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アカリとフシギなタマゴ編
28色 アカリの試練3
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「ねえクロロン、クロロンとシアンって幼馴染なんだっけ?」
「? うん、そうだね」
廊下を歩きながら、クロロンはわたしが急に投げかけた質問にすこし首を傾げながら返す。
「前の学校もやっぱり同じだったの?」
「ううん、学校はまったく違ったよ。逆に今回、はじめて同じ学校になったかな」
「え!? そうなんだ!?」
クロロンとシアンは幼馴染っていってたから、てっきり学校も同じだと思ってたわたしは驚く。
「うん、ぼくとみっくんは親同士が知り合いで、それで、たまたま同じ年に産まれて赤ちゃんの時から知ってるって感じかな」
「へえーなんだか、かわってるね」
ちょっと失礼なことを言っちゃった気がするけど、クロロンは気にせずに答える。
「そうだね。 ある意味ぼくとみっくんは兄弟みたいな感じかもね」
「兄弟かぁ、なんだか熱い友情って感じだね!」
「ぼくはオニーがいるんだけど、オニーもみっくんと仲がよかったからね」
「オニーさんってどんな人?」
「おもしろい人だよ」
「そうなんだ」
「あっそういえば」
そんな会話をしていると、クロロンがなにか思い出したのか話を続ける。
「みっくん以外にももう一人幼馴染がいたんだ」
「もうひとり?」
「うん、ぼくが7歳の時に引っ越しちゃったんだけど、女の子でぼくたちは《はーちゃん》って呼んでたんだ」
「へえーそうなん……」
あれ? ……どこかで聞いたことがあるような……?
「着いたよ」
「あっうん」
ナニか大切なことを思い出せそうな気がしたけど、目的の場所に着いて考えが飛んでしまった。 でも、先にこっちだよね! わたしは気を取り直して体育館のトビラを開ける。
「あら、思ったよりも早かったですわね」
トビラを開けると、中には長い髪をお団子にして動きやすそうなスポーツ服姿のフラウムがいた。
「うん、れいたくんが思ったよりもはやくカケラをくれたんだ」
「あのメガネがアッサリくれるなんて珍しいですわね」
「なんかレータと一緒に本のお話をしたらナゼかくれたんだ」
わたしはフラウムに説明するとすこしフシギそうな顔をする。
「まあ、いいですわ。 貴方方が気付いていないだけであのメガネの機嫌を取れたんですわね」
フラウムはひとりで納得したみたい。
「ワタクシも直ぐに渡してもいいのですが、折角ですから、お二人さん、少しワタクシの勝負に付き合って頂けませんか?」
フラウムは片手に持っていたバスケットボールを指で回しながらいう。
「えーっと、もしかしてバスケをするってことかな?」
クロロンは回ってるボールをみながら聞くと、フラウムはボールの回転を止め、地面に弾ませてキャッチして答える。
「ええ、そうですわ」
「ぼくボールを使った運動苦手だな……」
「わたしもあまりやったことないな」
クロロンは「あはは」と頬を掻きながら答える。
「マンガなら読んだことあるけど」
「あのダンクするやつ?」
「うん」
わたしも経験はないけど、同じくマンガならしってるよ!
「まあ、勝負と云っても、ワタクシからこのボールを奪うことが出来たらいいですわ」
腕で華麗にボールを回しながら、説明する。
「きのせさんから奪うってなかなか難しいね」
「でしたら、お二人を舐めている訳ではありませんが、身体強化魔法や攻撃魔法を使ってきてもいいですわよ」
自身のないわたしたちにハンデをくれた。
「わ、わかった。 でも、さすがに攻撃魔法は危ないから身体強化とケガをしない魔法にするよ」
「そうだね」
わたしとクロロンはお互いの顔をみて、頷き合う。
「では、始める前に準備体操はしっかりしてください。 いきなり激しい運動をすると危ないですからね」
「うん」
「わかった」
わたしたちはクッシンをしたり、手足をブラブラと振ったりして、ケガをしないようにしっかりと準備運動をする。
「よし! 準備完了だね!」
「いろのさんは身体強化はいつ使うかな?」
クロロンはわたしに作戦を聞いてくる。
「そういえば、そうだったねクロロンはどうするの?」
逆に聞き返す形になっちゃったけど、すこし考える仕草をして答えてくれる。
「様子をみてから使いたいところだけど、体力に自信がないから、はじめに使ってホンキでボールをとりに行こうと思うよ。 それでスタミナがなくなっちゃったら回復するまですこしまってもう一度使ってみるね」
「じゃあ、わたしはクロロンの体力がなくなっちゃった後とか、スキがみえた時にタイミングをみて使うね」
「うん。 よろしくね」
「相手にする本人の前で作戦会議とはまる聞こえですわよ」
「あっ!」
わたしとクロロンはお互いにハッとする。 それをみたフラウムは呆れた感じで返す。
「お二人らしいですわね。 ですが、お二人のその抜けているところ好きですわよ」
そういうと、フラウムは手に持っていたボールを地面に弾ませる。
「さあ、そろそろ始めますわよ」
「よーし! いくよー! マックスダーイヘーンシン! シャキーーン!」
クロロンはそう叫ぶと、両手を斜めに構えて強化魔法をかけた。 それをみたフラウムはポカーンとした表情を浮かべ、一瞬、動きを止めた。
「いまだ!」
「!」
わたしはすかさずボールに触れようとしたけど、すぐに正気を取り戻したフラウムが華麗にかわした。
「危なかったですわ……まさか、いきなりボールを取られそうになるとは、中々いい作戦ですわ。 緑風さん」
フラウムはクロロンを褒めるが、当の本人は一瞬ナニが起こったのか理解していなかったみたいだった。
「そ、そうだね~うん、ま、まさか、この作戦にすぐに対応しちゃうとはさ、さすがきのせさんだね~……」
理解したクロロンはすごい目を泳がせながら返す。
「嘘が御下手ですわね……まあ、気を取り直して行きますわよ」
体育館にボールの弾む音と靴を滑らせる音が響く。
わたしとクロロンは必至にボールに食らいついたけど、やはり触れること、ましてやフラウムの動きにも着いていくことが出来なかった。 なんとか二人で挟み込めてもまるで息をする様に股下にボールを潜らせて抜けたり、何度かシュートを決めていたので、シュートを打つ瞬間を狙ったらフェイントを華麗にされ、ゴールに直接いれようとしてジャンプしたところを二人でジャンプして止めようとしたら空中で体勢を変えて、わたしたちの空いた隙間からボールを投げて入れたり、どこかのマンガでみるようなダンクをきめられたりした。
「……わお」
「……ふつくしぃ」
こんなに何度もかわされ、美しくゴールを決められてしまうと、もうわたしたちは逆に手を叩いて感心してしまっていた。
「御二人さんもう終わりですの? 息があがってますわよ」
床に手をついて、息を切らしているわたしたちをフラウムが息ひとつ切らさずに眺める。
「はあ……はあ……フッ……きのせさん舐めてもらっちゃこまるよ」
「はあ……はあ……クロロン?」
わたしは床に手をつきながらクロロンをみる。
「ちょっとホンキを出そうかな」
「本気?」
「頼んだよ……もうひとりのぼく」
「え?」
そういうと、クロロンは途中から腰に巻いていた上着を自分の肩に巻き直した。
「ああ、後は任せときな」
「え?」
突然変なことを言い出したクロロンにわたしとフラウムは目を丸くする。
「クロロンどうしたの?」
「おれはクウタでありクウタじゃないぜ」
「あの、緑風さん?」
「おれは『ブラックウタ』封印されし闇の王だぜ」
「…………なるほど、そういう設定ってことですわね」
「あっそういうこと」
フラウムの言葉にわたしはなるほどと手をポンと叩く。
「つまり、クロロンはなんだかよくわからないけど魔王ごっこ的なのを始めたんだね」
「それはどうかな?」
「え?」
「おれは『ブラックウタ』だぜ」
「意地でも貫くんですわね」
「お遊びはここまでってところを思いしらせてやるぜ」
「負けフラグですわね」
「いくぜ! 速攻アタック『旋風突進』!」
高らかに技を叫ぶと、クロロンはフラウムにむかって走り出した。
「もらったぜ! 『シャイニングフラッシュ』!」
「『闇』って云ってるのに、輝きまくってますわね」
フラウムはツッコミながらも華麗にかわす。
「フン、あまいぜ! 『ウインド』!」
スカッ
「『ダブルウインド』!」
スカッ
「『ギャラクシーウインド』!」
スカッ
見事にすべてかわされてしまった。
「うあーーーなんでぇーー!」
クロロンは奇声を発しながら地面に手をついた。
あれ? よくよく考えてみたらこれってチャンスだよね?
「……よし」
ゆっくりとフラウムに近づく。
そお~っと
そお~っと
「万策尽きましたわね」
「それはどうかな?」
「今だ!」
わたしは一気にボール目掛けて手を伸ばす。
「甘いですわ」
「え!?」
振り返ったフラウムにあっさり避けられてしまった。
「これが緑風さんの作戦ってことぐらいお見通しですわよ」
「『風神の一撃! ゴッドウインドクラッシャー!』」
「え?」
フラウムの背後から突然クロロンの叫び声が聞こえてきたかと思ったらクロロンの手がボールに当たってフラウムの手から離れ高く宙を舞った。
「あれ?」
「しまった!」
ボールが宙を舞っているほんの数秒間わたしの世界がスローになる感覚がした。 スローになっているというか咄嗟にカラダが動いた感じかな?
一瞬なにが起こったのか理解していない感じのクロロンと予想だにしない事が起こって驚いているフラウムだったけど、二人は慌ててボールを取りに行こうとジャンプをしていた。
わたしも二人に続いて飛ぼうとしたけど、フラウムの身体能力には敵わないことはわかっていたから一瞬ためらったけど、ふと、ある方法を思いついてすぐにそれを行動に移した。
それは『すべての魔力を足にかけること』。そして、すぐにわたしは飛び上がった。
すると、フラウムたちより高く飛べて早くボールをキャッチすることに成功した!
「やった! やったよー!」
わたしは大喜びしたけど、あることを忘れていた。
「い、いろのさん着地は!?」
クロロンのすごく慌てた声にわたしはハッとなる。
「え? ああ!?」
すべての魔力を足にかけてしまったことで高く飛び過ぎてしまった。
「アカリさん!」
「うわあー!?」
わたしのカラダに重力がかかりわたしは地面目掛けて落下していく。
「ピュピュ―!」
クーが必至にわたしを掴んで飛ぼうとするけど、ダメみたい!
「ぶ、ぶつかるー!」
地面にぶつかる覚悟をしたわたしは目をつむる。
「うん?」
だけど、思ったよりも痛くなかった。
「あれ?」
そっと目を開けるとフラウムとクロロンがわたしを受け止めてくれていた。
「いろのさん大丈夫かな?」
「お怪我はありませんか?」
二人は地面に倒れていたけど、わたしの心配をしてくれる。
「あ、ありがとう二人こそケガないかな? それにクーもありがとう」
「ピュルーン」
わたしは二人の上から急いで降りる。
「助けた方を心配してどうするんですの?」
「そうだよ、いろのさんは今のぼくたちと違って『本物』なんだから」
「そうだったね」
クロロンの言葉になぜだか、また、『さみしさ』を感じる。
「ぼくなんかは、なにがあっても大丈夫だけど、いろのさんになにかあったら大変だからね」
「それはちがうよ!」
わたしは反射的に声をだす。
「え?」
「今回の行動はわたしがなにも考えずに起しちゃったけど、今のクロロンとフラウムが『造られた』存在だったとしても、わたしは今の二人は『本物』だと思ってるよ」
「……いろのさん」
「…………」
「だから、二人は変わらず、わたしの『トモダチ』だよ」
わたしの言葉を聞いて二人はお互いをみると、クスリと笑い、こちらに向き直った。
「まあ、アカリさんらしい考えですわね」
「そうだね、なんというかさすがって感じだね」
フラウムはホコリを払いながら立ち上がる。
「さて、話を戻しますが、ワタクシの負けですので約束通りこちらをお渡し致しますわ」
「あ、忘れてた」
フラウムから二つ目のカケラを受け取った。
「じゃあ、緑風さん後はお任せ致しますわね」
「うん、わかった」
「もう行っちゃうの?」
わたしがさみしそうにいうと、フラウムはやさしく笑顔をむけて答える。
「ええ、ほんの少しでも遊べて楽しかったですわ。 今度はぜひ『あちらのワタクシ』ともやってくださいね」
「うん、また『アナタ』ともやろうね」
わたしがそういうと、フラウムは微笑みながら消えていった。
「疲れたけど、たのしかったね」
クロロンは立ち上がりながらいう。
「うん、あまり他の人とカラダを使う遊びはやったことなかったからなんだか新鮮な気分だったよ」
「また、みんなともやりたいね」
「う……うん。 そうだ、次に行かないとね」
一瞬、クロロンが複雑そうな顔をした気がするけど、気のせいかな?
「つぎはもしかしてシアンかな?」
「すごい! よくわかったね! そうだよ、次はみっくんをさがしてみようか」
「シアンのいそうな場所かぁ」
シアンのいそうな場所を考えてみる。
シアンはいつもボーっとしていて、ちょっとなにを考えているかわからないけど、よく教室の窓から空をみていた気がするな。
もしかして、《空がみえる場所》かな? そして、空が《近い場所》といえば……
「《屋上》かな?」
「じゃあ、答えあわせに行こうか」
「うん」
わたしたちは体育館を後にすると屋上にむかった。
「? うん、そうだね」
廊下を歩きながら、クロロンはわたしが急に投げかけた質問にすこし首を傾げながら返す。
「前の学校もやっぱり同じだったの?」
「ううん、学校はまったく違ったよ。逆に今回、はじめて同じ学校になったかな」
「え!? そうなんだ!?」
クロロンとシアンは幼馴染っていってたから、てっきり学校も同じだと思ってたわたしは驚く。
「うん、ぼくとみっくんは親同士が知り合いで、それで、たまたま同じ年に産まれて赤ちゃんの時から知ってるって感じかな」
「へえーなんだか、かわってるね」
ちょっと失礼なことを言っちゃった気がするけど、クロロンは気にせずに答える。
「そうだね。 ある意味ぼくとみっくんは兄弟みたいな感じかもね」
「兄弟かぁ、なんだか熱い友情って感じだね!」
「ぼくはオニーがいるんだけど、オニーもみっくんと仲がよかったからね」
「オニーさんってどんな人?」
「おもしろい人だよ」
「そうなんだ」
「あっそういえば」
そんな会話をしていると、クロロンがなにか思い出したのか話を続ける。
「みっくん以外にももう一人幼馴染がいたんだ」
「もうひとり?」
「うん、ぼくが7歳の時に引っ越しちゃったんだけど、女の子でぼくたちは《はーちゃん》って呼んでたんだ」
「へえーそうなん……」
あれ? ……どこかで聞いたことがあるような……?
「着いたよ」
「あっうん」
ナニか大切なことを思い出せそうな気がしたけど、目的の場所に着いて考えが飛んでしまった。 でも、先にこっちだよね! わたしは気を取り直して体育館のトビラを開ける。
「あら、思ったよりも早かったですわね」
トビラを開けると、中には長い髪をお団子にして動きやすそうなスポーツ服姿のフラウムがいた。
「うん、れいたくんが思ったよりもはやくカケラをくれたんだ」
「あのメガネがアッサリくれるなんて珍しいですわね」
「なんかレータと一緒に本のお話をしたらナゼかくれたんだ」
わたしはフラウムに説明するとすこしフシギそうな顔をする。
「まあ、いいですわ。 貴方方が気付いていないだけであのメガネの機嫌を取れたんですわね」
フラウムはひとりで納得したみたい。
「ワタクシも直ぐに渡してもいいのですが、折角ですから、お二人さん、少しワタクシの勝負に付き合って頂けませんか?」
フラウムは片手に持っていたバスケットボールを指で回しながらいう。
「えーっと、もしかしてバスケをするってことかな?」
クロロンは回ってるボールをみながら聞くと、フラウムはボールの回転を止め、地面に弾ませてキャッチして答える。
「ええ、そうですわ」
「ぼくボールを使った運動苦手だな……」
「わたしもあまりやったことないな」
クロロンは「あはは」と頬を掻きながら答える。
「マンガなら読んだことあるけど」
「あのダンクするやつ?」
「うん」
わたしも経験はないけど、同じくマンガならしってるよ!
「まあ、勝負と云っても、ワタクシからこのボールを奪うことが出来たらいいですわ」
腕で華麗にボールを回しながら、説明する。
「きのせさんから奪うってなかなか難しいね」
「でしたら、お二人を舐めている訳ではありませんが、身体強化魔法や攻撃魔法を使ってきてもいいですわよ」
自身のないわたしたちにハンデをくれた。
「わ、わかった。 でも、さすがに攻撃魔法は危ないから身体強化とケガをしない魔法にするよ」
「そうだね」
わたしとクロロンはお互いの顔をみて、頷き合う。
「では、始める前に準備体操はしっかりしてください。 いきなり激しい運動をすると危ないですからね」
「うん」
「わかった」
わたしたちはクッシンをしたり、手足をブラブラと振ったりして、ケガをしないようにしっかりと準備運動をする。
「よし! 準備完了だね!」
「いろのさんは身体強化はいつ使うかな?」
クロロンはわたしに作戦を聞いてくる。
「そういえば、そうだったねクロロンはどうするの?」
逆に聞き返す形になっちゃったけど、すこし考える仕草をして答えてくれる。
「様子をみてから使いたいところだけど、体力に自信がないから、はじめに使ってホンキでボールをとりに行こうと思うよ。 それでスタミナがなくなっちゃったら回復するまですこしまってもう一度使ってみるね」
「じゃあ、わたしはクロロンの体力がなくなっちゃった後とか、スキがみえた時にタイミングをみて使うね」
「うん。 よろしくね」
「相手にする本人の前で作戦会議とはまる聞こえですわよ」
「あっ!」
わたしとクロロンはお互いにハッとする。 それをみたフラウムは呆れた感じで返す。
「お二人らしいですわね。 ですが、お二人のその抜けているところ好きですわよ」
そういうと、フラウムは手に持っていたボールを地面に弾ませる。
「さあ、そろそろ始めますわよ」
「よーし! いくよー! マックスダーイヘーンシン! シャキーーン!」
クロロンはそう叫ぶと、両手を斜めに構えて強化魔法をかけた。 それをみたフラウムはポカーンとした表情を浮かべ、一瞬、動きを止めた。
「いまだ!」
「!」
わたしはすかさずボールに触れようとしたけど、すぐに正気を取り戻したフラウムが華麗にかわした。
「危なかったですわ……まさか、いきなりボールを取られそうになるとは、中々いい作戦ですわ。 緑風さん」
フラウムはクロロンを褒めるが、当の本人は一瞬ナニが起こったのか理解していなかったみたいだった。
「そ、そうだね~うん、ま、まさか、この作戦にすぐに対応しちゃうとはさ、さすがきのせさんだね~……」
理解したクロロンはすごい目を泳がせながら返す。
「嘘が御下手ですわね……まあ、気を取り直して行きますわよ」
体育館にボールの弾む音と靴を滑らせる音が響く。
わたしとクロロンは必至にボールに食らいついたけど、やはり触れること、ましてやフラウムの動きにも着いていくことが出来なかった。 なんとか二人で挟み込めてもまるで息をする様に股下にボールを潜らせて抜けたり、何度かシュートを決めていたので、シュートを打つ瞬間を狙ったらフェイントを華麗にされ、ゴールに直接いれようとしてジャンプしたところを二人でジャンプして止めようとしたら空中で体勢を変えて、わたしたちの空いた隙間からボールを投げて入れたり、どこかのマンガでみるようなダンクをきめられたりした。
「……わお」
「……ふつくしぃ」
こんなに何度もかわされ、美しくゴールを決められてしまうと、もうわたしたちは逆に手を叩いて感心してしまっていた。
「御二人さんもう終わりですの? 息があがってますわよ」
床に手をついて、息を切らしているわたしたちをフラウムが息ひとつ切らさずに眺める。
「はあ……はあ……フッ……きのせさん舐めてもらっちゃこまるよ」
「はあ……はあ……クロロン?」
わたしは床に手をつきながらクロロンをみる。
「ちょっとホンキを出そうかな」
「本気?」
「頼んだよ……もうひとりのぼく」
「え?」
そういうと、クロロンは途中から腰に巻いていた上着を自分の肩に巻き直した。
「ああ、後は任せときな」
「え?」
突然変なことを言い出したクロロンにわたしとフラウムは目を丸くする。
「クロロンどうしたの?」
「おれはクウタでありクウタじゃないぜ」
「あの、緑風さん?」
「おれは『ブラックウタ』封印されし闇の王だぜ」
「…………なるほど、そういう設定ってことですわね」
「あっそういうこと」
フラウムの言葉にわたしはなるほどと手をポンと叩く。
「つまり、クロロンはなんだかよくわからないけど魔王ごっこ的なのを始めたんだね」
「それはどうかな?」
「え?」
「おれは『ブラックウタ』だぜ」
「意地でも貫くんですわね」
「お遊びはここまでってところを思いしらせてやるぜ」
「負けフラグですわね」
「いくぜ! 速攻アタック『旋風突進』!」
高らかに技を叫ぶと、クロロンはフラウムにむかって走り出した。
「もらったぜ! 『シャイニングフラッシュ』!」
「『闇』って云ってるのに、輝きまくってますわね」
フラウムはツッコミながらも華麗にかわす。
「フン、あまいぜ! 『ウインド』!」
スカッ
「『ダブルウインド』!」
スカッ
「『ギャラクシーウインド』!」
スカッ
見事にすべてかわされてしまった。
「うあーーーなんでぇーー!」
クロロンは奇声を発しながら地面に手をついた。
あれ? よくよく考えてみたらこれってチャンスだよね?
「……よし」
ゆっくりとフラウムに近づく。
そお~っと
そお~っと
「万策尽きましたわね」
「それはどうかな?」
「今だ!」
わたしは一気にボール目掛けて手を伸ばす。
「甘いですわ」
「え!?」
振り返ったフラウムにあっさり避けられてしまった。
「これが緑風さんの作戦ってことぐらいお見通しですわよ」
「『風神の一撃! ゴッドウインドクラッシャー!』」
「え?」
フラウムの背後から突然クロロンの叫び声が聞こえてきたかと思ったらクロロンの手がボールに当たってフラウムの手から離れ高く宙を舞った。
「あれ?」
「しまった!」
ボールが宙を舞っているほんの数秒間わたしの世界がスローになる感覚がした。 スローになっているというか咄嗟にカラダが動いた感じかな?
一瞬なにが起こったのか理解していない感じのクロロンと予想だにしない事が起こって驚いているフラウムだったけど、二人は慌ててボールを取りに行こうとジャンプをしていた。
わたしも二人に続いて飛ぼうとしたけど、フラウムの身体能力には敵わないことはわかっていたから一瞬ためらったけど、ふと、ある方法を思いついてすぐにそれを行動に移した。
それは『すべての魔力を足にかけること』。そして、すぐにわたしは飛び上がった。
すると、フラウムたちより高く飛べて早くボールをキャッチすることに成功した!
「やった! やったよー!」
わたしは大喜びしたけど、あることを忘れていた。
「い、いろのさん着地は!?」
クロロンのすごく慌てた声にわたしはハッとなる。
「え? ああ!?」
すべての魔力を足にかけてしまったことで高く飛び過ぎてしまった。
「アカリさん!」
「うわあー!?」
わたしのカラダに重力がかかりわたしは地面目掛けて落下していく。
「ピュピュ―!」
クーが必至にわたしを掴んで飛ぼうとするけど、ダメみたい!
「ぶ、ぶつかるー!」
地面にぶつかる覚悟をしたわたしは目をつむる。
「うん?」
だけど、思ったよりも痛くなかった。
「あれ?」
そっと目を開けるとフラウムとクロロンがわたしを受け止めてくれていた。
「いろのさん大丈夫かな?」
「お怪我はありませんか?」
二人は地面に倒れていたけど、わたしの心配をしてくれる。
「あ、ありがとう二人こそケガないかな? それにクーもありがとう」
「ピュルーン」
わたしは二人の上から急いで降りる。
「助けた方を心配してどうするんですの?」
「そうだよ、いろのさんは今のぼくたちと違って『本物』なんだから」
「そうだったね」
クロロンの言葉になぜだか、また、『さみしさ』を感じる。
「ぼくなんかは、なにがあっても大丈夫だけど、いろのさんになにかあったら大変だからね」
「それはちがうよ!」
わたしは反射的に声をだす。
「え?」
「今回の行動はわたしがなにも考えずに起しちゃったけど、今のクロロンとフラウムが『造られた』存在だったとしても、わたしは今の二人は『本物』だと思ってるよ」
「……いろのさん」
「…………」
「だから、二人は変わらず、わたしの『トモダチ』だよ」
わたしの言葉を聞いて二人はお互いをみると、クスリと笑い、こちらに向き直った。
「まあ、アカリさんらしい考えですわね」
「そうだね、なんというかさすがって感じだね」
フラウムはホコリを払いながら立ち上がる。
「さて、話を戻しますが、ワタクシの負けですので約束通りこちらをお渡し致しますわ」
「あ、忘れてた」
フラウムから二つ目のカケラを受け取った。
「じゃあ、緑風さん後はお任せ致しますわね」
「うん、わかった」
「もう行っちゃうの?」
わたしがさみしそうにいうと、フラウムはやさしく笑顔をむけて答える。
「ええ、ほんの少しでも遊べて楽しかったですわ。 今度はぜひ『あちらのワタクシ』ともやってくださいね」
「うん、また『アナタ』ともやろうね」
わたしがそういうと、フラウムは微笑みながら消えていった。
「疲れたけど、たのしかったね」
クロロンは立ち上がりながらいう。
「うん、あまり他の人とカラダを使う遊びはやったことなかったからなんだか新鮮な気分だったよ」
「また、みんなともやりたいね」
「う……うん。 そうだ、次に行かないとね」
一瞬、クロロンが複雑そうな顔をした気がするけど、気のせいかな?
「つぎはもしかしてシアンかな?」
「すごい! よくわかったね! そうだよ、次はみっくんをさがしてみようか」
「シアンのいそうな場所かぁ」
シアンのいそうな場所を考えてみる。
シアンはいつもボーっとしていて、ちょっとなにを考えているかわからないけど、よく教室の窓から空をみていた気がするな。
もしかして、《空がみえる場所》かな? そして、空が《近い場所》といえば……
「《屋上》かな?」
「じゃあ、答えあわせに行こうか」
「うん」
わたしたちは体育館を後にすると屋上にむかった。
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家同士の思惑も重なり、騎士団長家の息子、宰相子息、魔術師団長の息子、幼なじみの侯爵子息、そして英雄騎士――
五人の若きエリートとのお見合いが次々と始まってしまう。
遠慮がちで控えめな性格は、この世界では珍しく、気づけば少しずつ距離を縮めていく彼ら。
異世界での恋愛に戸惑う日々。けれど出会いを重ねるたびに、私は少しずつ変わっていく――。
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異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
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手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
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