クロックワーカーの遺したモノ

杏珠

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一章 歪んだ生活

第四話 二人の尋ね人

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 あれから…一人森を歩き、明け方にようやく家へと辿り着いた
「ただいま…って言ったって返事なんかねぇよな」
 あの二人組…どんだけ考えてもわかんねぇ…一体何者なんだよ…神父様なら何か知ってるか…?
「ハロス君!一晩中帰ってこないから何事かと思ったけど…何かあったの?」
「エトアル…さん?なんでここに…」
「私…というよりリー君がラルカちゃんに用があるんだって」
「リーベリアさんも今来てるんですか…?」
「今は裏の花壇の方にいると思うよ。二人とも家にいないしスミレだって…世話もしないで放置してたから」
 心配してくれたのか…ラルカに用?
「すいません、少し出かけてたから…俺はリーベリアさんのところに行ってきます。エトアルさんは…取り敢えず家の中にでも入ってゆっくりしてください」
「わかった…ハロス君も休みなよ?その…酷い顔してるから」
「…はい。わかってます」

 裏の花壇に居るって言ってたよな…花壇…ラルカの育てたスミレ…駄目だな。考え過ぎてる…あぁ居た
「リーベリアさん」
「あっハロス君!」
 眩しい…陽の光も太陽みたいに笑うこの人も…昨夜のことを夢だと思うくらいには
「おかえり、どこに出かけてたの?」
「少し…森の方に」
「朝まで森に居たってこと!?あの森は狼が出るでしょ…大丈夫…だったの?」
「それは問題なかったです。それで…リーベリアさんはどうしたんですか?ラルカに…用があるって聞いたんですけど」
「エトちゃんと先に会ってたのかw昨日の夕方頃にラルカちゃんが図書館に来るって言ってたのに来なかったからさ…言ったことはする子だから気になったんだよ」
 そういう事か…リーベリアさんとエトアルさんがやってる図書館にはあの子はよく行ってたし
「そうだったんですね…」
「ラルカちゃんは?二人で森に行ってたの…?家には居なかったよね」
 リーベリアがハロスの少し後ろの方、家の中を覗く様に体を傾けてみせた
「…っ!ラルカは…」
 ラルカは…そうだ…夢じゃ…ないんだ…
 現実に押しつぶされるようにハロスの瞳から涙が溢れていく
「スイマセン…取り敢えず俺の話を聞いてもらえますか…?ちょっと…俺もまだ整理できてないんですけど…」
「…何か起こってたんだね。取り敢えずエトアルの所に行こうか」

 家の中に入りハロスは二人に事情を説明し始めた。森に行き帰ってこなかったラルカ、探しに行ったときに出会った森の屋敷に住む黒髪の兄妹…そして、そのまま…連れて行かれた事も
「俺は…結局また守れませんでした…エトアルさんお願いします!俺に…弓矢の使い方を教えてくれませんか?」
「私の弓矢なんかより警備隊の人達に剣の使い方を教わるほうが良いんじゃない?でもなんで…」
「黒髪の兄妹…見た目もこの国じゃ珍しいけど男の…兄の方が見た事もない剣を持ってたんです。それにラルカが連れて行かれそうになったとき…俺は追いかけられなかった…あいつの眼光に気圧されて…殺気に足が…体が動かなくなったんです…」
 今思い出しても足が竦む程の恐怖…あの日以来…抱く事のなかった感情。でも…助け出さないといけない…あの二人のところに行ってラルカを連れ戻さないと…
「見たこと無い剣…か。俺の所に行けば何かしらの文献があるかもね…調べてみようか」
「ありがとうございます。でも…だからこそ今から剣の使い方を練習しても俺はアイツとまた相対したときに勝てる気がしないんです…」
「それで弓矢って事ね…そうね…ハロス君、急で悪いけど今から私達の家に来てちょうだい」
「占ってやるの?」
「えぇ…それもあるけど弓矢をやるならちゃんと選んであげないとでしょう?」
「エトちゃんと同じやつじゃないの?コンパウンドボウ…だったよね?」
「あれは…連射とかすると壊れやすいのよね。話を聞く限り結構激しくなりそうだしちゃんとしてる物の方が良いでしょ」
 この二人は信じてくれるんだ…俺もまだ信じれない…こんな夢みたいな事を…
 絶対に…ラルカを連れ戻す…あいつらを殺して…!
「種類とかは何でもいいんです。とにかく…戦う為の力が欲しいんです」
「憎悪…なのかな。復讐に燃えるのは良いけど目的を見失ったら駄目だよ?ラルカちゃんを…取り戻すんでしょ」
「…わかって…ます。俺は荷物をまとめてきます」

 そう言いながらハロスはニ階に上がっていき、残された二人は話の整理をすることにした
「黒髪の二人組…森に住んでいておそらく兄妹」
「ハロス君が見たことのない剣に急に不自然な態度を取り出したラルカちゃん…」
「多分…あの人達だよね」
「なら…ラルカちゃんは洗脳が掛かってるのかな」
「取り敢えず二人と話さないとね」
「鳥でも飛ばすの?」
「直接会いに行ったほうが早いでしょ。ラルカちゃんが居るかも…この目で見れるしね」
「それもそうだね…でも予想通りだとしたらエトアルはどっちの味方をするの?腐れ縁か…家族みたいに接してきた子達か…」
「さぁ…全部星に委ねてしまえば良いでしょう…どうせ私達だけじゃ決まらないんだから」
 エトアルは静かに鞄の中からカードを取り出しシャッフルを始めた。机の上に広がるカードから1枚引き抜いて確認すると静かに微笑んだ
「…何のカードになったの?」
「…逆位置の愚者…未来はまだ決まってないのかもね…幸せな結末に出来るのかもよ?」
「例え幸せな結末が訪れても…それは誰にとっての幸せなの?」
「さぁ…でも私達はこの物語の観客になれるのかしらね…」

 そのままカードを片付けて、準備を終わらせ降りてきたハロスと共に家を後にした。まだ日が明けたばかりの静かな町外れを三人は並んで歩いていた。人の繋がりなんて奇妙なモノ…この二人が味方か…あるいは敵なのか何て事は些細な事なのかもしれない
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