ルカとカイル

松石 愛弓

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僕だけを見て

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 森の木々が紅葉しはじめた頃、ラグビーイノシシさんが風邪をひきました。

 スモウブタさんは冷たい水でタオルを絞って、ラグビーイノシシさんのおでこに乗せています。
 絞り方が緩かったのか水が顔や枕にたれてビシャビシャで、スモウブタさんはあまり看病は得意ではないようです。

「ラグビーイノシシさん、大丈夫?」
 キラキラした乙女の瞳で見つめるスモウブタさん。

「ごめんね。心配かけて。僕の看病で相撲の稽古の時間が無くなってしまうね」
 申し訳なさそうに目を伏せるラグビーイノシシさん。

「そんなこと気にしなくていいのよ。元はと言えば、私が稽古の時にあなたを背負い投げして池ポチャしてしまったのが原因だもの」

「そういえばそうだったね」
「あの日は寒かったのに、つい熱心に稽古してしまったのよね」
「僕は10回も池に投げ飛ばされ…」
「つい、いつもの癖で、投げ飛ばしてしまったわ…」
「その癖は直したほうがいいよ…」
「そうね…」

 キッチンでは、グツグツとお鍋が煮えています。

「元気になってもらおうと思って、特製のおじやを作ったの。これを食べればスタミナがつくはずよ♪」

 なんだか強烈な臭いが漂ってきます。

「…おじやに、何を入れたんだい?」
 ラグビーイノシシさんは少し心配になってきました。

「えっとね。ニンニクとスッポンと大蛇とドラゴンの尻尾とゴジラの卵とオオトカゲの…」
 なんだか色々入っているようです。

 ♪ピンポ~ン♪
 その時、ラグビーイノシシさんの友達がお見舞いに来てくれました。
「うっ…!」
「なんだ、この臭いは…!」
「う~ん…」
 扉を開けるなり、3人の友達は次々と臭いに酔って倒れました。

「? どうしたのかしら?」
 3人のそばに様子を見に行ったスモウブタさんも、倒れてしまいました。

「おいおい、どうしたんだよ、みんな?」
 ベッドから降りて歩き出したラグビーイノシシさんも、倒れてしまいました。


 数時間後、皆が目を覚ますと、筋肉隆々の異世界植物が看病してくれていました。
 
 ラグビーイノシシさんが室内で育てていた異世界の観葉植物で、スモウブタさんの作ったおじやの臭いが気にならなかったようです。
 鉢植えから触手を伸ばし、鍋ごとおじやを完食すると、体力が増強されスタミナ過多で2mのマッチョマンに育ってしまい、鉢植えから出て根っこで歩き出し、倒れていた皆を看病していたのでした。

 観葉植物が作ってくれるおじやはとても美味で、部屋の掃除や洗濯もしてくれ、ラグビーイノシシさんの風邪は治っていったのでした。

 何でも出来る観葉植物は、スモウブタさんの相撲の稽古の相手もするようになりました。
 森に飛ばされ、池に飛ばされ、大変そうです。
 でも、スモウブタさんと一緒にいられる観葉植物に嫉妬してしまう、恋する青年のラグビーイノシシさんでした。

「僕が稽古の相手をするよ!」
 ラグビーイノシシさんはスモウブタさんのところに駆け寄って行きましたが、

「だめよ、また池に飛ばして風邪をひかせてしまうわ。観葉植物さんは風邪をひかないそうなの」
 断られてしまうラグビーイノシシさん。

「風邪ひいたって、いいんだよ! 僕は、誰よりも君のそばにいたいんだ!」
「ラグビーイノシシさん…」
 夕陽に包まれ、見つめ合うふたり。

 感動した観葉植物は、ラグビーイノシシさんが投げ飛ばされるたびに池に落ちないようにキャッチしに飛んでゆき、ラグビーイノシシさんを守り、ふたりの愛も守ったのでした。
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