六畳二間のシンデレラ

如月芳美

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第六章 家族

第55話 放送部ジャック

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 今日は久しぶりに生徒会室で桜子さんとお弁当。もうすぐ桜子さんも卒業するから、こうして学校で会う事は少なくなってしまう。今度からは手代木のお屋敷で会うのかな。あんまり気軽に会えなくなっちゃうな。

「最近はどう?」
「花壇、作ったんですよ。マンションの人達と協力してパーゴラも作ったんです。ピクニックみたいで楽しかった~」

 土日でパーゴラと花壇を作ったら、自転車小屋の横の空間が一気に華やいだ。小林親子の見立てで、今あるストックとパンジーの他にアリッサムとかいう小さくて横に広がるお花を植えて、隙間にブルーデイジーとかリナリアとかっていうお花の苗を仕込んだんだ。一体どんな花が咲くのか見当もつかないけど、ストックやパンジーが終わる少し前にちょうど咲くらしいから、お花が絶えることはないみたい。

「玲央は?」
「え、何がですか?」
「わたし、玲央にお説教したの。単に菫さんを助けたいだけなら、結婚なんて口にするものじゃないって。女の子にとっての結婚は男子とは違うのに、なんにもわかってないんですもの、あの朴念仁」

 ブツブツ言ってるけど、お弁当の中身が相変わらずオシャレ。タコさんウインナーとかミートボールなんて入ってない。ベーコンとほうれん草の入ったキッシュみたいなのとか、ハムと薄切りきゅうりをミルフィーユみたいにしたのとか。

「あ、でもデートっぽいの、連れてってくれました」
「玲央が?」
「もちろんです。あたし『いまむら』で買った七百円のワンピースで行っちゃいましたけど」

 桜子さんの普段着ワンピースよりも0が二つ少ないですけど。

「じゃあ、一応玲央もその気はあるのね」
「さあ? 桜子さんに言われたから連れ出してくれただけかもしれませんし。玲央さんの気持ちは今一つわかりません」

 そこまで言ったところで、桜子さんがお弁当をつつく手を止めて、あたしをじっと見た。

「まさか、玲央はまだ自分の気持ちをあなたに伝えてないの?」
「何も言ってくれませんし、聞くのも変ですし。家政婦ですから」
「もう! あの子どれだけポンコツなのよ! わたしがこれだけ言ってもわからないのかしら、あの人工知能男!」

 そこまで言わなくてもいいんですけど。
 と思った時だった。お昼の放送で流れていた音楽が、突如止まったのだ。

『えー、お昼の放送中ですが、放送部からのお知らせです。たった今、放送部が生徒会長に乗っ取られました』

 はぁ?

『え、違う? 同じじゃないっすか……あ、そうですか。えー、すいません、生徒会長じゃなくて、三年一組の手代木先輩に乗っ取られました。これでいいですか? ……はい、わかりました。え、マジっすか? ちょっと待ってくださいよ、それはマズイっすよ』

 何かドタバタやってる音が聞こえる。微かに玲央さんの声も混じってる。

「何やってるのかしら、玲央」
「さぁ?」

『なんで校庭? 中庭? いや、いいですけど。えー、今から中庭に移動します……あ、手代木先輩、これ持ってってくだ――』

 生徒会室にいてもわかるほど、校内がざわついている。放送部と玲央さんは、一体何を始めるんだろう?

「まさか……玲央」
「心当たりでも?」

 窓から中庭を見下ろしていると、放送部の人と玲央さんがマイクを持って現れた。

『えー、お昼の放送を再開します。えーと、放送部の原田です。現在、三年一組の手代木先輩に放送部が乗っ取られ、中庭からライブでお送りしております。あ、ちょっと待ってくださ――』
『三年一組、手代木玲央です。全校生徒の皆さんにご協力をいただき、証人となって貰うためにこの場をお借りしております。私事で大変恐縮ではございますが、しばらくお耳汚しの失礼をお許しください』

 いきなり玲央さんがマイクを奪い取り、校舎の上の方に向けて話し出した。もう、校舎の窓には生徒たちがベッタリ張り付いてる。

「何始めたんですか」
「なんとなく見当がつきましたわ。巻き込まれますわよ」

『一年三組、柚木菫さん。聴いてますか。いらっしゃいましたら窓際に出て来て下さい』

 えええええええ! 名指し!

「玲央が呼んでますわ、手を振って差し上げて」
「え、でも……」

 躊躇う間もなく、桜子さんが大きく手を振る。玲央さんが気付いたようにこちらに体を向けたのがわかった。

『柚木菫さん、あなたのことが好きです。僕と結婚してください』

 はい?
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