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第一章
忘れられない人
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響は奏の後ろ姿をじっと見つめていた。
家まで送っていくはずだったその道が、やけに遠くに感じる。
「ねぇ、さっき奏先輩と何話してたの?」
「…別に。部活のこととか、もみじのことだよ」
「もみじ?」
もみじのことを聞き返された響は、一瞬ハッとした。
そして、「紅葉の季節だねって話」と、咄嗟にそう言ってごまかす。
もみじの話は、奏とだけの話にしていたかったのだ。
「相変わらず仲が良いんだね…」
「…」
「あんまり仲良くしないでほしいな…」
「なんで…」
「だって普通嫌だよ」
「…意味分かんねぇし…」
奏とは中学の頃からずっと同じ調子で過ごしてきて、仲が良いことは陽菜も知っている。
今更〝仲良くしないでほしい〟なんて、響は理解が出来なかった。
陽菜の言葉に小さくため息をつく。
付き合っているのに、違う人を見ているんじゃないかとずっと心のどこかで感じていた陽菜は、響のそんな様子に不安を煽られた気がした。
「ねぇ、私のこと…好き?」
「なんでそんなこと聞くの…?」
「〝そんなこと〟じゃない。大事なことだもん」
陽菜の不安を感じ取った響は、罪悪感に襲われる。
「…好きだよ」
陽菜のことを好きなのは確かだ。
だけど…
それだけじゃない。
響の心の中に、ずっと忘れられない人が居るのも確かだった。
陽菜を送り家に帰り着いた響は、携帯電話を取り出す。
奏の番号を見つめながら呟いた。
「…ちゃんと帰り着いたかな」
その時、ちょうどメールが一件届く。
〝今日はお疲れ様。途中まで送ってくれてありがとう!帰りつきました〟
それは、奏からのメールだった。
思わず頬を緩めた響は、
「タイミングいいなぁ」
と言って、通話ボタンを押す。
『…はい』
「奏ちゃん、メールじゃなくて電話してくれたらいいのに」
『だって、まだ彼女と一緒に居るなら申し訳ないと思って…』
「そんなこと気にしなくていいのに」
『ダメだよ、彼女からしたら嫌でしょ?』
彼女のことを気にしてくれる奏のこういうところが、響にとっては有り難くて、そして寂しくもあった。
「奏ちゃん、なんか…鼻声?」
『か、風邪引いたのかな!』
「…さっきまで普通だったのに?」
『走って帰ったから!』
一瞬、奏が泣いたのかと思った響は、その原因が自分だったらいいのにと思う。
だけど、〝そんなわけないか…〟と自嘲した。
「奏ちゃん、何か辛いことあったら言ってよ?」
『…うん』
「とにかく、無事に帰り着いてて良かった」
『…うん』
「今日〝気を付けて帰ってよ〟って言えなかったから、気になってた」
『…ありがと』
奏の声を聞いて心がホッと和む。
「じゃあまた月曜日にね、奏ちゃん」
『うん、じゃあね』
ベッドに横たわり、目を閉じた。
耳に残る奏の声…
その声を聞いた後は、いつだって優しい気持ちになる。
電話を切ってからも、響はしばらく天井を見上げ微笑んでいたのだった。
家まで送っていくはずだったその道が、やけに遠くに感じる。
「ねぇ、さっき奏先輩と何話してたの?」
「…別に。部活のこととか、もみじのことだよ」
「もみじ?」
もみじのことを聞き返された響は、一瞬ハッとした。
そして、「紅葉の季節だねって話」と、咄嗟にそう言ってごまかす。
もみじの話は、奏とだけの話にしていたかったのだ。
「相変わらず仲が良いんだね…」
「…」
「あんまり仲良くしないでほしいな…」
「なんで…」
「だって普通嫌だよ」
「…意味分かんねぇし…」
奏とは中学の頃からずっと同じ調子で過ごしてきて、仲が良いことは陽菜も知っている。
今更〝仲良くしないでほしい〟なんて、響は理解が出来なかった。
陽菜の言葉に小さくため息をつく。
付き合っているのに、違う人を見ているんじゃないかとずっと心のどこかで感じていた陽菜は、響のそんな様子に不安を煽られた気がした。
「ねぇ、私のこと…好き?」
「なんでそんなこと聞くの…?」
「〝そんなこと〟じゃない。大事なことだもん」
陽菜の不安を感じ取った響は、罪悪感に襲われる。
「…好きだよ」
陽菜のことを好きなのは確かだ。
だけど…
それだけじゃない。
響の心の中に、ずっと忘れられない人が居るのも確かだった。
陽菜を送り家に帰り着いた響は、携帯電話を取り出す。
奏の番号を見つめながら呟いた。
「…ちゃんと帰り着いたかな」
その時、ちょうどメールが一件届く。
〝今日はお疲れ様。途中まで送ってくれてありがとう!帰りつきました〟
それは、奏からのメールだった。
思わず頬を緩めた響は、
「タイミングいいなぁ」
と言って、通話ボタンを押す。
『…はい』
「奏ちゃん、メールじゃなくて電話してくれたらいいのに」
『だって、まだ彼女と一緒に居るなら申し訳ないと思って…』
「そんなこと気にしなくていいのに」
『ダメだよ、彼女からしたら嫌でしょ?』
彼女のことを気にしてくれる奏のこういうところが、響にとっては有り難くて、そして寂しくもあった。
「奏ちゃん、なんか…鼻声?」
『か、風邪引いたのかな!』
「…さっきまで普通だったのに?」
『走って帰ったから!』
一瞬、奏が泣いたのかと思った響は、その原因が自分だったらいいのにと思う。
だけど、〝そんなわけないか…〟と自嘲した。
「奏ちゃん、何か辛いことあったら言ってよ?」
『…うん』
「とにかく、無事に帰り着いてて良かった」
『…うん』
「今日〝気を付けて帰ってよ〟って言えなかったから、気になってた」
『…ありがと』
奏の声を聞いて心がホッと和む。
「じゃあまた月曜日にね、奏ちゃん」
『うん、じゃあね』
ベッドに横たわり、目を閉じた。
耳に残る奏の声…
その声を聞いた後は、いつだって優しい気持ちになる。
電話を切ってからも、響はしばらく天井を見上げ微笑んでいたのだった。
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