灯火

松石 愛弓

文字の大きさ
12 / 15

12

しおりを挟む
 1か月後。
 
 毎日、モーリスさんに火魔法を習ったせいか、いろんなことが出来るようになってきた。
 火魔法で作った炎は 体を温め 消えにくい。耐熱容器に入れておけば 火災の心配もない。

 私が作った炎でも3か月くらいは保つみたいなので 侍女のララさんに割れガラスをゴミ処理施設からも集めてきてもらって 耐熱ガラス容器と火魔法の炎を大量に作り 孤児院や保護犬猫の施設など暖房が少なそうな施設へ寄付をした。
 私からではなく エルドル伯爵家から送られたということにして。
 私を助けてくれたロナルドさんへの せめてものご恩返しのつもり。

 足も治ったので 今日はララさんと 火魔法の炎を欲しいと連絡があった施設へ 馬車で届けにいく。
 貴族街を出て しばらく行くと 民家が燃えていた。消防はまだ到着していない。
 荒ぶる大きな炎と黒煙が立ち昇り 建物の中には逃げそびれた人がいるのか 大声で呼びかける人々の姿が見えた。

「御者さん、馬車を止めてください。危ないから ララさんは馬車の中にいてね!」
「えっ? フィーリアさん、何をするつもりなんですか? 無理しないでください!」
 ララさんを説得して馬車を降りると 火災現場へと向かった。

 群衆をかきわけ 炎の前に跪く。
 初めてやることなので 上手くできる自信は無いけど やってみよう。
 深呼吸してから 建物を燃やす炎に語りかけた。
 
 皆を苦しめないで。
 苦しめる炎ではなく 暖める炎に 生まれ変わって と 
 強く強く 願った。

 炎の波動が 気持ちのように伝わってくる。
 炎は 私に抹消されるのだろうかと少し怯えたようだった。
 しかし 私に敵意が無いことを悟り
 皆を苦しめることはやめるという意思を伝え
 大きな火の鳥に姿を変えると 大空へ羽ばたいていった。

 建物を覆っていた炎は全て消え去り 中に居た人も助かった。

「・・・よかったぁ~・・」
 炎が暴走とかしなくてよかった・・。話の分かる相手でよかった・・。
 思わず その場にへたりこんでいると ララさんが駆けつけてくれた。

「フィーリアさん、凄いです! 私、フィーリアさんを誇りに思います!」
 私の手を取り、涙を流して喜んでくれた。

「あなたが火を消してくださったのですか?」
「このお嬢さんが祈りだしたら すぐ火が消えたんだよ!」
「俺も見てたよ! 凄かった!」
「お陰でうちの子が助かりました!」
「火魔法使い様が 火を消してくださった!」
「この町の英雄だ!」

 どこからともなく 大きな拍手が沸き起こった。
 大勢の人たちに笑顔で感謝され 胸がいっぱいになる。

 サンダー家で虐げられていた頃 自分は邪魔な存在でしかないと思っていた。
 今は 誰かの命を救えて 感謝されて 生きていてもいいのかもしれないと思える。
 それが 魂が揺さぶられるほど 嬉しかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

夫婦という名の協力者、敵は令嬢

にゃみ3
恋愛
齢十二歳にして公爵夫人となった、セレスティア。 常に命を狙われる危険と、露骨な敵意に晒される立場。 同年代の令嬢たちからは妬みと侮蔑を向けられ、年長の貴婦人たちからは距離を置かれる。 そんな生活を送り始めて、早くも六年が経った頃。 「私、公爵様とお近づきになりたいんです!」 夫に好意を寄せる、自らが公爵夫人の座に就きたいと言い出した令嬢が現れて……。 黒く爛れた世界でたった二人の幼い夫婦が、どれほど苦しい思いをして生きてきたか。それは、当人である二人にしか分からないことだ。

悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました

ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。 壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。

マリアの幸せな結婚

月樹《つき》
恋愛
花屋の一人娘マリアとパン屋の次男のサルバトーレは子供の頃から仲良しの幼馴染で、将来はマリアの家にサルバトーレが婿に入ると思われていた。 週末は花屋『マルゲリータ』でマリアの父の手伝いをしていたサルバトーレは、お見舞いの花を届けに行った先で、男爵家の娘アンジェラに出会う。 病気がちであまり外出のできないアンジェラは、頻繁に花の注文をし、サルバトーレを呼び寄せた。 そのうちアンジェラはサルバトーレとの結婚を夢見るようになって…。 この作品は他サイトにも投稿しております。

アリーチェ・オランジュ夫人の幸せな政略結婚

里見しおん
恋愛
「私のジーナにした仕打ち、許し難い! 婚約破棄だ!」  なーんて抜かしやがった婚約者様と、本日結婚しました。  アリーチェ・オランジュ夫人の結婚生活のお話。

全てから捨てられた伯爵令嬢は。

毒島醜女
恋愛
姉ルヴィが「あんたの婚約者、寝取ったから!」と職場に押し込んできたユークレース・エーデルシュタイン。 更に職場のお局には強引にクビを言い渡されてしまう。 結婚する気がなかったとは言え、これからどうすればいいのかと途方に暮れる彼女の前に帝国人の迷子の子供が現れる。 彼を助けたことで、薄幸なユークレースの人生は大きく変わり始める。 通常の王国語は「」 帝国語=外国語は『』

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

処理中です...