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しおりを挟むやさしい太陽の光、澄み渡る青空。
今日もがんばるぞ!
気合が入り、お~~っ!と、右手をグーにして高く掲げる。(やのガッツ?)
「ラーナお嬢様、朝の体操ですか?」
侍女のメリーが微笑みながら子猫を抱っこしてやってきた。
メリーは私と同じ16歳で、ブラウンのボブヘアーの優しい女の子。
「早朝のひとときでも、猫ちゃんに太陽の光を浴びさせてあげようと思いまして」
ミャア、と可愛い丸顔で私を見つめる子猫。
屋敷の庭に迷い込んできた白い子猫で、お尻に赤いハートマークの模様が入っていて。
猫嫌いの義妹に内緒で、庭の隅っこの物置小屋で飼っている。
子猫も他に行くあてもないだろうし。
ちなみに、私も肩身の狭い我が家から出たくても、行くあてもない。
私が3歳の頃、母が年下のイケメンと駆け落ちして、父も負けじと若い後妻を貰い、妹が生まれた。
後妻は自分の生んだ子しか可愛くないらしく、先妻の子の私はいつも邪魔者。
父も、後妻と義妹しか可愛くないみたい。
母はブロンドの長い髪をしたお洒落な人だったらしい。
母に似た私を見ると腹が立つのか、冷たい言葉や厳しい態度ばかり。
家に私の居場所は、ほぼ無くなってしまった。
父は私を金持ち爺さんにでも嫁がせて、結納金をたくさんせしめてやろうと目論んでいるらしい。
なので、私は売り飛ばされる前に逃げようと思い、少しずつ準備を進めなければと焦る日々。
猫ちゃんを匿っている物置小屋に隠し部屋を発見し、そこの荷物を片付け、コンロを持ち込み、お菓子作りを練習したり、薬草を育てて煎じ薬を作ったり。
なんとか、小さな喫茶店を始めたり、薬草を売って生活できないかと、てんぱっています。
「メリー。今日のホットケーキの出来はどうかしら?」
小さな木造の物置小屋の中、リンゴ箱を逆さにしたテーブル代わりの箱の上に、皿に乗せたホットケーキと紅茶を置く。
メリーは正座してリンゴ箱の前に座り、ホットケーキを見るなり、うぅっと泣いた。
「おいたわしや、お嬢様がこんな粗末な小屋でお菓子作りの練習など…!」
「だって、父上は私をどこに売り飛ばすか分からないもの。
屋敷の厨房で料理の練習してて勘繰られても困るし、こっそり練習しないと。
喫茶店をやっていける自信もないけど、何か出来たほうがいいわよね」
「お嬢様、メリーも付いてゆきますっ!」
「でも、メリーのお給料払えないわ。きっと」
「そんなものは要りません! メリーも大したことは出来ませんが、お嬢様が市井で独りで苦労されるなんて、見て見ぬふりは出来ませんわ!」
「メリー!!」
メリーの優しさに感涙していると、猫ちゃんまで参加してきた。
「猫ちゃんも、私と一緒に行ってくれるの?」
「ミャア!」
まるで人の話が分かるような得意げな顔で、猫ちゃんは元気よく返事したのでした。
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