【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて

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2章 アポカリプスサウンド

46話【レッドゲートへの侵入②】

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 病院のエントランスは、活気に満ちていた。

 病院内のテレビモニターでは緊急番組が放送されていて、入院着やパジャマ、スエット、普段着をきた老若男女が併設されているカフェや待合のベンチやソファに座り歓談している。

 子供がはしゃいで走りまわっていて、それをたしなめている人もいる。
 この大学病院は建て替えたばかりで内装も洗練されている。これだけ活気があると、ぱっと見では病院の中に見えない。

「こんなに、なんつうか……元気な人しかいない病院、初めて見たな……」
 武藤さんの呟く言葉は僕らの内心でもあった。

 回復系魔術やダンジョンによって病気や怪我が回復した人たちなのだろうか。どこか皆森さんに似た陽気さ、喜びがあるように感じる。

 そしてこの異常事態でありながら、カフェで忙しく働く人たちもいる。

「日本人って感じだな」
 異常事態となっても、仕事を平常に行えるならそうする。きっと併設されているコンビニもにぎわっているのだろう。働いている人たちも忙しそうだが、なんだか嬉しそうだ。

 僕たちは武藤さんの案内で、病院を歩く。彼のお姉さんは別棟の病室にいるらしい。
 入院病棟への入館手続きをして、エレベーターに乗る。それなりに歩いて、さらに別棟のエレベーターへ。

 武藤さんは毎日のようにここへ、運動をかねて通っていると言っていた。
 今日でそれも終わり、姉弟で今までの時間を取り戻すように過ごすのだろうか。

 レッドゲートの制限時間がある以上、すぐに平穏な生活には戻れないだろうけれど。僅かでも心穏やかな時間を、一緒に居られればと願う。
 ゲート自体は無数にある。世界が一変してしまって、昨日までの生活に及ばなくても、それでも家族として元気に健やかな生活を送って欲しいな、と思うのだ。

 エレベーターが到着すると、武藤さんがナースステーションへ向かう。看護師さんに軽く挨拶をして、真っ直ぐ病室へと歩いていく後ろを進む。

 武藤楓と書かれたプレートがある部屋。病室に扉はなく、カーテンで仕切られていた。

 カーテンを開けると、武藤さんが振り返って訊く。
「嬢ちゃん、回復魔術頼んでいいか?」
「勿論です」
 それに微笑みと共に言葉を返す有坂さん。

 ベッドの上で眠る女性の腕には、たくさんの機械や点滴の管が挿入されている。布団の中から伸びる管もある。呼吸器を付けて静かに呼吸を繰り返す武藤さんのお姉さんに、有坂さんがそっとその手に触れ、回復魔術をかける。


 けれど。


「発動しているのに……」
 彼女は目を覚まさない。
 麻痺解除や解毒などの回復魔術でも、武藤さんのお姉さんは目を覚まさなかった。

「どうして……?」
 交通事故による昏睡ならば、原因は頭部の怪我のはずだ。なのに、何故。

 病室に沈黙が落ちる。
 心拍などを計測する機械の音と、酸素マスクによる呼吸音だけが耳を打つ。

「ダンジョンに連れて行けば、目を覚ますかも……?」
 ぽつりと有坂さんが言う。

 皆森さんは言っていた。
「私はダンジョンで目覚めた時に、体が回復していたの。車椅子生活をしていたのに、リハビリもせずに立って歩けた。治療で抜けた髪もあったのよ」、と。
 それを有坂さんは思い出したのだろう。

「ダメだ。リスクが高すぎる。死者は蘇生出来るとわかったが、未クリア者を呼び戻す方法がわからない。回復魔術で目覚めないってことは、姉貴も夢現ダンジョンにいた可能性がある」
 武藤さんが頭を振って言う。

「いい、後回しだ。タイムリミットまで時間がない。悪いな姉貴、また来る」
 そういって、細く痩せた手を握る。

「時間とらせて悪かったな。行こう」
「でも、武藤さん」

「ここは安全だ。大丈夫なんとかなる。俺たちなら、なんとかできるさ。他の誰かが方法を見つけるかもしれねぇしな」

 そういうと、僕の肩を優しく叩く。

「行こう。攻略していけば未クリア時間切れで昏睡している人間を助けられるかもしれないんだ。俺が姉貴を助けたいと思うのと同じように、家族が助かることを望んでいる人間はたくさんいる」
 そう言ってからりと笑う。
 強い人だ。武藤さんはとても強い。がっかりして動けなくなっても、取り乱したっておかしくないのに。

 僕たちを励ましすらする、この人は。
 強くて、優しい大人だ。

「大丈夫だ、嬢ちゃんとお前さんがいる。姉貴を助けられる可能性が消えたわけじゃない」

 武藤さんの言葉は、苦いものではなくて、希望と力があった。
 僕たちへの信頼を感じて、大きく頷く。

「わかりました。ダンジョンを攻略しに行きましょう」
 僕たちは活気に満ちた病院を出て、タクシー乗り場のすぐ側にある路上に出た。

 病院周辺にはレベル5レッドゲートがいくつかあり、病院周辺から東京タワー方面へ順路が振られている。

 近くのバス停の側に次のレッドゲートがある。そこへ行けば、ゲートの前に制服を着た警察官が1人、立っていた。

「ダンジョン特務捜査員の方ですね。本部より通達があり、同行をさせて頂きます。小川です」

 そういうと、彼は僕らに警察手帳を広げてみせる。
 この辺りの交番勤務をしている若手の警察官だと言う。今年配属されたばかりだそうで、少し言葉に鈍りの残る、朗らかな青年という印象が強い男性だ。

 彼の覚醒も任務の1つ。原国さんからの指示だ。
 僕らも軽く自己紹介をして、ゲートを見る。

 侵入者は8名、そして死者が2名の表示。

 気を引き締めて、ゲートを潜る。僕は気配遮断を使用して、小川さんをパーティーに入れる。彼のスキルは炎魔術だったので装備を渡し、整える。

 隊列は正面に武藤さん、右手側が僕、左手側に小川さん、武藤さんの背後で僕らで挟んだ位置に有坂さんの配置で進む。

「まるでゲームの世界みたいですね」
 小川さんが感嘆して、言う。

「だよな、でもかなり危険だから気をしっかり持っていてくれ。中にいるモンスターは俺が一撃で倒せるが、スキルを持った人間はどういうスキルで、何をしてくるかわからない。真瀬の坊主がスキル封印を使えるから、まずは気配遮断スキルを使用して近づき、スキルを封じてから話をするという形をとっている。坊主の気配遮断は俺たちには認識できるが、他の人間やモンスターには看破系のスキルを使われない限り、感知できないことも頭に入れておいてくれ」

 そう告げながら、武藤さんは僕たちが感知する前に刀を振るって、通路のモンスターを倒す。
 モンスター相手だけであれば駆け抜けられる道を慎重に進みながら、小部屋も確認して回る。

 僕らもレベルは前回のレッドゲートダンジョンで僅かに上がっているが、スキルポイントの振り分けはしていない。武藤さんの気配察知レベルを上げるのに、まだ少し足りないのだ。
 多分次のレベルで、僕と有坂さんの分のスキルコインをつぎ込んだらレベルが上がるので、まずはそこを目指している。

 小川さんのレベルアップ分のスキルポイントについては、彼の裁量で振り分けをして貰うことになっている。
 マップを見ながら、慎重に進むと分かれ道に突き当たる。


 武藤さんの気配察知に引っかかるその前に、右手通路の奥から悲鳴が響き渡った。
 
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