【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて

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2章 アポカリプスサウンド

閑話/有坂琴音の独白

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 皆森涼香ちゃんにはびっくりしてしまった。あんなふうに真瀬くんに飛びついた女の子を初めて見て、つい慌てた。
 嫉妬、というより、あんなふうにフランクに告白が出来てすごい、とも感じてしまった。

 断る真瀬くんの言葉は優しかったけど、好きな人がいるなんて、知らなかったな。
 今は告白をする気はないよと、言う言葉に少しほっとしてしまった自分がいる。

 真瀬くんは恋愛をするとしても、相手から告白されて受け入れる、という想像しかしてなかった。
 好きな人がいるんだ、という声も表情もすごく優しくて、ああ、本当にその人が好きなんだなと感じた。
 その子が羨ましいな、とも思ったし、私だって人のことは言えないなと思った。私も夢現ダンジョンで真瀬くんに抱きついて困らせたのだ。好きな子がいるのなら、抱きついたりして悪い事をしたな、とも思う。

 あの時、繋いでくれた手を思い出す。優しい手。真瀬くんなら、恋愛として好きじゃなくても泣いている女の子の手を優しくとるだろう。

 あの時あの場で泣いたのが、私でなくても。
 彼はきっとそうした。


 そう思う人だからこそ、私は彼を好きになったのだ。


 もしも。
 彼の言う、好きな人が私なら、いいのに。

 そんなことを思うのは初めてで、そんな自分にちょっと驚く。
 友達の恋愛の話を聞いていてピンときていなかったことが、今はわかる。

 真瀬くんは私にいろんなことを教えてくれる人なんだな……。
 ダンジョンの攻略は武藤さんと涼香ちゃんがモンスターを競うように屠り、上平さんが撮影係と化して、私と真瀬くんはその後ろを走っている。
 広報、ということでダンジョンについての警告や、警察での取り組みなど、話せることを交代で話した。 

 自分の恋愛感情にばかり、目を向けてはいられない。

 だけど、真瀬くんと目が合えばつい微笑んでしまう。この人が側にいてくれてよかったと思ってしまう。
 安心するのだ、とても。
 世界の何が敵になったとしても、真瀬くんだけは、味方でいてくれるような気がする。

 それは私の驕りだろうか。私の都合のいい思い込みだろうか。

 真瀬くんはいつも微笑み返してくれる。感情的になって他人を支配しようとしない。
 困ったらいつだって手を差し伸べてくれる。
 自分の好きな人にだけではなく。身内や友達だけでなく。

 全体を見ている気がするのだ。

 私も、そうなりたいと思う。
 この恋が叶わなくても、きっと私は真瀬くんがずっと好きなんだろうと思う。

 夢現ダンジョンでした恋の自覚が、確信に変わって思うのは。

 初めて好きになった人が、この人でよかった。
 ということ。



 そうこうしているうちに、ダンジョンの攻略が終わり、血の蘇生術を使う。
 ダンジョンに入った瞬間に理解した。

 ここでなら、使える。

 血の蘇生術の感覚は、独特だ。
 跪き、床の血に両手で触れ、発動させると、誰かの声が聞こえる。
 その声に、魔力で応える。まるで地獄に蜘蛛の糸を垂らしているような、そんな感覚がする。


 私の魔力の糸を這い上がる、人の命。


 それを掴んで引き上げる。そうすると、床の血が人の形を作り上げて蘇生が成る。
 彼らは一様に、何が起きたのかわからない表情で、真瀬くんの案内を受ける。

 彼らは、どこから来て、蘇生されているのだろう。
 発動させた時の声は、どこからするのだろう。

 このダンジョンの床の下には何があるのだろう。
 何もわからないまま、使い続けていいのだろうか。

 命は取り返しのつかないもの。
 そのルールが、書き換えられ、取り返しがつくようになった。何故そうなったのか。
 それは一体どういう理屈で成り立っているのか、蘇生魔術を使っている私にも、わからない。

 夢現ダンジョンはそれでも夢の中の成すことだと思えた。
 だけど今は現実にいる。

 私の目は、開いている。
 夢ではないのに。

 人の命。失われれば、不可逆なはずのそれが、今この手で蘇っていく。

 何のデメリットもないのだろうか。
 本当に、蘇生されたのはその人、本人なのか。
 いくつも疑念が過ぎる。それでも。

 ――可能性があるのなら、それを掴むのが人間だ。

 全ての人や社会に、何一つ問題のないことなんて、元から存在しない。リスクがないことなんて何もない。
 理不尽に書き換えられた世界で、理不尽に死んだ人を、家に帰せるのなら。愛する誰かの元に返せるのなら。

 その理不尽な力をも行使することを厭わない。
 たとえその力を扱う私に、何かしらのデメリットがあったとしても。
 そんな思いもある。


 小さく息をひとつ吐けば、真瀬くんが私を見て、微笑む。

 それに、そうなのだ。 
 あなたがこうして、敬愛を込めて私に微笑んでくれることなら。

 私はいくらでも頑張れる気がするんだよ、真瀬くん。
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