異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓

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シャボン玉がやってきた(前編)

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「ルカ~♪」
「カイル~♪」
 今日はとてもお天気が良いので、オオヒマワリの花の上で日向ぼっこしています。

 オオヒマワリはヒマワリをジャンボサイズにしたような感じで、花の直径は2mくらい、太い茎は7mくらい、葉は1mくらいです。
 意外と安定感があり、時折、花が風で傾いたりするけど、それはまるで揺り籠に揺られているような感覚です。
 秋のやわらかな陽射しの中で、小虎姿のカイルともふもふするのは気持ちよくて、絶賛蕩けきっているところです。

「ルカ、ルカ♪」
 ぷにぷにの肉球に押さえつけられ、動くヌイグルミのような可愛いふわもこ子虎カイルをぎゅっと抱きしめると、極上のなめらかな手触りと甘い香りに、私は幸せの坩堝に嵌ってゆくのでした。

「カイル~♪」
 夢見心地に目を閉じてフワフワの柔らかい体を撫でていると、突然、カイルが消えてしまいました。

「えっ? なんで?」
 慌てて目を開けると、カイルは大きなシャボン玉に捕らえられ攫われてゆくところでした。

「大変!助けなきゃ!」
 シャボン玉の中から助けを求めていたカイルは、なぜかゴロンゴロンと寝転びはじめ、まるで酔っ払ったみたいに気持ちよさそうにまどろんでしまいました。どうしたのかしら?

「カイル!」
 大急ぎで空を飛び、カイルを乗せたシャボン玉に追いつこうとしますが、まるでカイル救出を阻むかのように大小さまざまな大きさのシャボン玉が集結し、なぜかサンバを踊り始めました。

 オーケストラ担当のシャボン玉たちが素晴らしい演奏を始めると、左右に体を激しく揺らして情熱的な踊りを披露するシャボン玉たち。
 くびれがないので分かりにくいけど、多分、腰降りダンスをしているような気がします。

 そして、曲がクラシック調に変わると、なぜか側転からのバック転!ひねり王子もビックリの空中ひねり5回転!(シャボン玉だけに分かりにくい!)前転の後はリボンの演技に突入!おぉっ!高いジャンプ力!これは高得点が期待され…
 はっ! うっかりシャボン玉の妙技に見入ってしまうところでしたわ!
 
 急いでカイルの乗ったシャボン玉に瞬間移動すると、子虎カイルはなんだか恍惚とした表情でうねうねと動いています。
 薬でも盛られたの? なんだか嬉しそうに見えるけど心配だわ。

 そして、私たちを乗せたシャボン玉は、空に浮かぶ飛行船に吸い込まれていったのでした。
 飛行船の大きな入り口から、シャボン玉は奥へ奥へと進んで、大広間のような部屋に到着しました。
 大きくて豪華なソファに3mくらいの大きな虎が寝そべったままこちらを見ています。

「おや…? 子虎だけを捕まえたはずなのに、お嬢ちゃんまでついてきたのかい?」
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