クロックワーカーの遺したモノ

杏珠

文字の大きさ
24 / 30
二章 共に逝きる

第二十四話 闇に溶け込む

しおりを挟む
 図書館内の全ての本棚に白い布が掛けられる。町中に夜を告げる鐘が鳴り響き青年は立ち上がった
「ハロス君もう向かう気?」
「準備は終わらせましたからね。日も沈みましたし」
「焦り過ぎ。俺達も行くから屋敷についてからの動きだけでも最後にもう一回確認するよ」
「…わかりました」
「ハロス君は黒髪の男が目的なんだよね?場所の目星はついてる?」
「聞いてる限りだと結構屋敷広いんでしょ?」
「妹の方が銃を使っていたしお互い自分の戦闘に干渉されるのを嫌っている感じがしたので離れた位置ですかね…」
「屋敷に行って誰が最初に出てくるかによるかな」
「最初に件の彼が出てきたら俺とエトちゃんが屋敷の奥に向かう感じかな…」
「逆ならハロス君だけでも先に進ませる形か…上手く行くといいけど」
「…とにかく行きましょう。時間は有限ですから」
「ちょ…ハロス君!」
 ハロスが一足先に図書館を飛び出す。残された二人は静かにうなだれた
「完全に憎悪にのまれてる…」
「エトちゃんはどう動くつもり?」
「遠距離同士だと私とフシールちゃんじゃ確実に負けるだろうね…リー君の魔法に執着してるのもあるし私はラルカちゃんの方かな…」
「ラルカちゃんの戦い方なら屋敷の中に居るだろうね…」
「見つけるまでのリミットが心配かな」
「なるべく早くフシールちゃんとの戦闘を終わらせて殺気を解除させないとか…」
「とにかく追いましょう。性格的にフシールちゃんは玄関ホールに居るだろうから今のハロス君が一人でぶつかれば確実に負けるわ」
「そうだね。明日までに帰ってこれるといいけど」
「生きて帰れれば…だけどね」
 リーベリアは立ち上がるとエトアルの手元に目を落とした
「エトちゃん…それ何だったの?話してる間にやってたみたいだけど」
「正位置で…塔。ハロス君…」
「最近は悪いカードばっかりだね」
「希望が少しでもあるならそれを掴むだけよ」
 二人は図書館を施錠するとハロスを追い闇の中へ消えていった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 本を読むラルカの前でフィロとフシールは日中の手合わせで使った武器の手入れをしていた
「雨に打たれたからちゃんとやらないと錆びるな…」
「あちゃぁ…装填用に持ってた弾全部湿気ってるよ…これじゃ使い物にならないな」
「なんでわざわざ悪天候の日にやるんですか…」
「血が流れるから掃除の心配しなくていいんだよな…あ、フシールそっちに置いてある拭い紙取って」
「え?あぁ…これか、はい。ん~…あと雨の日だと匂いが分かりにくくなるからってのもあるかな…」
「でもあんなに大雨だったのに夜になる頃には止みましたね。雲が晴れても月は結局見えませんけど…」
「それにしてもフィロ兄その刀いつから使ってるっけ?国出る前からだよね」
「クソみてぇな家のとはいえ受け継がれてきたものだしな。それにこいつが一番使い慣れてる」
「お二人の故郷ってどんな所なんですか?」
 紅茶と茶菓子を準備しながらラルカが尋ねた
「あれ?結局話してこなかったんだっけ…」
「どんな所か…この国ほど広くはないな。同じように上に立つ人間はいたけどな」
「実力主義だけどみ~んな臆病wでも私は好きだよ?一言で言うなら簡単に人が死ぬ国」
「いつか行ってみたいですね」
「そうかぁ?俺はあんなところに連れて行きたくねぇな。ていうかまず帰りたくない」
「そうですか…まぁ私はフィロ兄様の意向に従うだけですから」
 少し残念そうにしながらも静かに微笑みティーカップに口をつける。暫くするとフィロが手を止めた
「…フシール、ラルカ」
「どうしたの?」
「何かありましたか?」
「客人だ。森の中を真っ直ぐに屋敷へ向かってる」
「いつもの二人じゃないの?」
「いや…随分と懐かしい気配も一緒に来てるなぁ」
「戦闘になりますか?」
「あぁ…二人とも今日は本気で演じろ」
 演じろ…フィロ兄様からの屋敷を使った本気の戦闘許可…
「久々の舞台か~楽しみぃ」
「でしたら私は準備に行かなくては行けませんね」
「さて…二人の相手は誰になることやら」
「誰が相手でも関係ないよ。観客に待つのはバッドエンドだけだからね」
「お二人のお相手が気の毒ですね…」
「それじゃ私は玄関ホールで開幕の合図でもしようかな」
「俺は道場に行くか…馬鹿の銃声も届かないだろうしあそこが一番落ち着くだろ」
「失礼な…」
 道場と玄関ホール…なら罠も仕掛けやすいし…
「でしたら私は地下に行きましょうか」
「了解。屋敷内には不用意に入らないほうが良さそうだな…それじゃあ二人とも好きに殺れ」
「りょうか~いw」
「了解です」

 フィロの合図で三人は敷地内に散った。数分後暗闇に包まれた屋敷に舞台の始まりを告げる銃声カーテンコールが鳴り響いた
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...