【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて

文字の大きさ
64 / 137
2章 アポカリプスサウンド

60話【赤い髪をした男】

しおりを挟む
「ああ、ごめんね。まだちょっと何も言えないんだ」

 襲撃者たちの首が落ちて、血が噴出すと同時に、無傷の男が姿を現す。
 第一印象は、ホスト。

 夜の街が似合うであろう整った派手な顔立ちの男。

 それ以上に眼を引くのは、真紅の頭髪。人間の手で染めたにしては、禍々しい程の赤をした髪色。
 柔らかな口調と裏腹に、僕の背筋が凍る。

「5分、遊ぼう」

 男は楽しげに言うと、ストレージから刃物を抜き放ち、投擲をする。
 それを弾き、武藤さんが男に向かい、剣を振るう。

 有坂さんが蘇生術を使うが、首を落とされた男女は蘇らない。
 PKをして強化してきた人たちであることが、確定する。

 5分経てば、彼らのスキル経験点アイテムは、武藤さんと互角に戦うあの男のものとなる。

 それなのに何故、この男はここから立ち去らないのだろう。
 立ち去ったほうが、確実に5分を稼げる。姿を現す必要も無いはずだ。

 何かがおかしい。

 それでも、こうして男がここに残り、武藤さんと戦い始めたからには、何かの意味があるはずだ。

 僕らを1人で、たった5分で殺しきれる、自信があるということだろうか。

 武藤さんの剣聖の職業レベルは、上げ切れていない。
 スキルポイントは反魂スキルを得るために貯めている。それ以前も、有坂さんの蘇生術獲得のためにほぼ全てつぎ込んで来た。

 対して男は、今までどれだけの人間を殺し、スキルや経験点を奪ってきたのかわからない。
 鑑定系スキルも弾かれて、同時に僕の体が重くなる。

 カウンタースキルだ。痛みはなく、ただ重力が増した感覚。スピードバフをかけているのにも関わらず、動きが常人並に落ちたのが感覚でわかる。

「カウンタースキル持ちです。気をつけて!」

 僕が叫ぶと、男が笑んだ。とても、とても楽しそうに。子供が残酷な遊びを思いついた時のような笑みをして、僕に向かって指を軽く動かした。
 有坂さんが、悲鳴を上げた。

 腕が、熱い。

 ごとり、と僕の左腕が地面に落ちる。
 血が切断面から溢れる。今の、攻撃の属性がわからない。彼は今、何をした?

 有坂さんの回復スキルが飛び、落ちたはずの腕が元に戻った。
 法外の力というのであれば、これだってそうだ。いや、そんなことを考えている場合じゃない。

 まずい、と思うと同時に体が前に出ていた。僕は全身で有坂さんをガードする。

 有坂さんが殺されてしまえば、僕たちは詰む。
 僕が死んでも5分以内に蘇生されれば、何も奪われない。

 身代わりの護符もあり、蘇生アイテムもある。
 全滅はしても原国さんが蘇生アイテムを使える。

 それでもそれには、回数制限がある。

「ダメ!」

 そう言って有坂さんが僕を男から隠すように、引っ張り、強引に下がらせて男へ弓を射かける。それも防御系スキルで弾かれ、通らない。
 男はそんな僕らを見て愉快そうに笑い、武藤さんと剣で、槍で、斧で、武器を変幻自在に出現させては、武藤さんの一太刀すら浴びずにあしらっている。

 彼は、どれだけの人間を殺し、その能力を食らってきたのか、想像もつかないほどの強さを持っている。
 決断をしなければいけない。

 僕の得た、不老不死のスキルを、絶対に奪われてはいけない。

「すごく、楽しいな。いい世界になってくれて本当、嬉しいよ」

 男が乱舞の如く戦いの中で笑い、歌うように言った瞬間、武藤さんが剣に貫かれた。
 夢現ダンジョンの、あの時のことが、フラッシュバックする。

 それでも、武藤さんは、それを逆手にとって、今度こそ、男の腕を掴む。
 あの時と違って、麻痺も毒も、武藤さんには効かない。アクセサリーによる加護が効いている。

「やっと捕まえたぜ、色男」

 口からも血をこぼしながら、武藤さんが男をしっかりと捕まえて言う。
 そのまま、搦め手取って、「左腕だったな」と低く囁くと男の左腕を切り飛ばした。

「はは、情熱的だな。いいね、そういうの。泣かせたくなる」

 男は腕を落とされても気にするそぶりもなく、刺し貫いた剣を捻り上げる。武藤さんの刺された場所が嫌な音を発てて、武藤さんが血を吐く。
 それでも武藤さんは男の手を掴んで離さない。

「男に泣かされる趣味はねえな」
 血を吐き捨てて、刺された同じ場所を剣で貫く。

「泣かされるのも、俺は好きだけどね。残念だな、時間切れだ」
 男は変わらず笑む。刺されて尚、痛みが、ないように。

「手前ェはどこの誰だ」
 武藤さんが吐き捨てるように言う言葉を男は笑う。

「口説くには、ちょっと色気が足りないかな」

「口説いちゃいねえよ、とっとと吐きな」
 男がするのと同じように、武藤さんが剣を捻りあげる。それでも男は、苦痛の声ひとつ上げずに笑った。

「時間切れだと、言っただろう?」
 顔を近づけ楽しげに囁く、と、同時に男の姿が霧散した。
 武藤さんがたたらを踏んで、血を吐いた。刺さっていた剣もなくなっている。

 有坂さんが回復スキルを飛ばすと、負傷が消え失せる。

「クソ、一張羅に穴が開いちまった」
 口に残った血を吐き捨てると、浄化魔術で血を落とす。

 男の気配はない。周囲にはようやく応援が駆けつけて来ている。
 姿を消したのは透明化などの実体を見えなくする能力じゃない。
 消失? 転移? 一体どんなスキルか、わからない。

 警戒は解かず、僕らは指示を受け、道路に出る方向へと固まって走り出す。
 僕へのカウンタースキルの効果も消えている。

 一体何の目的で、どうして急に姿を消したのか。
 殺せたはずだ。僕たちをあの男は、殺せた。その確信があった。

 なのに何故、殺さなかったのだろう。

 僕の腕を落とした攻撃を、首にするだけで殺せたはずだ。
 身代わりの護符があるから、一度は死なずにいられる。

 それでも、男の攻撃は防御、守護双方のバフを貫通して攻撃を通した。
 腕を切り落とすほどの攻撃を、あの男は僕ら全員に使うことが出来たはずだ。
 なのにそれをしなかった。

 何かの制約で、できなかった?

 わからないことしかない。結局僕たちは、あの男から目的も名前も、何ひとつ聞き出すことは出来なかった。
 
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

処理中です...