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本のマモノ編
46色 テークオーバー テイク2
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「ちっ…しっぱいか」
クロロンの声だけど、いつものすこし高めのかわいい声じゃなくて低くてどこか哀しそうな声だった。
「まあいい、さっきのカラダより何倍もマシだ」
「キミ、クウタくんから出てってくれないかな」
シーニはすこし怒りの混じった感じでいうけど、それを気にとめずクロロンは自身の左腕をみていた。
「お前、聞いているのか」
今度はカレシーニさんがいう。
「こいつ、腕を痛めてるな」
「え!?」
突然の言葉にわたしたちは驚く。
「しかも、『二回』な」
「二回だと?」
カレシーニさんが聞き返す。
「ああ、あの時、ワタシに拳を振るった時とその前だな」
「その前って……もしかして」
フラウムがなにかに気づき暗い顔になる。
「キサマを助けた時に腕をやったみたいだな」
「そんな……ワタクシのせいで」
「クロロンは腕をケガしてることを黙ってたの?」
なぜ黙っていたのか分からず聞く。
「きっと、フウムちゃんが気に病まないようにいわなかったんだね」
クロロンは右手で左手首を掴む。すると、そこから白い光がでる。
「なに!?」
それをみたカレシーニさんは驚きの声をあげる。
「まあ、こんなもんだろ」
クロロンは手首を振って確かめるようにいう。
「あれって……!?」
「『治癒魔法』か」
「クウタくんって治癒魔法が使えたの!?」
シーニも驚いてカレシーニさんに問いかける。
「いや、恐らく奴の『魂』、つまり、『本体』の魔法《チカラ》だ」
カレシーニさんは冷や汗を垂らしながら「厄介なことになったな」と呟く。
「しっぱいかと思ったが、ワタシとしては満足のいくカラダだ。 まさか、魔力量が高いとはな。 瞬間的とはいえ、あの速さをだせたのも納得がいく」
両手を握って開く動きをしてカラダの調子を確かめている。
「我が半身とまではいかないがかなりなじむな」
「アオイ、最悪の場合を想定する必要があるかもしれない」
カレシーニさんは刀の鍔を押してカチャリと音をたてる。
「まさか!斬る気じゃないよね!?」
シーニはそれを全力で止める。
「まだ決まった訳じゃない、そうならないようにするんだ」
「わかったよ」
シーニは頷くとクロロンに問いかける。
「キミおとなしくする気はないのかな?」
「その気がないからこうなっているんだがな」
「だよね」
答えを聞くと、シーニは苦笑いしながら杖を構え直した。
「なら、仕方ないね」
「アオイ、くるぞ」
カレシーニさんがそういった直後、クロロンが姿を消して、次の瞬間にカレシーニさんの背後に姿を現す。
「さっきまでの威勢はどうした?」
「!?」
クロロンはカレシーニさんに蹴りをいれる。 カレシーニさんはそれをギリギリのところで刀を盾する。
「ぐうっ!」
しかし、すこし飛ばされてしまう。
「さっきより速い!」
「全くみえませんでしたわ……」
シーニとフラウムが驚く。
「それにパワーも上がったように感じますわ」
「上出来だ……素晴らしい……ワタシの魔力をここまで引き出せるとは気に入ったぞ!」
クロロンは嬉しそうに笑う。
「ワタクシの時は魔力《チカラ》が弱かったのに、全く本気じゃなかったってことですのね……」
フラウムは悔しそうに唇を噛みしめる。
「クロロンってあんなに魔力が高かったの?」
「カラダがついていかなかったのと、あまり魔法が得意じゃなかったみたいだから、クウタくんが魔法を使うところなんて、あまりみなかったけどこんなにすごかったんだ……」
シーニも驚きを隠せないみたいだ。
「ポテンシャルが高かったということか」
片膝をついていたカレシーニさんは立ち上がると、クロロンにむかって走り、刀を何度も振りかざす。 それをクロロンは余裕の表情でよける。 シーニもサポートのために魔弾などを放つが消されてしまう。
「無作為に撃ってもダメか……」
カレシーニさんは飛びあがり刀を振りかざす。 すると、クロロンは左手を前にかざした。
「スナッチ!」
「!?」
カレシーニさんの手から刀が消えクロロンの手に渡った。 そして、そのまま刀を横に振り、カレシーニさんのカラダに当たり鈍い音が鳴る。
「がっ……!」
そのまま振りきり、カレシーニさんを飛ばし、床を転がる。
「マコト!!」
「ぐう……!」
カレシーニさんは呻き声をあげて立ち上がれない。
「油断したな、攻撃したのにその武器を奪われて反撃にあうとは」
「……それはどうかな?」
カレシーニさんは倒れながらニヤリと笑う。
「なに?」
すると、クロロンの持っていた刀が光だした。
「なに!? ぐああ!!」
クロロンは慌てて刀を放して、ガチャンと音をたてて地面に落ちる。
「これはまさか!?」
「油断したな、俺の武器は奪われることを想定して魔除の魔法を付与してあるんだ」
「小賢しいマネを!!」
クロロンは怒りの表情でカレシーニさんを睨みつける。
「余裕だった顔が崩れたな」
クロロンは右手を押さえると白い光をだす。
「なるほど、マモノが魔除を付与したモノに触れるとダメージありか」
カレシーニさんはよろよろと立ち上がりながら、分析する。
「くそ……余計な魔力を消費した」
「ということは、魔力量に上限があるってことだね」
「さすがにそうでなくちゃ困る」
クロロンは後ろに飛び退き距離をとる。
「ふざけている余裕はないかもしれないな」
「!?」
クロロンのカラダが緑と赤の二色が包む。 そして、左手を前にだした。 それをみたカレシーニさんは慌ててわたしたちにむかって叫ぶ。
「お前ら逃げろ!!!」
「ウラガーノ!!」
クロロンが魔法を唱えると魔空間内に大きな竜巻が発生した。
「う、うそでしょ!?」
突然の大きな魔法にシーニの顔がひきつる。
「ワタシを閉じ込めたつもりだったんだろうが逆に袋の鼠だな」
クロロンのいう通り、わたしたちは魔空間の中にいて逃げ場はなかった。
「……魔空間を解除するしかないかもね」
シーニは真剣な表情でいう。
「ダメだ」
しかし、それをカレシーニさんが止める。
「な!? なんでさ!? このままじゃみんなが危ないんだよ」
「恐らく、奴の目的はそれだ」
「!?」
「魔空間を解除させて逃げる気だ」
「で、でも! みんなを危険に晒すぐらいなら今回は見逃して」
「その後の被害はどうする気だ」
「なっ!?」
「ここにいる数人と外の数えきれない人達のへの被害どっちが重い」
カレシーニさんの言葉にシーニは黙って俯いてしまう。
「……見損なったよ」
「!?」
シーニは俯きながら静かな声で言葉を続ける。
「……キミの云いたいことは分かるよ……キミは市民の平和を守らないといけないからね……キミは誰よりも正義感の強い人だってことも理解してるよ……だけど、それだけじゃないんだよ……数の問題じゃないんだよ……大切な家族と友達を犠牲にして守ったモノなんてなんも意味がないんだよ!」
シーニは肩を揺らし堪えるようにいう。
「………」
カレシーニさんはなにもいわなかった。
「……シーニ」
わたしはシーニをみるとシーニはこっちに笑顔をむける。
「大丈夫だよ。 わたしがみんなを守るからね」
そういうと、シーニは杖を構えて魔法を唱える。
「メイク!」
わたしたちの前に魔法で作られた大きな壁が現れて竜巻を防いでくれた。
「なるほど、そうきたか。 だが、いつまでもつかな?」
壁の向こうのクロロンがいう通り、シーニの作った壁にヒビがはいる。
「……くっ!」
シーニは苦しそうに耐えていた。
……どうしよう……どうしよう……わたしがいるせいで、シーニたちの邪魔をしちゃっている……なんとかしないと! でも、わたしになにができる? なにをすればいいの? だけど、ここにいるので無傷なのはわたしだけなんだし、わたしがなんとかしないと……わたしにチカラがあれば、フラウムの助けに入れて、フラウムが足をケガすることもなかったし、カレシーニさんとシーニと一緒に戦えたし、クロロンがマモノに乗っ取られることもなかったかもしれない……どうしようどうしようどうしよう……考えれば考えるほどわからなくなる……『あの時のチカラ』が自由に使えたら……
あれ? たしか、あの時も似た『状況』だった気がする。 場所と人は違えど『竜巻』に追い詰められている。
もしかしたら……
ビキッ!
「!?」
ヒビの音で正気に戻るとさっきよりも大きなヒビができていて、今にも砕け散りそうだった。
「クッソッ……!」
シーニが言葉を噛み締めた瞬間、瓦礫が崩れるような音と共に壁が砕け散ってしまった……。 そのまま竜巻が姿を現す。 わたしは反射的に右手を前にだしていた。
「お願い! でてー!!」
祈りを込めて叫んだ。
すると、わたしの右手が輝いて、周りがドーム状の空間に包まれた。
「ナニ!?」
クロロンは驚きの声をだした。
「や、やったー! だせたよ!」
わたしは嬉しくて叫んでしまった。
「なんだ!? これは!?」
「これは……『あの時』の……」
カレシーニさんはものすごく驚いていた。 シーニも目を見開いていたけど、一度みたことあるから、あまり驚いていなかった。
「アカリさんこれは一体?」
「わたしもよくわからないけど、とにかくみんなを守ってみせるよ!」
わたしは「えいっ」と気合をいれて、もう一度チカラを込めると竜巻を押し返す。
「よし! このまま押し返すよ!」
このまま意気込んでいると、
突然、竜巻が消えた。
「ありゃあ!?」
「!?」
突然の出来事にマヌケな声をだしてしまった。
「やめだ」
「え?」
どういうこと? やめるって、攻撃をやめてくれるってこと?
わたしが脳内パニックを起こしていると、クロロンはこちらに歩いてくる。
「止まれ!」
カレシーニさんは近づいてきたクロロンに刀をむける。
「どういうつもりだ?」
険しい表情のままいう。
「キサマ達と争うのをやめるだけだ」
「なに!?」
カレシーニさんは驚き目を見開く。
「それを信じるとでも思うのか?」
「なら、殺されたいのか? ワタシとこのままやりあって勝てるとでも思っているのか?」
「なんだと?」
「それに、そこのアホ面のいかにもバカそうな女」
わたしは誰のことをいっているのか分からなくてキョロキョロするけど、なぜかみんなからの視線を感じる。
「…………あれ? もしかしてわたしのこと?」
目を丸くしてしまう。
「お前以外に誰がいる?」
「あったしかに!」
「認めちゃうんだね」
もう一度周りをみて、納得してしまったわたしにシーニが軽くツッコム。
「お前、あのチカラをまだコントロール出来ていないようだな」
「そ、そうだね」
たしかに、とっさにだしたから全然コントロールはできないかも……
「チカラを使いこなせていない奴とやったところで勝敗はみえている。 だから、もうやめにすることにしただけだ」
「本当にそれだけか?」
カレシーニさんはまだ警戒している。
「このマヌケ面のチカラを『見たからやめた』ようにみえたが」
わたしってそんなにバカっぽい顔してるのかな?
「答えるとで……えっと、たぶんですけど、彼のいうこと信じてみてもいいかもしれません」
「え?」
突然、聞き覚えのある声と喋り方になってわたしたちはポカンとした。
クロロンの声だけど、いつものすこし高めのかわいい声じゃなくて低くてどこか哀しそうな声だった。
「まあいい、さっきのカラダより何倍もマシだ」
「キミ、クウタくんから出てってくれないかな」
シーニはすこし怒りの混じった感じでいうけど、それを気にとめずクロロンは自身の左腕をみていた。
「お前、聞いているのか」
今度はカレシーニさんがいう。
「こいつ、腕を痛めてるな」
「え!?」
突然の言葉にわたしたちは驚く。
「しかも、『二回』な」
「二回だと?」
カレシーニさんが聞き返す。
「ああ、あの時、ワタシに拳を振るった時とその前だな」
「その前って……もしかして」
フラウムがなにかに気づき暗い顔になる。
「キサマを助けた時に腕をやったみたいだな」
「そんな……ワタクシのせいで」
「クロロンは腕をケガしてることを黙ってたの?」
なぜ黙っていたのか分からず聞く。
「きっと、フウムちゃんが気に病まないようにいわなかったんだね」
クロロンは右手で左手首を掴む。すると、そこから白い光がでる。
「なに!?」
それをみたカレシーニさんは驚きの声をあげる。
「まあ、こんなもんだろ」
クロロンは手首を振って確かめるようにいう。
「あれって……!?」
「『治癒魔法』か」
「クウタくんって治癒魔法が使えたの!?」
シーニも驚いてカレシーニさんに問いかける。
「いや、恐らく奴の『魂』、つまり、『本体』の魔法《チカラ》だ」
カレシーニさんは冷や汗を垂らしながら「厄介なことになったな」と呟く。
「しっぱいかと思ったが、ワタシとしては満足のいくカラダだ。 まさか、魔力量が高いとはな。 瞬間的とはいえ、あの速さをだせたのも納得がいく」
両手を握って開く動きをしてカラダの調子を確かめている。
「我が半身とまではいかないがかなりなじむな」
「アオイ、最悪の場合を想定する必要があるかもしれない」
カレシーニさんは刀の鍔を押してカチャリと音をたてる。
「まさか!斬る気じゃないよね!?」
シーニはそれを全力で止める。
「まだ決まった訳じゃない、そうならないようにするんだ」
「わかったよ」
シーニは頷くとクロロンに問いかける。
「キミおとなしくする気はないのかな?」
「その気がないからこうなっているんだがな」
「だよね」
答えを聞くと、シーニは苦笑いしながら杖を構え直した。
「なら、仕方ないね」
「アオイ、くるぞ」
カレシーニさんがそういった直後、クロロンが姿を消して、次の瞬間にカレシーニさんの背後に姿を現す。
「さっきまでの威勢はどうした?」
「!?」
クロロンはカレシーニさんに蹴りをいれる。 カレシーニさんはそれをギリギリのところで刀を盾する。
「ぐうっ!」
しかし、すこし飛ばされてしまう。
「さっきより速い!」
「全くみえませんでしたわ……」
シーニとフラウムが驚く。
「それにパワーも上がったように感じますわ」
「上出来だ……素晴らしい……ワタシの魔力をここまで引き出せるとは気に入ったぞ!」
クロロンは嬉しそうに笑う。
「ワタクシの時は魔力《チカラ》が弱かったのに、全く本気じゃなかったってことですのね……」
フラウムは悔しそうに唇を噛みしめる。
「クロロンってあんなに魔力が高かったの?」
「カラダがついていかなかったのと、あまり魔法が得意じゃなかったみたいだから、クウタくんが魔法を使うところなんて、あまりみなかったけどこんなにすごかったんだ……」
シーニも驚きを隠せないみたいだ。
「ポテンシャルが高かったということか」
片膝をついていたカレシーニさんは立ち上がると、クロロンにむかって走り、刀を何度も振りかざす。 それをクロロンは余裕の表情でよける。 シーニもサポートのために魔弾などを放つが消されてしまう。
「無作為に撃ってもダメか……」
カレシーニさんは飛びあがり刀を振りかざす。 すると、クロロンは左手を前にかざした。
「スナッチ!」
「!?」
カレシーニさんの手から刀が消えクロロンの手に渡った。 そして、そのまま刀を横に振り、カレシーニさんのカラダに当たり鈍い音が鳴る。
「がっ……!」
そのまま振りきり、カレシーニさんを飛ばし、床を転がる。
「マコト!!」
「ぐう……!」
カレシーニさんは呻き声をあげて立ち上がれない。
「油断したな、攻撃したのにその武器を奪われて反撃にあうとは」
「……それはどうかな?」
カレシーニさんは倒れながらニヤリと笑う。
「なに?」
すると、クロロンの持っていた刀が光だした。
「なに!? ぐああ!!」
クロロンは慌てて刀を放して、ガチャンと音をたてて地面に落ちる。
「これはまさか!?」
「油断したな、俺の武器は奪われることを想定して魔除の魔法を付与してあるんだ」
「小賢しいマネを!!」
クロロンは怒りの表情でカレシーニさんを睨みつける。
「余裕だった顔が崩れたな」
クロロンは右手を押さえると白い光をだす。
「なるほど、マモノが魔除を付与したモノに触れるとダメージありか」
カレシーニさんはよろよろと立ち上がりながら、分析する。
「くそ……余計な魔力を消費した」
「ということは、魔力量に上限があるってことだね」
「さすがにそうでなくちゃ困る」
クロロンは後ろに飛び退き距離をとる。
「ふざけている余裕はないかもしれないな」
「!?」
クロロンのカラダが緑と赤の二色が包む。 そして、左手を前にだした。 それをみたカレシーニさんは慌ててわたしたちにむかって叫ぶ。
「お前ら逃げろ!!!」
「ウラガーノ!!」
クロロンが魔法を唱えると魔空間内に大きな竜巻が発生した。
「う、うそでしょ!?」
突然の大きな魔法にシーニの顔がひきつる。
「ワタシを閉じ込めたつもりだったんだろうが逆に袋の鼠だな」
クロロンのいう通り、わたしたちは魔空間の中にいて逃げ場はなかった。
「……魔空間を解除するしかないかもね」
シーニは真剣な表情でいう。
「ダメだ」
しかし、それをカレシーニさんが止める。
「な!? なんでさ!? このままじゃみんなが危ないんだよ」
「恐らく、奴の目的はそれだ」
「!?」
「魔空間を解除させて逃げる気だ」
「で、でも! みんなを危険に晒すぐらいなら今回は見逃して」
「その後の被害はどうする気だ」
「なっ!?」
「ここにいる数人と外の数えきれない人達のへの被害どっちが重い」
カレシーニさんの言葉にシーニは黙って俯いてしまう。
「……見損なったよ」
「!?」
シーニは俯きながら静かな声で言葉を続ける。
「……キミの云いたいことは分かるよ……キミは市民の平和を守らないといけないからね……キミは誰よりも正義感の強い人だってことも理解してるよ……だけど、それだけじゃないんだよ……数の問題じゃないんだよ……大切な家族と友達を犠牲にして守ったモノなんてなんも意味がないんだよ!」
シーニは肩を揺らし堪えるようにいう。
「………」
カレシーニさんはなにもいわなかった。
「……シーニ」
わたしはシーニをみるとシーニはこっちに笑顔をむける。
「大丈夫だよ。 わたしがみんなを守るからね」
そういうと、シーニは杖を構えて魔法を唱える。
「メイク!」
わたしたちの前に魔法で作られた大きな壁が現れて竜巻を防いでくれた。
「なるほど、そうきたか。 だが、いつまでもつかな?」
壁の向こうのクロロンがいう通り、シーニの作った壁にヒビがはいる。
「……くっ!」
シーニは苦しそうに耐えていた。
……どうしよう……どうしよう……わたしがいるせいで、シーニたちの邪魔をしちゃっている……なんとかしないと! でも、わたしになにができる? なにをすればいいの? だけど、ここにいるので無傷なのはわたしだけなんだし、わたしがなんとかしないと……わたしにチカラがあれば、フラウムの助けに入れて、フラウムが足をケガすることもなかったし、カレシーニさんとシーニと一緒に戦えたし、クロロンがマモノに乗っ取られることもなかったかもしれない……どうしようどうしようどうしよう……考えれば考えるほどわからなくなる……『あの時のチカラ』が自由に使えたら……
あれ? たしか、あの時も似た『状況』だった気がする。 場所と人は違えど『竜巻』に追い詰められている。
もしかしたら……
ビキッ!
「!?」
ヒビの音で正気に戻るとさっきよりも大きなヒビができていて、今にも砕け散りそうだった。
「クッソッ……!」
シーニが言葉を噛み締めた瞬間、瓦礫が崩れるような音と共に壁が砕け散ってしまった……。 そのまま竜巻が姿を現す。 わたしは反射的に右手を前にだしていた。
「お願い! でてー!!」
祈りを込めて叫んだ。
すると、わたしの右手が輝いて、周りがドーム状の空間に包まれた。
「ナニ!?」
クロロンは驚きの声をだした。
「や、やったー! だせたよ!」
わたしは嬉しくて叫んでしまった。
「なんだ!? これは!?」
「これは……『あの時』の……」
カレシーニさんはものすごく驚いていた。 シーニも目を見開いていたけど、一度みたことあるから、あまり驚いていなかった。
「アカリさんこれは一体?」
「わたしもよくわからないけど、とにかくみんなを守ってみせるよ!」
わたしは「えいっ」と気合をいれて、もう一度チカラを込めると竜巻を押し返す。
「よし! このまま押し返すよ!」
このまま意気込んでいると、
突然、竜巻が消えた。
「ありゃあ!?」
「!?」
突然の出来事にマヌケな声をだしてしまった。
「やめだ」
「え?」
どういうこと? やめるって、攻撃をやめてくれるってこと?
わたしが脳内パニックを起こしていると、クロロンはこちらに歩いてくる。
「止まれ!」
カレシーニさんは近づいてきたクロロンに刀をむける。
「どういうつもりだ?」
険しい表情のままいう。
「キサマ達と争うのをやめるだけだ」
「なに!?」
カレシーニさんは驚き目を見開く。
「それを信じるとでも思うのか?」
「なら、殺されたいのか? ワタシとこのままやりあって勝てるとでも思っているのか?」
「なんだと?」
「それに、そこのアホ面のいかにもバカそうな女」
わたしは誰のことをいっているのか分からなくてキョロキョロするけど、なぜかみんなからの視線を感じる。
「…………あれ? もしかしてわたしのこと?」
目を丸くしてしまう。
「お前以外に誰がいる?」
「あったしかに!」
「認めちゃうんだね」
もう一度周りをみて、納得してしまったわたしにシーニが軽くツッコム。
「お前、あのチカラをまだコントロール出来ていないようだな」
「そ、そうだね」
たしかに、とっさにだしたから全然コントロールはできないかも……
「チカラを使いこなせていない奴とやったところで勝敗はみえている。 だから、もうやめにすることにしただけだ」
「本当にそれだけか?」
カレシーニさんはまだ警戒している。
「このマヌケ面のチカラを『見たからやめた』ようにみえたが」
わたしってそんなにバカっぽい顔してるのかな?
「答えるとで……えっと、たぶんですけど、彼のいうこと信じてみてもいいかもしれません」
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突然、聞き覚えのある声と喋り方になってわたしたちはポカンとした。
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