クロックワーカーの遺したモノ

杏珠

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一章 歪んだ生活

第八話 すり替わった兄妹

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 あれから数日…人気の無い屋敷の中を歩く少女の姿があった。廊下を抜けて中庭に出ると朝のやわらかな日差しが少女…ラルカの真っ白な髪に反射し輝いていた
「お姉様?どこにいるんですか~?中庭にも居ないのかな…」
「ん…誰か呼んだぁ?」
 声?中庭に居るのかな…でも姿がどこにも…
「ラルカちゃんか~こっちだよ、上見てみな」
「上?…って何で屋根の上にいるんですか…」
「この時間はここら辺にいると陽射しが気持ちいいんだよね~アレ使えば簡単に来れるし」
 屋根に登って眠っていたのだろうか少し虚ろげに目を擦りながらフシールが指差したのは屋敷沿いに生えていた少し大きめの木だった
「これを登ったんですか?葉も結構鋭いし木の表面硬いし鱗みたいになってる…怪我してないですか?」
「少しだけ擦っちゃってさ~ちょっと血が出たかな…ラルカちゃん後で手当してくれる?」
「その程度の掠り傷自分で出来るだろ?自業自得じゃんw」
「フィロ兄!いつから後ろに居たの…急に来ないでよね」
 お兄様まで屋根の上に…扉とかあったかな…?
「寝惚け過ぎて気配にすら気付かなかったのか?俺別に気配消してねぇからな」
 フィロがフシールの顔を覗き込みながら会話に入ってきている中、ラルカは当然の様に屋根の上に居る二人の兄姉を少し戸惑いながら下から見ていた
「お兄様はどこから登ったんですか…」
「ラルカにフシールの事探して来てって言ったけどあまりにも戻ってくるのが遅いからさ、どうせめんどくさい所にいるのかな?って思ってね」
「こちらに来られた理由は分かりましたが質問の答えにはなってませんよね?」
「あ~…フィロ兄がラルカちゃんを寄越したんだ、なんかあったの?」
「お前また部屋に風穴空けただろ。罰で屋敷全体の掃除でもさせようかなと思ってな」
「えぇ!?絶対嫌だよ?この屋敷の規模わかってんの?」
 顔を合わせて言葉を交わす度に喧嘩しているかの如く二人はまた言い合いになり始めた
「…お兄様~?」
「罰なんだから嫌なのは当たり前だろ?それか馬の世話して鹿でも狩って来るか?この馬鹿が」
「お姉様も…聞こえてますか~?」
「鹿探す方がめんどくさいって…というか馬ってあの真っ黒の?フィロ兄のだし前提で私に懐いてないから嫌だ。蹴られる趣味はないから」
「喧嘩は辞めてくださいよ?…お二人共聞こえてますか~?」
「まぁフシールは馬乗る必要ないからなw」
 声…届いてないなぁ…ホントにお二人とも…!
「…それ以上言い合いしてるのなら玄関ホールに飾ってあった銃と刀噴水に投げ入れますからね!」
 声が本格的に届かなくなったと理解したラルカがそう叫ぶと二人は会話を止めて中庭にいるラルカの方を向いた
「待って!? ラルカちゃんそれだけはやめて?もうしないからさ!」
「やること怖~俺の刀に手出したらいくらラルカでも俺殺しちゃうかもよ?」
「いやならすぐにそうやって喧嘩しなければいいでしょう?」
「正論だなぁw…よっと」
 え?なになに!?高い…空?足が浮いて…
 苦笑いしながら屋根から飛び降りてきたフィロがそのままラルカを抱き上げると、屋敷の壁を蹴り上げ柱を伝ってもう一度屋根の上に登った
「今何が起こって…」
「ん?俺がラルカ連れて屋根の上まで戻って来ただけだよ?」
「説明されても理解が追いつきません…何でこの高さから飛び降りて平気なんですか…そしていつの間に私は抱えられてるんですか!?」
「慣れ…?まぁラルカもそのうち出来るようになるんじゃない?」
「私が教えてあげようか?フィロ兄みたいなのは流石に無理でもロープ使う方法とかなら覚えたら結構便利だよ」
「確かに移動範囲増えるだろうし便利なんですかね…って今はその話じゃないですよね?掃除の話してたんじゃ…」
「ラルカちゃん、しぃー!」
「あぁ…そうだったなw逃げれると思うなよフシール?」
 ホント…仲いいな、
「フィロ兄こんな時だけ笑わないでよ…マジで怖いから、トラウマになるってw」
「お前が言う事聞いてくれれば良い話だろ?」
「でも…本館はもうお掃除しちゃいましたよ?鍵がかかってる部屋が沢山あったから全部は出来ませんでしたけど」
 予想してなかった一言に二人は驚きながらもフィロが何か思い出したように口を開いた
「あ~それで昨晩部屋に居なかったの?一時頃に部屋行ったんだけど…まさかあんな夜中から掃除してたわけ?」
 深夜に部屋来てたんですか…なぜ…
「一時って…部屋の鍵はフィロ兄が管理してるけど鍵無い部屋でも結構な量だよね?ラルカちゃん…寝ましたか?」
「ここ最近眠れてなくて…」
「そういうことか、一人だと眠れそうにない?」
「どう…なんですかね?少し心細いのか…よくわかんなくって…」
「じゃあ今から私とお昼寝しよ~ラルカちゃんが掃除してくれたなら時間出来たんだしさ」
「いやフシールは今から別館と本館で鍵のかかってる部屋の掃除だからな?」
「えぇ…量滅茶苦茶多くない!?てかそれ今日中なの?」
「今日中に決まってるだろ、早くしろ」
 ふふっ、楽しい。広いお屋敷だから一人だと静かで寂しいけど…お兄様達がいたら明るいな
「奥の方にあった建物はいいんですか?見たことない造りでしたけど…」
「奥の方…道場のことかな?もうそんな所まで見て回ってたんだねwあそこはフシールは銃持ってなけりゃ出入りして良いけど…」
「銃置いてくるのは無理だからね?いつ侵入者出るかわかんないしさ~」
 そう言いながら腰のホルダーから拳銃を取り出して片手で回し始める
「お前すぐに撃つんだから辞めろ。道場壊されたらたまったもんじゃない」
「痛い痛い痛い!頭掴まないでよぉ!ラルカちゃん助けてぇ…」
 私に助けを求められても…
「ラルカはフシールよりも俺に懐いてるから俺の味方だよな?w」
「なんでぇ!?こんな無表情男より私の方が良いでしょ!」
「会って初っ端撃たれてるからじゃねぇの?」
「いや…お姉様は顔合わす度に捕まえに来るじゃないですか…それにお兄様の方が優しいですし」
「ラルカちゃんが可愛過ぎるのが悪いでしょ…」
「ダル絡みしてウザがられてたのかよwそうだ、ラルカも今度道場来てみる?」
ラルカ「道場がなにする場所なのかもよく知らないんですけど…行って何するんですか?」
「え?俺と戦う」
 お兄様と…?戦う?えっと…
「死刑宣告されたんですかね…?」
「流石に冗談だよw今のラルカじゃ戦闘中の俺を見ることすら叶わないからね。俺が戦い方とか教えてあげようかと思って」
「本当ですか?戦えるようになったらお兄様達に少しは近付けますかね…」
「そうだね~取り敢えず被弾して死なない様にならないとかな?」
 被弾しないように…か…お兄様もお姉様も動きが早くて追いつけないんだよなぁ…
「うぅ…頑張ります」
「ん、取り敢えずラルカ今夜は俺の部屋来る?一人だと寝れないんだろ」
「え~!だったら私も行く!」
「三人で寝るんですか?」
「まぁたまにはいいんじゃない?」
 お兄様とお姉様と眠れる…!
「…はい!ありがとうございます」

 至って普通の兄妹の日常風景に見えるが三人が居る場所や会話内容そして一人年の離れた少女は数日前に会ったばかりという不可思議な事で埋め尽くされた時間が刻々と流れていた
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