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第七章
罰
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晃平や将太が所属する部署に一本の内線電話が鳴る。
「将太さん、ロビーにお客様がいらしてるそうですよ」
女性スタッフが将太にそう呼び掛けた。
「お客様?…はて?」
〝誰だろ〟と言いながら将太はロビーに向かう。
ロビーで将太を待っていたのは、雪乃だった。
「…えーと、晃平の彼女さん…」
「はい…」
「晃平なら、今営業に出てますよ」
「いえ、あの…今日は晃平に用事ではないんです」
「…」
晃平が恋愛話をしなくなったことから、将太は晃平と雪乃のことをほとんど知らない。
だからこそ雪乃が自分に何の用があって来たのか興味があった。
将太は雪乃をロビー横にあるカフェテラスへと促す。
しばらく、何か話そうとしては押し黙る雪乃。
将太は痺れを切らし、話し掛けた。
「何か聞きたいことがあって来たんじゃないんすか?」
「あ、えっと…、はい」
雪乃は戸惑いながらも、言葉を押し出す。
「晃平と…、相澤さんのことについて、聞きたくて」
「…聞いてどうするんすか」
「…っ…、二人が付き合ってたことは知ってるんです。日本に戻った時お互い相手が居なかったら結婚しようって約束してたことも…。だけどそれしか知らなくて…」
「…あんた、晃平と結婚するんだったら、そういう話は聞かないほうがいいんじゃないの?」
将太の鋭い指摘に圧倒されそうになる雪乃だったが、前に進むためにどうしても聞いておきたかった。
「相澤さんと付き合ってる時の晃平は、どんな感じだったのか知りたいんです…」
将太は一度目を伏せるが、ポツリポツリと話し始める。
「あの二人はいつも自然体でしたよ。お互いを尊重し合ってて、だけど想い合ってて。いつも笑ってた。
俺もそんな二人を見てるのが楽しかったし、いずれ結婚するんだろうなって、当たり前のように思ってましたよ」
雪乃は胸をチクチク刺されてるような話に、じっと耳を傾けた。
将太は、嘘をついても仕方ないと思い、正直に知ってる限りを伝える。
「…あいつは、ニューヨークに行ってからも、ずっと瑞希ちゃんのことを気にかけてた。ずっと好きな気持ちは変わらなかったんすよ」
「…」
「三年前のクリスマスにあいつはプロポーズするはずだった。それなのに、転勤が決まってしまって…。
日本に戻ったら今度こそ指輪を渡すつもりだったんだ。瑞希ちゃんとの思い出が詰まった高台にある公園で。
そこまで考えてたのに、なぜか帰ってきたあいつは、別の人と結婚することになったとか言うし、訳わかんねえ」
プロポーズ…
指輪…日本に戻ったら渡すつもりだった…
雪乃の頭の中でその言葉が何度も繰り返された。
結婚することになっても、晃平から結婚指輪の話は出ない。
婚約指輪さえ貰っていなかった。
もちろん、プロポーズも自分から…。
雪乃の視界は次第にぼやけていく。
一粒の涙が頬を伝うと、言い様のない心の寂しさが襲った。
「…あは、バカだ…私」
最初から、晃平の優しさを利用して結婚という約束をさせたことは、ただ晃平を苦しめただけ。
そこに本当の愛なんて存在しない。
結婚という約束の後で好きになってもらえばいいなんて、なんて浅はかだったんだろうと雪乃は俯いたまま涙を流し続けた。
「…きついこと話してごめん。でも、本当に晃平のこと好きならさ、晃平の気持ちをちゃんと考えてあげてよ」
そう言って、〝仕事があるから〟と将太は席を立つ。
自分のことだけを考えて、晃平の気持ちを考えなかった罰だと、雪乃はしばらく泣き続けたのだった。
「将太さん、ロビーにお客様がいらしてるそうですよ」
女性スタッフが将太にそう呼び掛けた。
「お客様?…はて?」
〝誰だろ〟と言いながら将太はロビーに向かう。
ロビーで将太を待っていたのは、雪乃だった。
「…えーと、晃平の彼女さん…」
「はい…」
「晃平なら、今営業に出てますよ」
「いえ、あの…今日は晃平に用事ではないんです」
「…」
晃平が恋愛話をしなくなったことから、将太は晃平と雪乃のことをほとんど知らない。
だからこそ雪乃が自分に何の用があって来たのか興味があった。
将太は雪乃をロビー横にあるカフェテラスへと促す。
しばらく、何か話そうとしては押し黙る雪乃。
将太は痺れを切らし、話し掛けた。
「何か聞きたいことがあって来たんじゃないんすか?」
「あ、えっと…、はい」
雪乃は戸惑いながらも、言葉を押し出す。
「晃平と…、相澤さんのことについて、聞きたくて」
「…聞いてどうするんすか」
「…っ…、二人が付き合ってたことは知ってるんです。日本に戻った時お互い相手が居なかったら結婚しようって約束してたことも…。だけどそれしか知らなくて…」
「…あんた、晃平と結婚するんだったら、そういう話は聞かないほうがいいんじゃないの?」
将太の鋭い指摘に圧倒されそうになる雪乃だったが、前に進むためにどうしても聞いておきたかった。
「相澤さんと付き合ってる時の晃平は、どんな感じだったのか知りたいんです…」
将太は一度目を伏せるが、ポツリポツリと話し始める。
「あの二人はいつも自然体でしたよ。お互いを尊重し合ってて、だけど想い合ってて。いつも笑ってた。
俺もそんな二人を見てるのが楽しかったし、いずれ結婚するんだろうなって、当たり前のように思ってましたよ」
雪乃は胸をチクチク刺されてるような話に、じっと耳を傾けた。
将太は、嘘をついても仕方ないと思い、正直に知ってる限りを伝える。
「…あいつは、ニューヨークに行ってからも、ずっと瑞希ちゃんのことを気にかけてた。ずっと好きな気持ちは変わらなかったんすよ」
「…」
「三年前のクリスマスにあいつはプロポーズするはずだった。それなのに、転勤が決まってしまって…。
日本に戻ったら今度こそ指輪を渡すつもりだったんだ。瑞希ちゃんとの思い出が詰まった高台にある公園で。
そこまで考えてたのに、なぜか帰ってきたあいつは、別の人と結婚することになったとか言うし、訳わかんねえ」
プロポーズ…
指輪…日本に戻ったら渡すつもりだった…
雪乃の頭の中でその言葉が何度も繰り返された。
結婚することになっても、晃平から結婚指輪の話は出ない。
婚約指輪さえ貰っていなかった。
もちろん、プロポーズも自分から…。
雪乃の視界は次第にぼやけていく。
一粒の涙が頬を伝うと、言い様のない心の寂しさが襲った。
「…あは、バカだ…私」
最初から、晃平の優しさを利用して結婚という約束をさせたことは、ただ晃平を苦しめただけ。
そこに本当の愛なんて存在しない。
結婚という約束の後で好きになってもらえばいいなんて、なんて浅はかだったんだろうと雪乃は俯いたまま涙を流し続けた。
「…きついこと話してごめん。でも、本当に晃平のこと好きならさ、晃平の気持ちをちゃんと考えてあげてよ」
そう言って、〝仕事があるから〟と将太は席を立つ。
自分のことだけを考えて、晃平の気持ちを考えなかった罰だと、雪乃はしばらく泣き続けたのだった。
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