【3部完結】ダンジョンアポカリプス!~ルールが書き変った現代世界を僕のガチャスキルで最強パーティーギルド無双する~

すちて

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3章 運命の輪

81話【襲撃】

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 ホテルのエントランスから、ガラス張りの出入り口を見ると、外で警備に立っている警察官に詰め寄る集団が見えた。

 彼らはすごく興奮しているみたいで、警察官に掴みかかろうとしている。
 危険だ。

 ガラスドア越しでは、スキルは相手に届かない。

 オブジェクトの破壊不可。

 建物や車両、人の入れるものでアポカリプス以前からあったもの。そして道路や、木など。
 それらにスキル攻撃は効かない。

 スキルによる付与魔術はある。対オブジェクト用スキルでなければ、スキルは役に立たない。

 衣類や物品は通常通り、壊せるし破れる。
 地面と、地面に設置されているものか車両がオブジェクト扱いになる。

 ガラスドアを開けて、彼らを制圧するべきか。
 それとも地下駐車場から出て、制圧するべきか。

 このホテルはアポカリプス当日から、原国さんの伝手で全館貸切になっている。
 僕らや、蘇生された人、原国さんの重要視する人たちが宿泊している施設だと説明を受けた。

 入り込まれるわけには、いかない。
 とはいえ、このまま放置もできない。

 アプリで武藤さんが原国さんへ連絡を入れる。
 僕らは警視庁へ戻らなければいけない。
 どちらにしても、彼らが障害になっている。

 外の彼らは何に興奮して、何を言っているのかも聞き取れない。
 外の警備をしている警察官の人たちも何かを言い返しているが、それも聞き取ることはできない。

「裏口から出てください。彼らのことは、こちらに任せて」

 原国さんの指示が飛ぶ。
 それと同時に。

 ガラスドアが、鮮血で染まった。
 警察官が倒れる。鮮血でガラスドアがまた、染まる。

 警備をしていたひとたちは、地面に倒れて動かない。
 繋いだ有坂さんの手に、力がこもる。

「全員やられた。裏口からの脱出で、本当にいいのか?」
 武藤さんが低い声で言う。

「裏口もダメです! 警備の者と無線の応答がなくなりました。今応援を呼んでいます。彼らの制圧が終わるまでは、部屋で待機をしていて下さい」

 原国さんが珍しく、声を荒げた。
 エントランスにいるのはホテルの従業員と、警察官。それと、警視庁へ向かう僕ら。

 エレベーターホールへと戻る。

 人が、殺された。
 明らかに、致死量の血液。

 僕は最初の夢現ダンジョンの血塗れの床を思い出す。

「私が、蘇生するから」
 有坂さんが言う。その声に、力なく頷く。

 助けに、入れなかった。
 彼らの暴虐を、許してしまった。

 エレベーターに乗り込み、僕らの部屋へ、一塊に入る。
 警視庁に向かおうとしていたのは、僕と有坂さん、母と楓さん、武藤さん、根岸くん。

 外に止まっていた車で移動する予定だった。

 建物の中は、安全だと思っていた。だからこそ、ほんのわずか日常に戻ったような気がしていたけれど。

 違うんだ。違う。今は、もう。
 人がスキルという力を得て、大きな武力を個人が持つ。
 わかっていたはずなのに、胸が痛い。

 僕たちを警護していたひとたちが、殺されたのだ。

 偏った集団になれば、武力で自分の思うようにしようとする人たちが出てくる。
 わかっていたつもりだった。
 わかっていたつもりでしか、なかった。

「部屋についた。とりあえず安全確保はできた」
 武藤さんが原国さんに通話で言う。

「こちらで制圧し次第、また連絡をします。待機していて下さい。何かあればすぐ連絡を」
「了解」

 通話を閉じて、武藤さんが「とりあえず、ソファにでも座ろうや」とみんなを促す。
 促されるまま、ソファに座る。

 母もさっきの光景に顔を青くしている。
 誰も口を開かず、沈黙が部屋を支配する。

「まずは、落ち着こう。こんなことは、多分この先いくらでもある。腹を括らなきゃならない。そうだろ?」

 武藤さんが言って、お湯を沸かし始める。
 楓さんも立ち上がり、お茶をふたりで淹れはじめた。

「みんな、深呼吸をしてくれ。呼吸が浅くなってる」
 言われて見たら、息苦しさがあった。意識して、呼吸を深くする。

 備え付けのお茶はいくつか種類があった。

 ほうじ茶や玄米茶、緑茶。紅茶と珈琲。それらの匂いが、かわるがわるたって、ようやく、落ち着いて考えられそうだった。

 あの襲撃者は何が目的で、あんなことをしたのだろう。
 ここは警視庁のすぐ側。強いスキルを持った警察官や、ダンジョン特務捜査員が詰めている場所だ。
 何が理由で、狙いなのだろう。

 武藤さんと楓さんがお茶を配る。
 温かいそれを飲むと、焦燥感と無力感が薄れる。

「とりあえずは、待機だ。けどまあ、こんな状態で何もしないでいるわけにもいかないからな。ひとつ話をしておこうと思うんだが」

 そう言って武藤さんが取り出したのは、一冊のノートだった。
 ずっと何かを書いていたノート。

「このクソゲーの攻略を考えて見たって話だ」
 武藤さんはノートをトンと指で叩いて言う。

 今のこの世界は、ゲームと親和性の高い異世界をベースに作りかえられている。
 ゲームであるならば、攻略方法がある。

 それが武藤さんの論だ。

 そして、攻略方法だけでなく、バグをついた裏技でさえあるはずだと。

「多分、このゲームは、勝てる。いくつか原国さんと節制テンペランティアに聞いた話を総合しつつ、俺の感覚で言」

 武藤さんの語る声を、外の廊下。そこから響く、悲鳴が描き消した。
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