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エリオット様の強い意志で、私たちの婚約は解消されました。
私とターニャ嬢の学園での接点はほとんど無く、当然、虐めの現場を目撃した学友も1人も居らず、ターニャ嬢の虚言であることが分かりましたが、それでもエリオット様はターニャ嬢を選んだのです。
エリオット様の御両親は息子の非を認め、我が伯爵家に謝罪に訪れ、それなりの慰謝料を置いていかれました。
無実の罪を着せられることは避けられましたが、貴族の方々には〈婚約者を奪われた女〉と噂される日々です。
エリオット様を溺愛していたわけではないけど、幼い頃からこの方が将来の夫なのだと思い続けていたので、何かが足りないような空虚な気持になります。
でも、彼の心の狡さ、汚さを見てしまったから、結婚する前に彼の本性を見れて良かったのでしょう。
何度も一緒に歩いた私邸の薔薇の小道に佇み、早く彼の事は忘れよう、そう思いながら、薔薇の甘い香りに包まれいると、白い小さな狼が薔薇の小道を駆け抜けてきました。
『アリシア~! 会いたかったよ~!』
元気いっぱいの可愛い小狼は、甘えるように私に飛びついてきました。
いつものように頬ずりをして、私の胸で甘える小狼のテン。 柔らかいもふもふの毛と温かい体温が気持ち良い。ずっと撫で撫でしていたい至福の瞬間が訪れました。
テンは、2年くらい前に森で怪我をして倒れていたところを私が見つけて介抱して、それからずっとこのように懐いてくれます。 小さい種類の狼で、40㎝くらいで成獣のようです。
誰かの従魔らしく、怪我が治るとその方の所へ帰ってゆきましたが、時々、私に会いに来てくれる優しい子なのです。
その方は、テンを介抱してくれた御礼にと素敵なネックレスを贈ってくださいました。 使いの方が届けてくださったので、まだお会いしたことはありませんが。
真っ白な雪を連想させるようなもふもふ小狼のテンは、黒豆のような可愛い瞳で私をじっと見つめます。 可愛い過ぎて、胸がキュウンと鳴りました。
『アリシア、大変だったね! 学園の近くの森に住んでる小鳥のランちゃんに聞いたよ。 婚約者に浮気されて婚約破棄されたんでしょ? 森の動物たちが気の毒だねって噂してたよ!』
まぁ。学園の森の動物たちの噂にまでなっていたのね。
『それでね、僕の御主人様が、気分転換にいらっしゃいませんか?って。アリシアの好きなお菓子を用意して待ってるって!』
可愛い黒豆のような瞳が私を誘う。
確かに、破談になってから、両親も弟も物凄く気を使ってくれて、家に居ずらい日々が続いてるけど……。
「でも……いいのかしら」
『御招待だもん、いいに決まってるよ! 僕にしっかりくっついて! 行っくよ~!』
えっ? もう行くこと決定?
眩い白い光に包まれて、私とテンは瞬間移動しました。
私とターニャ嬢の学園での接点はほとんど無く、当然、虐めの現場を目撃した学友も1人も居らず、ターニャ嬢の虚言であることが分かりましたが、それでもエリオット様はターニャ嬢を選んだのです。
エリオット様の御両親は息子の非を認め、我が伯爵家に謝罪に訪れ、それなりの慰謝料を置いていかれました。
無実の罪を着せられることは避けられましたが、貴族の方々には〈婚約者を奪われた女〉と噂される日々です。
エリオット様を溺愛していたわけではないけど、幼い頃からこの方が将来の夫なのだと思い続けていたので、何かが足りないような空虚な気持になります。
でも、彼の心の狡さ、汚さを見てしまったから、結婚する前に彼の本性を見れて良かったのでしょう。
何度も一緒に歩いた私邸の薔薇の小道に佇み、早く彼の事は忘れよう、そう思いながら、薔薇の甘い香りに包まれいると、白い小さな狼が薔薇の小道を駆け抜けてきました。
『アリシア~! 会いたかったよ~!』
元気いっぱいの可愛い小狼は、甘えるように私に飛びついてきました。
いつものように頬ずりをして、私の胸で甘える小狼のテン。 柔らかいもふもふの毛と温かい体温が気持ち良い。ずっと撫で撫でしていたい至福の瞬間が訪れました。
テンは、2年くらい前に森で怪我をして倒れていたところを私が見つけて介抱して、それからずっとこのように懐いてくれます。 小さい種類の狼で、40㎝くらいで成獣のようです。
誰かの従魔らしく、怪我が治るとその方の所へ帰ってゆきましたが、時々、私に会いに来てくれる優しい子なのです。
その方は、テンを介抱してくれた御礼にと素敵なネックレスを贈ってくださいました。 使いの方が届けてくださったので、まだお会いしたことはありませんが。
真っ白な雪を連想させるようなもふもふ小狼のテンは、黒豆のような可愛い瞳で私をじっと見つめます。 可愛い過ぎて、胸がキュウンと鳴りました。
『アリシア、大変だったね! 学園の近くの森に住んでる小鳥のランちゃんに聞いたよ。 婚約者に浮気されて婚約破棄されたんでしょ? 森の動物たちが気の毒だねって噂してたよ!』
まぁ。学園の森の動物たちの噂にまでなっていたのね。
『それでね、僕の御主人様が、気分転換にいらっしゃいませんか?って。アリシアの好きなお菓子を用意して待ってるって!』
可愛い黒豆のような瞳が私を誘う。
確かに、破談になってから、両親も弟も物凄く気を使ってくれて、家に居ずらい日々が続いてるけど……。
「でも……いいのかしら」
『御招待だもん、いいに決まってるよ! 僕にしっかりくっついて! 行っくよ~!』
えっ? もう行くこと決定?
眩い白い光に包まれて、私とテンは瞬間移動しました。
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