35 / 137
2章 アポカリプスサウンド
33話 【合流】
しおりを挟む
「警視庁の原国です。ご同行をお願いします」
玄関を開けると、警察手帳を提示して原国さんが言う。
「刑事ドラマみたいですね。準備は出来ています」
僕が思わず笑うと、原国さんも微笑む。
実在していた。本当に。いてくれているんだ。みんな……。
チャットよりも、実際に会うと、その実感が強く湧いた。
後ろの母に挨拶をして、僕たちは家から出て戸締りをして原国さんの車に向かった。
ワゴンタイプの10人くらい乗れそうな車だった。
「パトカーじゃないんですね」
「パトカーですよ。覆面パトカー」
原国さんが微笑む。運転席に若い男性、助手席に原国さん、後部座席には武藤さんがいる。
なるほど確かに警察無線の音が聞こえる。
武藤さんを見た母が一瞬止まった。
「どうしたの?」
「お父さんにそっくりでびっくりしちゃった」
僕のなくなった父は20代、僕が生まれて数年で亡くなっている。
父の話は母がよくしてくれる。とてもとても穏やかな人だったという。
僕が誰かに優しくしたりすると、母は喜ぶ。父さんそっくりね、と言って。
そのイメージの中の父と武藤さんは僕の中では結びつかない。
武藤さんは優しい人だけど、割と豪快な人でもある。なので穏やか、というイメージが余りなくて、ムードメーカーと言ったほうがしっくりくる。だから少しびっくりした。
父さんの写真は残っていない。データを保存していたディスクが壊れて取り出せなかったらしい。
顔も知らない父と、パーティーの精神的支柱でいてくれた武藤さんが、似ているのなら、なんだかちょっと嬉しいかもしれない。
車に乗り、シートベルトを締める。
「おっ来たな坊主。お母さん若いなー。本当にお母さん? お姉さんとかじゃなくて?」
武藤さんがからりと言う。ダンジョンでも現実でもかわらない。
原国さんもだ。
ゆっくりと車が走り出す。
「あらあらお上手。真瀬敬命の母です。ダンジョンでは大変息子がお世話になりまして」
ころころと笑って、母が言う。何かちょっと気恥ずかしい。
「こちらこそ、敬命くんのお陰で俺たちは生き延びることが出来ました。ありがとうございます」
武藤さんが珍しく敬語で話し、母に頭を下げる。
「本当に、敬命くんには助けられました。私からもお礼を」
原国さんが続けて言う。
少しこそばゆいけど嬉しいな。母さんも嬉しそうだ。
「敬命から皆さんに護って頂いたことを聞いています。こちらこそ、息子を護って頂いてありがとうございます」
母も真剣にお礼を言っている。
母には、実感なんて殆どないはずだ。
だけど僕の話を本当に信じてくれているから、見知らぬ2人にお礼を言って頭を下げる。
普通なら高校生の息子から知らない大人を紹介されても困惑してしまうだろう。
「有坂さんの自宅に着きました。迎えに行きますので少々お待ち頂けますか」
原国さんが言い、しばらくして有坂さんと両親、お兄さん弟さんが車に乗り込んでくる。
親同士が挨拶をしあう中、有坂さんと照れくさくて目を合わせて笑った。
「これから我々は、警視庁へ向かいます。それまでに私から15分程度ですが、説明をさせて頂きますね」
原国さんがそう口にすると、車内は静まりかえる。
原国さんの声には、そういう性質があるのか、人に聞き入らせるのが上手い。
簡潔に説明をした後、原国さんは、自らの部署について明かした。
玄関を開けると、警察手帳を提示して原国さんが言う。
「刑事ドラマみたいですね。準備は出来ています」
僕が思わず笑うと、原国さんも微笑む。
実在していた。本当に。いてくれているんだ。みんな……。
チャットよりも、実際に会うと、その実感が強く湧いた。
後ろの母に挨拶をして、僕たちは家から出て戸締りをして原国さんの車に向かった。
ワゴンタイプの10人くらい乗れそうな車だった。
「パトカーじゃないんですね」
「パトカーですよ。覆面パトカー」
原国さんが微笑む。運転席に若い男性、助手席に原国さん、後部座席には武藤さんがいる。
なるほど確かに警察無線の音が聞こえる。
武藤さんを見た母が一瞬止まった。
「どうしたの?」
「お父さんにそっくりでびっくりしちゃった」
僕のなくなった父は20代、僕が生まれて数年で亡くなっている。
父の話は母がよくしてくれる。とてもとても穏やかな人だったという。
僕が誰かに優しくしたりすると、母は喜ぶ。父さんそっくりね、と言って。
そのイメージの中の父と武藤さんは僕の中では結びつかない。
武藤さんは優しい人だけど、割と豪快な人でもある。なので穏やか、というイメージが余りなくて、ムードメーカーと言ったほうがしっくりくる。だから少しびっくりした。
父さんの写真は残っていない。データを保存していたディスクが壊れて取り出せなかったらしい。
顔も知らない父と、パーティーの精神的支柱でいてくれた武藤さんが、似ているのなら、なんだかちょっと嬉しいかもしれない。
車に乗り、シートベルトを締める。
「おっ来たな坊主。お母さん若いなー。本当にお母さん? お姉さんとかじゃなくて?」
武藤さんがからりと言う。ダンジョンでも現実でもかわらない。
原国さんもだ。
ゆっくりと車が走り出す。
「あらあらお上手。真瀬敬命の母です。ダンジョンでは大変息子がお世話になりまして」
ころころと笑って、母が言う。何かちょっと気恥ずかしい。
「こちらこそ、敬命くんのお陰で俺たちは生き延びることが出来ました。ありがとうございます」
武藤さんが珍しく敬語で話し、母に頭を下げる。
「本当に、敬命くんには助けられました。私からもお礼を」
原国さんが続けて言う。
少しこそばゆいけど嬉しいな。母さんも嬉しそうだ。
「敬命から皆さんに護って頂いたことを聞いています。こちらこそ、息子を護って頂いてありがとうございます」
母も真剣にお礼を言っている。
母には、実感なんて殆どないはずだ。
だけど僕の話を本当に信じてくれているから、見知らぬ2人にお礼を言って頭を下げる。
普通なら高校生の息子から知らない大人を紹介されても困惑してしまうだろう。
「有坂さんの自宅に着きました。迎えに行きますので少々お待ち頂けますか」
原国さんが言い、しばらくして有坂さんと両親、お兄さん弟さんが車に乗り込んでくる。
親同士が挨拶をしあう中、有坂さんと照れくさくて目を合わせて笑った。
「これから我々は、警視庁へ向かいます。それまでに私から15分程度ですが、説明をさせて頂きますね」
原国さんがそう口にすると、車内は静まりかえる。
原国さんの声には、そういう性質があるのか、人に聞き入らせるのが上手い。
簡潔に説明をした後、原国さんは、自らの部署について明かした。
21
あなたにおすすめの小説
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る
伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。
それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。
兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。
何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる