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魔法入りクッキー
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さわやかな、午後の昼下がり。
ルカとカイルが森を散歩していると、甘い匂いが漂ってきました。
思わず、匂いにつられて歩いてゆくと、小さな一軒家がありました。
大きな窓から、魔女のおばあさんがクッキーを焼いてる姿が見えます。
ルカとカイルの視線に気付いた魔女のおばあさんは、笑いながら、おいでおいでと手招きをしました。
ふたりは喜んで魔女のおばあさんの家を訪ねました。
「ルカちゃん、カイルくん。一緒にクッキーを作るかい?」
「「はいっ♪」」
森の泉で何度か会ったことのある魔女のおばあさんはとても優しくて、クッキーの作り方を手取り足取り教えてくれました。
「じゃあ、この寝かせておいたクッキー生地で、好きな形のクッキーを作ってごらん」
魔女のおばあさんに手渡されたクッキー生地を、ルカは小さくちぎっては手のひらで丸めて押しつぶし、丸い形のクッキーをたくさん作りました。でも不器用なのか、クッキーの大きさが揃っていません。
「ルカ。これ、僕の気持ち」
大きなハート形のクッキーを作って、カイルは照れながらルカに見せました。
「…桃の形?」
鈍感なルカには、カイルの気持ちは伝わらなかったようです。
「さて、クッキーを焼く前に、媚薬と毒薬と惚れ薬と笑い薬、どれを入れる?」
と、涼しい顔をしてスパイスでも入れるかのように魔女のおばあさんが訊きました。
「「どれも入れませんよ!」」
「あら、そう?」
不思議そうに、魔女のおばあさんは薬瓶を棚に戻しました。
魔女の世界の常識には、ちょっとついていけないルカとカイルでした。
窯の中ではクッキーが焼かれ、香ばしくて甘い匂いにワクワクしてきます。
「今日は楽しかったわ。ルカちゃんやカイルくんが来てくれて」
魔女のおばあさんはルカとカイルに美味しい紅茶を淹れてくれました。
「突然お邪魔してすみません」
「また来てね。アーシャさんやレオンさんは元気にしてる?」
「はい。双子の赤ちゃんの子育てを楽しそうにしています。また、うちにも来てくださいね」
「そうするわ」
魔女のおばあさんは、ルカとカイルが作ったクッキーを紙袋に入れて持たせてくれました。
「「おばあさん、ありがとう」」
「気を付けて帰るのよ」
魔女のおばあさんは、ルカとカイルの後ろ姿を見送りながら、こっそり呟きました。
「カイルくん。ルカちゃんとうまくいくといいわね♪」
魔女のおばあさんは、クッキーに何かの魔法をかけたようです。
帰り道、森の小道をふたりは並んで歩いていました。
「焼きたてホカホカで、いい匂い~♪ 今すぐ食べたいよ~」
「だめだよ。ちゃんと家に帰ってから、ふたりきりで食べなさいっておばあさんに言われたでしょ?」
言いつけは守ろうとする真面目なカイルでした。
「良い匂いだブヒ~~♪」
いつの間にか目の前に、ルカのクッキーの袋を至近距離で見つめるスモウブタさんがいました。
「朝からずっと相撲の稽古でお腹がペコペコなんだブヒ~!その美味しそうなクッキーを分けてほしいブヒ~!」
ふんどし、じゃなくて、まわし姿で汗だくのスモウブタさんの鼻息で、クッキーの紙袋が破けそうです。
「…どうぞ。でも、その前に何か飲んだほうがいいわ」
ルカが紅茶の水筒を渡すと、キュ~~ッと一気に飲み干して、スモウブタさんは話しだしました。
「実は、好きな人がいるの。ラグビーイノシシさんに振り向いてもらうために、日々、相撲の練習に明け暮れているの。
彼を上手投げしたり、寄り切ったり、押し倒せるようになったら、私を見直してくれるんじゃないかって。
彼を見事にうっちゃりできるような、素敵なスモウブタになりたいの…」
スモウブタさんは、目をキラキラと輝かせながら熱く語りました。
「そうなんだ…」
寄り切られて喜ぶ彼氏がいるのだろうかと疑問に思ってしまうルカでした。
「あっ! ラグビーイノシシさんだわ!」
スモウブタさんは、夢見る乙女のようにラグビーイノシシさんに駆け寄っていきました。
「これ、差し入れです! 私と一緒にクッキーを食べてくれませんか?」
あまりにも必死なスモウブタさんのアプローチに、たじたじのラグビーイノシシさん。
「…ありがとう」
押せ押せどすこいの迫力に逆らえず、ふたりは仲良くクッキーを食べ始めました。
「うっ…」
突然、ラグビーイノシシさんが胸を押さえてしゃがみこみました。
「どうしたの?」
心配そうに、ラグビーイノシシさんの背中をさすってあげるスモウブタさん。
「君が…こんなに可愛いなんて…なんで僕は今まで気付かなかったんだ!君を想うと胸が焦がれて痛いんだ…」
「ラグビーイノシシさん! 私も、あなたが好き!」
「可愛いイノブタをたくさん産んでほしい…」
「まぁっ!気が早いわ。あなたを寄り切るのが先よ!」
ふたりは仲良く手をつないで、行ってしまいました。
魔女のおばあさんがカイルの恋を応援しようと、こっそり惚れる魔法をかけたクッキーは、スモウブタさんの恋を成就させました。
でも、もしかしたら、ふたりは惚れる魔法が無くても、うまくいってたかもしれませんね。
ルカとカイルが森を散歩していると、甘い匂いが漂ってきました。
思わず、匂いにつられて歩いてゆくと、小さな一軒家がありました。
大きな窓から、魔女のおばあさんがクッキーを焼いてる姿が見えます。
ルカとカイルの視線に気付いた魔女のおばあさんは、笑いながら、おいでおいでと手招きをしました。
ふたりは喜んで魔女のおばあさんの家を訪ねました。
「ルカちゃん、カイルくん。一緒にクッキーを作るかい?」
「「はいっ♪」」
森の泉で何度か会ったことのある魔女のおばあさんはとても優しくて、クッキーの作り方を手取り足取り教えてくれました。
「じゃあ、この寝かせておいたクッキー生地で、好きな形のクッキーを作ってごらん」
魔女のおばあさんに手渡されたクッキー生地を、ルカは小さくちぎっては手のひらで丸めて押しつぶし、丸い形のクッキーをたくさん作りました。でも不器用なのか、クッキーの大きさが揃っていません。
「ルカ。これ、僕の気持ち」
大きなハート形のクッキーを作って、カイルは照れながらルカに見せました。
「…桃の形?」
鈍感なルカには、カイルの気持ちは伝わらなかったようです。
「さて、クッキーを焼く前に、媚薬と毒薬と惚れ薬と笑い薬、どれを入れる?」
と、涼しい顔をしてスパイスでも入れるかのように魔女のおばあさんが訊きました。
「「どれも入れませんよ!」」
「あら、そう?」
不思議そうに、魔女のおばあさんは薬瓶を棚に戻しました。
魔女の世界の常識には、ちょっとついていけないルカとカイルでした。
窯の中ではクッキーが焼かれ、香ばしくて甘い匂いにワクワクしてきます。
「今日は楽しかったわ。ルカちゃんやカイルくんが来てくれて」
魔女のおばあさんはルカとカイルに美味しい紅茶を淹れてくれました。
「突然お邪魔してすみません」
「また来てね。アーシャさんやレオンさんは元気にしてる?」
「はい。双子の赤ちゃんの子育てを楽しそうにしています。また、うちにも来てくださいね」
「そうするわ」
魔女のおばあさんは、ルカとカイルが作ったクッキーを紙袋に入れて持たせてくれました。
「「おばあさん、ありがとう」」
「気を付けて帰るのよ」
魔女のおばあさんは、ルカとカイルの後ろ姿を見送りながら、こっそり呟きました。
「カイルくん。ルカちゃんとうまくいくといいわね♪」
魔女のおばあさんは、クッキーに何かの魔法をかけたようです。
帰り道、森の小道をふたりは並んで歩いていました。
「焼きたてホカホカで、いい匂い~♪ 今すぐ食べたいよ~」
「だめだよ。ちゃんと家に帰ってから、ふたりきりで食べなさいっておばあさんに言われたでしょ?」
言いつけは守ろうとする真面目なカイルでした。
「良い匂いだブヒ~~♪」
いつの間にか目の前に、ルカのクッキーの袋を至近距離で見つめるスモウブタさんがいました。
「朝からずっと相撲の稽古でお腹がペコペコなんだブヒ~!その美味しそうなクッキーを分けてほしいブヒ~!」
ふんどし、じゃなくて、まわし姿で汗だくのスモウブタさんの鼻息で、クッキーの紙袋が破けそうです。
「…どうぞ。でも、その前に何か飲んだほうがいいわ」
ルカが紅茶の水筒を渡すと、キュ~~ッと一気に飲み干して、スモウブタさんは話しだしました。
「実は、好きな人がいるの。ラグビーイノシシさんに振り向いてもらうために、日々、相撲の練習に明け暮れているの。
彼を上手投げしたり、寄り切ったり、押し倒せるようになったら、私を見直してくれるんじゃないかって。
彼を見事にうっちゃりできるような、素敵なスモウブタになりたいの…」
スモウブタさんは、目をキラキラと輝かせながら熱く語りました。
「そうなんだ…」
寄り切られて喜ぶ彼氏がいるのだろうかと疑問に思ってしまうルカでした。
「あっ! ラグビーイノシシさんだわ!」
スモウブタさんは、夢見る乙女のようにラグビーイノシシさんに駆け寄っていきました。
「これ、差し入れです! 私と一緒にクッキーを食べてくれませんか?」
あまりにも必死なスモウブタさんのアプローチに、たじたじのラグビーイノシシさん。
「…ありがとう」
押せ押せどすこいの迫力に逆らえず、ふたりは仲良くクッキーを食べ始めました。
「うっ…」
突然、ラグビーイノシシさんが胸を押さえてしゃがみこみました。
「どうしたの?」
心配そうに、ラグビーイノシシさんの背中をさすってあげるスモウブタさん。
「君が…こんなに可愛いなんて…なんで僕は今まで気付かなかったんだ!君を想うと胸が焦がれて痛いんだ…」
「ラグビーイノシシさん! 私も、あなたが好き!」
「可愛いイノブタをたくさん産んでほしい…」
「まぁっ!気が早いわ。あなたを寄り切るのが先よ!」
ふたりは仲良く手をつないで、行ってしまいました。
魔女のおばあさんがカイルの恋を応援しようと、こっそり惚れる魔法をかけたクッキーは、スモウブタさんの恋を成就させました。
でも、もしかしたら、ふたりは惚れる魔法が無くても、うまくいってたかもしれませんね。
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