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第六章
私の道行く先
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コンコン…
「どうぞ」
「失礼します」
翌日、私が訪れたのは支配人室だった。
足がすくみそうな程の足取りで、支配人の前まで歩みを進める。
「答えが出たのね?」
支配人が穏やかな表情で問うと、
「はい」
と私は答えた。
「今回のお話、とても有難いお話だったのですが、お断りさせて下さい」
私の答えに、支配人は一瞬目を見開く。
「意外だったわ。受けると思っていたから」
私は一言一言丁寧に自分の気持ちを話し始めた。
「やりがいはあると思います。正直、挑戦してみたいとも思いました。…だけど、気付いたんです」
支配人が興味深そうに耳を傾ける。
「私はまだまだ学ぶことが多くて、自分のことさえ分かってなくて、いつも周りに居るたくさんの人たちから教わることばかりなんです」
そう、いつだって大事なことは周りに居る皆から教わった。
「それに、プランナーとしてもっともっとたくさんの結婚式を、新郎新婦の一番側でお手伝いしていたいです」
私の言葉に支配人は〝そっか〟と微笑む。
私は支配人の目をしっかりと見つめたまま続けた。
「だから、プランナーとして一組でも多く担当を持って、周りの皆に恩返しが出来るまで、私はここを離れたくありません」
こんな理由でと笑われるかもしれない。
だけど、精一杯考えて、私がそうしたいと思える結論を出したつもりだ。
「正直、相澤さんにここを去られると困ると思っていたのよ」
支配人が大きくため息をつく。
「上層部へは今日中に断りの連絡をしておくわ。
まだまだ頼りにしてるわよ、相澤さん」
「…はい!」
支配人室を出ると、莉奈が待っていてくれた。
私がオフィスに居ないのを心配したのだろう。
「…返事、したの?」
「うん」
じっと私の答えを待つ莉奈。
「まだまだ私はプランナーで居たいし、人に何かを教えられる立場じゃないから…」
「え?…ということは?」
「断ったよ」
次の瞬間、莉奈がぎゅーっと抱きしめてくる。
思わず笑みが零れた。
「応援するって強がったけど、本当は福岡に行っちゃったらどうしようって不安だったよ!だから超嬉しい!」
莉奈の声も弾む。
「私も離れたくないもん」
そう言って力いっぱい莉奈を抱きしめ返す。
その日の帰り道。
私と莉奈、隼人は、相変わらずブライダルフェアの準備に終われ、かなり遅い時間になってサロンを出た。
「なんだ、断ったんだ?」
素っ気ない隼人の反応に、すかさず莉奈が言い返す。
「嬉しいくせにー」
「はぁ?」
なんて言いながらも、隼人はやけに楽しそうだ。
その時、私の携帯が晃平からの着信を知らせる。
「…あ」
隼人と莉奈が振り向くも、私は通話ボタンを押した。
「はい…」
『瑞希?』
「うん、どうしたの?」
『将太から、瑞希が福岡に行くかもって聞いて…』
「ああ…」
『本当に…、行くの?』
なんだか、胸が高鳴る。
晃平にとっては私が福岡に行こうが、もはや関係のないことだ。
それでもこうやって電話をかけてきてくれる。
期待、しちゃうよ?
「行くって言ったら…、どうする?」
『え…?』
いやいやいや、おかしいだろ、私。
「冗談だよ。今日、その話断ったの」
『あ…、そっか、そうなんだ?』
「私はまだプランナーやっていたいから」
『…瑞希らしいな』
電話の向こうに晃平がいる。
すぐ耳元で晃平の声が聞こえる。
『瑞希がもし福岡に行くって言うなら、今度は俺が瑞希を待つって言うつもりだったんだけどな』
少しおどけて言う晃平。
「え…それ、どういう…」
すると晃平の電話の向こうで将太くんが晃平を呼ぶ声が聞こえた。
『悪い、瑞希。これから接待で…、またな』
「あ、うん…」
通話の切れた携帯を握りしめる。
ねぇ、今のって何?
期待しちゃうってば…
なんでそんなこと言うの、バカ晃平…
東の空には下弦の月…
道行く先は月の光で明るく照らされている、そんな夜だった。
「どうぞ」
「失礼します」
翌日、私が訪れたのは支配人室だった。
足がすくみそうな程の足取りで、支配人の前まで歩みを進める。
「答えが出たのね?」
支配人が穏やかな表情で問うと、
「はい」
と私は答えた。
「今回のお話、とても有難いお話だったのですが、お断りさせて下さい」
私の答えに、支配人は一瞬目を見開く。
「意外だったわ。受けると思っていたから」
私は一言一言丁寧に自分の気持ちを話し始めた。
「やりがいはあると思います。正直、挑戦してみたいとも思いました。…だけど、気付いたんです」
支配人が興味深そうに耳を傾ける。
「私はまだまだ学ぶことが多くて、自分のことさえ分かってなくて、いつも周りに居るたくさんの人たちから教わることばかりなんです」
そう、いつだって大事なことは周りに居る皆から教わった。
「それに、プランナーとしてもっともっとたくさんの結婚式を、新郎新婦の一番側でお手伝いしていたいです」
私の言葉に支配人は〝そっか〟と微笑む。
私は支配人の目をしっかりと見つめたまま続けた。
「だから、プランナーとして一組でも多く担当を持って、周りの皆に恩返しが出来るまで、私はここを離れたくありません」
こんな理由でと笑われるかもしれない。
だけど、精一杯考えて、私がそうしたいと思える結論を出したつもりだ。
「正直、相澤さんにここを去られると困ると思っていたのよ」
支配人が大きくため息をつく。
「上層部へは今日中に断りの連絡をしておくわ。
まだまだ頼りにしてるわよ、相澤さん」
「…はい!」
支配人室を出ると、莉奈が待っていてくれた。
私がオフィスに居ないのを心配したのだろう。
「…返事、したの?」
「うん」
じっと私の答えを待つ莉奈。
「まだまだ私はプランナーで居たいし、人に何かを教えられる立場じゃないから…」
「え?…ということは?」
「断ったよ」
次の瞬間、莉奈がぎゅーっと抱きしめてくる。
思わず笑みが零れた。
「応援するって強がったけど、本当は福岡に行っちゃったらどうしようって不安だったよ!だから超嬉しい!」
莉奈の声も弾む。
「私も離れたくないもん」
そう言って力いっぱい莉奈を抱きしめ返す。
その日の帰り道。
私と莉奈、隼人は、相変わらずブライダルフェアの準備に終われ、かなり遅い時間になってサロンを出た。
「なんだ、断ったんだ?」
素っ気ない隼人の反応に、すかさず莉奈が言い返す。
「嬉しいくせにー」
「はぁ?」
なんて言いながらも、隼人はやけに楽しそうだ。
その時、私の携帯が晃平からの着信を知らせる。
「…あ」
隼人と莉奈が振り向くも、私は通話ボタンを押した。
「はい…」
『瑞希?』
「うん、どうしたの?」
『将太から、瑞希が福岡に行くかもって聞いて…』
「ああ…」
『本当に…、行くの?』
なんだか、胸が高鳴る。
晃平にとっては私が福岡に行こうが、もはや関係のないことだ。
それでもこうやって電話をかけてきてくれる。
期待、しちゃうよ?
「行くって言ったら…、どうする?」
『え…?』
いやいやいや、おかしいだろ、私。
「冗談だよ。今日、その話断ったの」
『あ…、そっか、そうなんだ?』
「私はまだプランナーやっていたいから」
『…瑞希らしいな』
電話の向こうに晃平がいる。
すぐ耳元で晃平の声が聞こえる。
『瑞希がもし福岡に行くって言うなら、今度は俺が瑞希を待つって言うつもりだったんだけどな』
少しおどけて言う晃平。
「え…それ、どういう…」
すると晃平の電話の向こうで将太くんが晃平を呼ぶ声が聞こえた。
『悪い、瑞希。これから接待で…、またな』
「あ、うん…」
通話の切れた携帯を握りしめる。
ねぇ、今のって何?
期待しちゃうってば…
なんでそんなこと言うの、バカ晃平…
東の空には下弦の月…
道行く先は月の光で明るく照らされている、そんな夜だった。
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