24 / 31
第七章
祖父母への報告
しおりを挟む
ピンポーン…
んん?
誰…?こんな朝っぱらから…
ピンポーン…
休みなんだからもう少し寝かせてよぅ…
ピンポーン…ピンポンピンポンピンポーン…
うあぁぁー…
もう!
「はいはい…」
玄関の覗き穴から外を見ると、柚希の姿。
なんだよぅ、寝かせてくれよ…
ガチャ…
「柚希、今日休みなんだけど…」
「知ってる。だから来たの」
「どうしたの…?」
「いいからいいから、早く準備して」
「え?準備って何?」
「出掛ける準備!」
「…は?」
あれよあれよと、柚希に急かされるままに私は出掛ける準備をした。
時刻はまだ朝の七時半。
まじか…
柚ぽん、休みの日にそりゃないぜ…。
柚希に引っ張られ電車に乗り込み、途中花屋に寄り、辿り着いた先は…
相澤家の祖父母が眠る墓地だった。
「久しぶりに来た…」
「そうでしょう?お姉ちゃん、お盆もここ数年忙しくて来れてないもんね」
柚希は、お花を供え線香に火をつける。
「おじいちゃんとおばあちゃんに、結婚の報告をしたかったの」
そう言って柚希は微笑んだ。
祖父母への報告を終え、墓地の近くの公園に向かう。
「柚希、私さ福岡行き断ったよ」
「そっか」
「晃平のことはね、関係ないの。ただ単純にもっとプランナーで居たかったの」
柚希は、一度私の顔を見ると〝ふーん〟と言って笑った。
「ねぇ、お姉ちゃんさ、覚えてる?」
「うん?」
「おじいちゃんとおばあちゃんがまだ生きてる時さ、お姉ちゃんと私とおじいちゃんたちとで、旅行に行ったじゃん?」
「うん、温泉旅行ね!」
懐かしさが胸に広がる。
大好きだったおじいちゃんとおばあちゃん。
私と柚希とで、四人での温泉旅行をプレゼントしたんだっけ。
「あの時おばあちゃんが言った言葉、覚えてる?」
「おばあちゃんが言った言葉?」
ちょうど近くで花火大会をしてて、温泉旅館の部屋から花火を見ていた時だと言う。
おぼろげに記憶を辿り、頭を捻った。
「〝いつか、心から好きな人が出来た時、どんなに辛い状況であっても自分の素直な気持ちだけは伝えなさい〟って、おばあちゃん言ったんだよ」
あ…、覚えてる。
後悔だけはしないようにと、おばあちゃんは微笑んでた。
その後、おばあちゃんもう一ついいこと言ってたな、なんだっけ…
「お姉ちゃんはさ、今のままで本当に後悔しない?」
「…柚希…」
「人ってさ、明日も自分は生きてますなんて誰も言えないじゃない」
「…そうだね」
「好きな人に好きって伝えられないまま、事故に遭って死んじゃったら、絶対後悔するよね」
「…うん」
「伝えてダメだったとしてもさ、ちゃんと前を向ける気がしない?」
柚希の言う通りかもしれない。
今の私では、後悔が残らないわけがなかった。
…私、晃平が日本に帰ってきてからまだ〝おかえり〟も、〝待ってた〟も、〝好き〟も何も伝えてない。
「おばあちゃんが言ってたじゃん。〝人は本当の意味で前を向いた時、その後に必ずいいことが待ってるから諦めるな〟って」
あ、そうだ、その言葉でワクワクしたんだっけ。
その言葉を信じたいと思ったんだよね…
「お姉ちゃんもさ、おじいちゃんとおばあちゃんに恥ずかしくない報告が出来るように頑張りなよ」
柚希はそう言ってニカッと笑った。
「…言ってくれるね」
横目で柚希を見ると、
柚希が何かを思い出したように言う。
「そういえば、晃平さんも同じセリフ言ってたな…」
「え?晃平と会ったの?」
「うん、ちょっと前に偶然カフェでね」
〝あーあ、バカみたい〟と言いながら柚希は空を仰ぎ見た。
「晃平さんもお姉ちゃんも似た者同士、いい加減素直になりなよー」
柚希の言葉に苦笑する。
柚希が今日、祖父母の墓参りに私を連れてきてくれたのは、おばあちゃんの言葉を思い出させたかったのかもしれないな。
おかげで、少しだけ勇気が湧いてきたような気がした。
左のコートのポケットに手を入れる。
触れた手袋…。
晃平との叶わなかった約束をポケットに隠したまま、冬の空に白い息を吐き出して、一つ笑顔を溢した。
んん?
誰…?こんな朝っぱらから…
ピンポーン…
休みなんだからもう少し寝かせてよぅ…
ピンポーン…ピンポンピンポンピンポーン…
うあぁぁー…
もう!
「はいはい…」
玄関の覗き穴から外を見ると、柚希の姿。
なんだよぅ、寝かせてくれよ…
ガチャ…
「柚希、今日休みなんだけど…」
「知ってる。だから来たの」
「どうしたの…?」
「いいからいいから、早く準備して」
「え?準備って何?」
「出掛ける準備!」
「…は?」
あれよあれよと、柚希に急かされるままに私は出掛ける準備をした。
時刻はまだ朝の七時半。
まじか…
柚ぽん、休みの日にそりゃないぜ…。
柚希に引っ張られ電車に乗り込み、途中花屋に寄り、辿り着いた先は…
相澤家の祖父母が眠る墓地だった。
「久しぶりに来た…」
「そうでしょう?お姉ちゃん、お盆もここ数年忙しくて来れてないもんね」
柚希は、お花を供え線香に火をつける。
「おじいちゃんとおばあちゃんに、結婚の報告をしたかったの」
そう言って柚希は微笑んだ。
祖父母への報告を終え、墓地の近くの公園に向かう。
「柚希、私さ福岡行き断ったよ」
「そっか」
「晃平のことはね、関係ないの。ただ単純にもっとプランナーで居たかったの」
柚希は、一度私の顔を見ると〝ふーん〟と言って笑った。
「ねぇ、お姉ちゃんさ、覚えてる?」
「うん?」
「おじいちゃんとおばあちゃんがまだ生きてる時さ、お姉ちゃんと私とおじいちゃんたちとで、旅行に行ったじゃん?」
「うん、温泉旅行ね!」
懐かしさが胸に広がる。
大好きだったおじいちゃんとおばあちゃん。
私と柚希とで、四人での温泉旅行をプレゼントしたんだっけ。
「あの時おばあちゃんが言った言葉、覚えてる?」
「おばあちゃんが言った言葉?」
ちょうど近くで花火大会をしてて、温泉旅館の部屋から花火を見ていた時だと言う。
おぼろげに記憶を辿り、頭を捻った。
「〝いつか、心から好きな人が出来た時、どんなに辛い状況であっても自分の素直な気持ちだけは伝えなさい〟って、おばあちゃん言ったんだよ」
あ…、覚えてる。
後悔だけはしないようにと、おばあちゃんは微笑んでた。
その後、おばあちゃんもう一ついいこと言ってたな、なんだっけ…
「お姉ちゃんはさ、今のままで本当に後悔しない?」
「…柚希…」
「人ってさ、明日も自分は生きてますなんて誰も言えないじゃない」
「…そうだね」
「好きな人に好きって伝えられないまま、事故に遭って死んじゃったら、絶対後悔するよね」
「…うん」
「伝えてダメだったとしてもさ、ちゃんと前を向ける気がしない?」
柚希の言う通りかもしれない。
今の私では、後悔が残らないわけがなかった。
…私、晃平が日本に帰ってきてからまだ〝おかえり〟も、〝待ってた〟も、〝好き〟も何も伝えてない。
「おばあちゃんが言ってたじゃん。〝人は本当の意味で前を向いた時、その後に必ずいいことが待ってるから諦めるな〟って」
あ、そうだ、その言葉でワクワクしたんだっけ。
その言葉を信じたいと思ったんだよね…
「お姉ちゃんもさ、おじいちゃんとおばあちゃんに恥ずかしくない報告が出来るように頑張りなよ」
柚希はそう言ってニカッと笑った。
「…言ってくれるね」
横目で柚希を見ると、
柚希が何かを思い出したように言う。
「そういえば、晃平さんも同じセリフ言ってたな…」
「え?晃平と会ったの?」
「うん、ちょっと前に偶然カフェでね」
〝あーあ、バカみたい〟と言いながら柚希は空を仰ぎ見た。
「晃平さんもお姉ちゃんも似た者同士、いい加減素直になりなよー」
柚希の言葉に苦笑する。
柚希が今日、祖父母の墓参りに私を連れてきてくれたのは、おばあちゃんの言葉を思い出させたかったのかもしれないな。
おかげで、少しだけ勇気が湧いてきたような気がした。
左のコートのポケットに手を入れる。
触れた手袋…。
晃平との叶わなかった約束をポケットに隠したまま、冬の空に白い息を吐き出して、一つ笑顔を溢した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる