自分の人生どうしたいかをまず考えよう。


難しく考える必要はない。
今の気持ちをそのまま優先させたらいい。
モヤモヤしていた心の中に、光の出口が見えたような気がした。





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