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逃亡者マル編
55色 丸内林檎の潜入捜査
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警察署内に入ると、かなり慌ただしい感じだった。
署内の人達は様々な事件の捜査をしていたり、報告書の様なものを書いているようだった。 私の事件とは関係ない会話がちらほらと聞こえていたが、ふと、ある会話が耳に入ってきた。
「糸池刑事の事件聞いたか?」
(!?)
私はその会話に耳を傾ける。 黒崎さんも気付いたようで、壁に貼ってある書類を見るフリをして会話を聞く。
「なにかあったのか?」
「容疑者に逃げられたらしいんだ」
「マジかよ」
「ああ、マジらしい」
「その逃げた容疑者はどこのどいつなんだ」
(ここのこいつですね)
なんて思いながら続きを聞く。
「その容疑者は、なんと、セーラン商店街の八百屋の娘らしいぞ」
「え!? セーラン商店街の八百屋って確か、探偵事務所がある所だよな?」
「ああ、容疑者はまさかの丸内夏日の孫娘だそうだ」
「マジかよ……」
丸内夏日とは、私のおじいちゃんのことです。 おじいちゃんは探偵事務所をやっていて、私もたまに仕事を手伝ったりしています。 そして、探偵の腕を見込まれて、このセーラン警察署の事件をいくつか解決をしたりしている巷ではそこそこ有名な名探偵です。
「ある意味すごい人物が容疑者になったな」
「だが、本当にその孫娘が犯人なのか?」
(!?)
私は予想外の言葉に驚く。
「なんでだ?」
「だって、あの丸内夏日の孫娘だぞ」
(アナタは私の何を知っているのでしょうか?)
見ず知らずの人にそんなことを云われるのが、少し気味が悪かったので、一発引っ叩いてやろうとこっそり近づくと次の言葉で手を止める。
「確かに、おかしいよな」
「お前も思うか?」
「ああ、糸池刑事の最近の動向、多分だけど、《アレ》を狙ってるんじゃないか?」
《アレ》? 私は見当がつかずに考えていると、黒崎さんがイヤホン越しに「なるほどな、場所を変えるぞ」と云って、そのままその場所を離れて行ってしまったので私は慌てて追いかける。
黒崎さんはしばらく何も云わずに歩いていき、人があまり寄り付かなそうな階段の下にある、椅子など物置の様に扱われている部屋に入り、立ち止まる。
「ここなら大丈夫だろう。 一度スイッチを切ってもいいぞ」
黒崎さんに云われ、私はキーホルダーのスイッチを切って姿を現す。 それを確認した黒崎さんは積まれている椅子に腰掛けると話を切り出す。
「大方、奴の目的が分かったな」
「《アレ》というやつですね。 それは一体なんのことでしょうか?」
私は先程二人の男性が話していたことを聞く。
「アレとは恐らく、『授賞式』のことだな」
「授賞式ですか?」
私の問いに黒崎さんは「ああ」頷き続ける。
「数週間後に署内で行われる年に一度の成果発表の場とでも言っておこう」
「つまり、動機は授賞をされたくて事件解決の数を稼ぎたいと……」
「可能性は高いだろうな」
「それだけでしょうか?」
私は何かが引っ掛かり、左手で顎を触り考えていると、黒崎さんが何かに気づき椅子から降りる。
「丸内、姿を隠せ」
「え?」
「誰か来る」
「!?」
黒崎さんに云われ、私は慌ててキーホルダーのスイッチを入れて姿を隠し、念の為積まれている椅子の後ろに隠れる。 黒崎さんも同様に椅子の後ろに隠れた。
「黒崎さんも隠れるんですか?」
私が問いかけると、黒崎さんは姿は見えていないけど声のした場所に返す。
「用もないのに一人で物置にいたら怪しまれるだろ」
「確かに」
何て話していると物置のドアが開かれて誰かが入ってきた。
「……」
「……」
私達は息を潜める。
コツンッコツンっと靴の音がこっちに近付いてくる。
黒崎さんは腰に掛けてある刀を持ち、場合によっては実力行使に出るみたいだ。
「…………」
「…………」
足音が私達の近くで止まり、黒崎さんは覚悟を決めたのか飛び出そうとしていた。 次の瞬間、足音の人物が口を開いた。
「隠れなくてもいいのじゃよ」
「!?」
あれ? この声と独特な喋り方はもしかして!?
黒崎さんも気付いたのか、驚きながら声の主を確認する。
そこには長い桃色の髪を腰まで伸ばしているホウキを持った女性がいた。
「桃山!」
黒崎さんは立ち上がり女性に語りかける。
「なんでお前がここにいる?」
「まあ、ちょっとした用じゃ」
「用?」
黒崎さんの問いかけに、のじゃ魔女さんは答える。
「シーニさんの使いじゃ」
「アオイの?」
のじゃ魔女さんの言葉に黒崎さんは頭にハテナを浮かべる。
「シーニさんの魔道具を署に運送してきたんじゃ」
「ああ、そういうことか」
その返しに黒崎さんはすぐに納得する。
「それとリンゴさんや姿を消さなくてもよいのじゃ」
「!?」
突然、のじゃ魔女さんが見えていないはずの私に話かけてきて私は驚いた。
「見えているんですか!?」
私はキーホルダーのスイッチを切って姿を現すと、のじゃ魔女さんに聞く。
「はっきりと見えている訳ではないのじゃが、わたしゃの『魔力感知』を少し強めに使っているからのう」
私の問にのじゃ魔女さんは説明してくれる。
「さすがだな。 署の魔力センサーには反応しない程、『魔力を遮断』出来るとアオイが豪語していたのにな」
黒崎さんは「フッ」と笑う。
「つまり警察署のセンサーは《ザル》ということですか?」
「……いうな」
黒崎さんはバツが悪そうにいう。
「……そういうわけではないが……いうな」
「まあ、自分でいうのもなんじゃが、わたしゃが魔力感知の精度が高いからってのもあるのじゃ」
のじゃ魔女さんはフォローをいれる。
「ところで、のじゃ魔女さん」
「桜子じゃ」
私は彼女に聞きたいことがあり呼ぶが、咄嗟に名前が出てこなかったので、私の勝手につけた名前で呼んでしまい軽く突っ込まれてしまった。
「まあ、よく呼ばれるピンコでいいのじゃ」
「では、のじゃピンさん」
「のじゃはいらんのじゃ」
「アナタは私達を探していた感じですか?」
「話を進めやがった」
「ほう、よくわかったのう」
私の問いに、のじゃピンさんは少し驚く。
「そうなのか?」
「ああ、そうじゃな」
のじゃピンさんは頷くと言葉を続ける。
「シーニさんの使いで、ここに魔道具を運送しておる時じゃった。 お主が容疑者として追われておるという噂を聞いてのう」
「話がかなり広がっているみたいですね」
「それと、もうひとつ《魔導警察の黒崎誠が容疑者を逃がした》と噂も流れておった」
「俺は逃がしてないがな」
「噂というのは尾がつくものですよ」
溜息をつく黒崎さんに私はフォローをいれる。
「それでもしかしたらと思って、お主の魔力を探してみたら《ココ》に辿りついたというわけじゃ」
のじゃピンさんは一通り説明を終える。
「なるほどな、だが、一度場所を変える必要がありそうだな。 もしかしたら2人の人間が倉庫に入っていったのを見られていたらマズイからな」
「いや、その必要はないのじゃ」
「なに?」
「軽く倉庫の近くに置いてあった掃除中の看板に《ここにはなにもない》という《念》を込めてきたから誰も近づくことはないのじゃ。 まあ、分かりやすくいえば《マインドコントロール》じゃな」
「つまり《洗脳》ということですか?」
「似たようなもんじゃな」
黒崎さんは少し怪訝な顔をしたが、溜息を吐く。
「本来、他者への《洗脳行為を禁ずる》という魔導法があるが、今回ばかりは見逃そう」
「話の通じる方で何よりじゃ」
「やむを得ない場合によるが次は気をつけろよ」
黒崎さんは、のじゃピンさんを咎めると「さて」と言葉を続ける。
「桃山、ここにきたということは《協力する》ということでいいんだな?」
「まあ、そうじゃのう。 わたしゃもそのつもりでお主を探しておったからのう」
「なら、お前にも経緯を話しておく」
「では、私から話しますね」
私は今何故追われているのかという経緯を話す。 そして、のじゃピンさんも少し情報をくれた。
「なるほどのう、今あるだけの情報をまとめると糸池刑事の出世のダシにされそうということじゃのう」
「ですが、まだ憶測に過ぎません。 なので、もう少し調べてみないと」
「どっちにしろ冤罪と分かっていての行動だ。 警察としても魔導警察としても用語できん」
黒崎さんはバッサリと切り捨てる。
「相変わらず正義感のお強いお方じゃのう」
「さて、これからどうする?」
話を一通りまとめた黒崎さんが私に聞く。
「そうですね。 正直にいうと、もう一度現場をしっかりと見ないと結論は出せませんね」
「じゃが、それは難しいんじゃないかのう?」
のじゃピンさんの言葉を黒崎さんが「いや」と遮る。
「そういうと思って、上から許可をもらっている」
黒崎さんはそういうと懐から端末を取り出し画面を見せる。
「それは?」
「上からの情報共有をする為のモノだ」
「その気の回しを普段からして欲しいものじゃのう」
のじゃピンさんは溜息混じりにいうと黒崎さんは「ふん」と返す。
「どうするんだ? 行くのか? 行かないのか?」
黒崎さんは私に高圧的に聞いてくるが、私の答えは決まっています。
「当然行きます」
私はすぐさま行こうとしてキーホルダーのスイッチを入れようとするが、キーホルダーの目の部分が赤く光っていた。
「おや? これは?」
「!? マズイな……」
それをみた黒崎さんは眉を顰める。
「充電切れだ」
「え!?」
言われたその言葉に私は驚く。
「正しくは、もう少しで切れるというサインだな」
「それはどのくらいですか?」
「恐らくだが、15分だな」
「15分ですか」
私は手を顎にあてて考える。
「ここから警察署の外に出るのに約5・6分、出てから署を離れるのに数分掛かると想定して長くて後5分程しか使えないですね。 これからのことを考えると厳しいですね」
少し唸りながら考える私にのじゃピンさんが溜息混じりにいう。
「まったく……そこはしっかりしといてほしいのじゃ……リンゴさんや、ちょいとそれを貸してくれぬか?」
「はい」
私はキーホルダーをのじゃピンさんに渡すと、彼女はそれを宙に浮かせて手に持っていたホウキを振りキーホルダーに魔力を注ぐ。
「まあ、応急処置じゃな。 さすがにフル充電をしてしまうと魔法の維持が出来んのとわたしゃの魔力がもたんから、すまんが一時間分じゃがいいかのう?」
「いえ、全然助かります。 一時間もあれば節約しながらなら十分です」
私はのじゃピンさんからキーホルダーを受け取る。
「すみません。 ついでと云ってはなんですが、もうひとつお願いしてもいいですか?」
「なんじゃ?」
「先程頂いた『情報』を変わりに『確認』してきてもらってもいいですか?」
私は先程教えて頂いた情報の真意が気になり頼んでみる。
「ここまで話をしたんだ断る訳ないよな?」
「いちいち勘にさわる言い方じゃのう……お主にいわれなくても助けるといったじゃろう」
のじゃピンさんは額に少し青筋をたてながら返す。
「それと合流してほしい人がいます」
私はのじゃピンさんにこの後の詳細を伝える。
署内の人達は様々な事件の捜査をしていたり、報告書の様なものを書いているようだった。 私の事件とは関係ない会話がちらほらと聞こえていたが、ふと、ある会話が耳に入ってきた。
「糸池刑事の事件聞いたか?」
(!?)
私はその会話に耳を傾ける。 黒崎さんも気付いたようで、壁に貼ってある書類を見るフリをして会話を聞く。
「なにかあったのか?」
「容疑者に逃げられたらしいんだ」
「マジかよ」
「ああ、マジらしい」
「その逃げた容疑者はどこのどいつなんだ」
(ここのこいつですね)
なんて思いながら続きを聞く。
「その容疑者は、なんと、セーラン商店街の八百屋の娘らしいぞ」
「え!? セーラン商店街の八百屋って確か、探偵事務所がある所だよな?」
「ああ、容疑者はまさかの丸内夏日の孫娘だそうだ」
「マジかよ……」
丸内夏日とは、私のおじいちゃんのことです。 おじいちゃんは探偵事務所をやっていて、私もたまに仕事を手伝ったりしています。 そして、探偵の腕を見込まれて、このセーラン警察署の事件をいくつか解決をしたりしている巷ではそこそこ有名な名探偵です。
「ある意味すごい人物が容疑者になったな」
「だが、本当にその孫娘が犯人なのか?」
(!?)
私は予想外の言葉に驚く。
「なんでだ?」
「だって、あの丸内夏日の孫娘だぞ」
(アナタは私の何を知っているのでしょうか?)
見ず知らずの人にそんなことを云われるのが、少し気味が悪かったので、一発引っ叩いてやろうとこっそり近づくと次の言葉で手を止める。
「確かに、おかしいよな」
「お前も思うか?」
「ああ、糸池刑事の最近の動向、多分だけど、《アレ》を狙ってるんじゃないか?」
《アレ》? 私は見当がつかずに考えていると、黒崎さんがイヤホン越しに「なるほどな、場所を変えるぞ」と云って、そのままその場所を離れて行ってしまったので私は慌てて追いかける。
黒崎さんはしばらく何も云わずに歩いていき、人があまり寄り付かなそうな階段の下にある、椅子など物置の様に扱われている部屋に入り、立ち止まる。
「ここなら大丈夫だろう。 一度スイッチを切ってもいいぞ」
黒崎さんに云われ、私はキーホルダーのスイッチを切って姿を現す。 それを確認した黒崎さんは積まれている椅子に腰掛けると話を切り出す。
「大方、奴の目的が分かったな」
「《アレ》というやつですね。 それは一体なんのことでしょうか?」
私は先程二人の男性が話していたことを聞く。
「アレとは恐らく、『授賞式』のことだな」
「授賞式ですか?」
私の問いに黒崎さんは「ああ」頷き続ける。
「数週間後に署内で行われる年に一度の成果発表の場とでも言っておこう」
「つまり、動機は授賞をされたくて事件解決の数を稼ぎたいと……」
「可能性は高いだろうな」
「それだけでしょうか?」
私は何かが引っ掛かり、左手で顎を触り考えていると、黒崎さんが何かに気づき椅子から降りる。
「丸内、姿を隠せ」
「え?」
「誰か来る」
「!?」
黒崎さんに云われ、私は慌ててキーホルダーのスイッチを入れて姿を隠し、念の為積まれている椅子の後ろに隠れる。 黒崎さんも同様に椅子の後ろに隠れた。
「黒崎さんも隠れるんですか?」
私が問いかけると、黒崎さんは姿は見えていないけど声のした場所に返す。
「用もないのに一人で物置にいたら怪しまれるだろ」
「確かに」
何て話していると物置のドアが開かれて誰かが入ってきた。
「……」
「……」
私達は息を潜める。
コツンッコツンっと靴の音がこっちに近付いてくる。
黒崎さんは腰に掛けてある刀を持ち、場合によっては実力行使に出るみたいだ。
「…………」
「…………」
足音が私達の近くで止まり、黒崎さんは覚悟を決めたのか飛び出そうとしていた。 次の瞬間、足音の人物が口を開いた。
「隠れなくてもいいのじゃよ」
「!?」
あれ? この声と独特な喋り方はもしかして!?
黒崎さんも気付いたのか、驚きながら声の主を確認する。
そこには長い桃色の髪を腰まで伸ばしているホウキを持った女性がいた。
「桃山!」
黒崎さんは立ち上がり女性に語りかける。
「なんでお前がここにいる?」
「まあ、ちょっとした用じゃ」
「用?」
黒崎さんの問いかけに、のじゃ魔女さんは答える。
「シーニさんの使いじゃ」
「アオイの?」
のじゃ魔女さんの言葉に黒崎さんは頭にハテナを浮かべる。
「シーニさんの魔道具を署に運送してきたんじゃ」
「ああ、そういうことか」
その返しに黒崎さんはすぐに納得する。
「それとリンゴさんや姿を消さなくてもよいのじゃ」
「!?」
突然、のじゃ魔女さんが見えていないはずの私に話かけてきて私は驚いた。
「見えているんですか!?」
私はキーホルダーのスイッチを切って姿を現すと、のじゃ魔女さんに聞く。
「はっきりと見えている訳ではないのじゃが、わたしゃの『魔力感知』を少し強めに使っているからのう」
私の問にのじゃ魔女さんは説明してくれる。
「さすがだな。 署の魔力センサーには反応しない程、『魔力を遮断』出来るとアオイが豪語していたのにな」
黒崎さんは「フッ」と笑う。
「つまり警察署のセンサーは《ザル》ということですか?」
「……いうな」
黒崎さんはバツが悪そうにいう。
「……そういうわけではないが……いうな」
「まあ、自分でいうのもなんじゃが、わたしゃが魔力感知の精度が高いからってのもあるのじゃ」
のじゃ魔女さんはフォローをいれる。
「ところで、のじゃ魔女さん」
「桜子じゃ」
私は彼女に聞きたいことがあり呼ぶが、咄嗟に名前が出てこなかったので、私の勝手につけた名前で呼んでしまい軽く突っ込まれてしまった。
「まあ、よく呼ばれるピンコでいいのじゃ」
「では、のじゃピンさん」
「のじゃはいらんのじゃ」
「アナタは私達を探していた感じですか?」
「話を進めやがった」
「ほう、よくわかったのう」
私の問いに、のじゃピンさんは少し驚く。
「そうなのか?」
「ああ、そうじゃな」
のじゃピンさんは頷くと言葉を続ける。
「シーニさんの使いで、ここに魔道具を運送しておる時じゃった。 お主が容疑者として追われておるという噂を聞いてのう」
「話がかなり広がっているみたいですね」
「それと、もうひとつ《魔導警察の黒崎誠が容疑者を逃がした》と噂も流れておった」
「俺は逃がしてないがな」
「噂というのは尾がつくものですよ」
溜息をつく黒崎さんに私はフォローをいれる。
「それでもしかしたらと思って、お主の魔力を探してみたら《ココ》に辿りついたというわけじゃ」
のじゃピンさんは一通り説明を終える。
「なるほどな、だが、一度場所を変える必要がありそうだな。 もしかしたら2人の人間が倉庫に入っていったのを見られていたらマズイからな」
「いや、その必要はないのじゃ」
「なに?」
「軽く倉庫の近くに置いてあった掃除中の看板に《ここにはなにもない》という《念》を込めてきたから誰も近づくことはないのじゃ。 まあ、分かりやすくいえば《マインドコントロール》じゃな」
「つまり《洗脳》ということですか?」
「似たようなもんじゃな」
黒崎さんは少し怪訝な顔をしたが、溜息を吐く。
「本来、他者への《洗脳行為を禁ずる》という魔導法があるが、今回ばかりは見逃そう」
「話の通じる方で何よりじゃ」
「やむを得ない場合によるが次は気をつけろよ」
黒崎さんは、のじゃピンさんを咎めると「さて」と言葉を続ける。
「桃山、ここにきたということは《協力する》ということでいいんだな?」
「まあ、そうじゃのう。 わたしゃもそのつもりでお主を探しておったからのう」
「なら、お前にも経緯を話しておく」
「では、私から話しますね」
私は今何故追われているのかという経緯を話す。 そして、のじゃピンさんも少し情報をくれた。
「なるほどのう、今あるだけの情報をまとめると糸池刑事の出世のダシにされそうということじゃのう」
「ですが、まだ憶測に過ぎません。 なので、もう少し調べてみないと」
「どっちにしろ冤罪と分かっていての行動だ。 警察としても魔導警察としても用語できん」
黒崎さんはバッサリと切り捨てる。
「相変わらず正義感のお強いお方じゃのう」
「さて、これからどうする?」
話を一通りまとめた黒崎さんが私に聞く。
「そうですね。 正直にいうと、もう一度現場をしっかりと見ないと結論は出せませんね」
「じゃが、それは難しいんじゃないかのう?」
のじゃピンさんの言葉を黒崎さんが「いや」と遮る。
「そういうと思って、上から許可をもらっている」
黒崎さんはそういうと懐から端末を取り出し画面を見せる。
「それは?」
「上からの情報共有をする為のモノだ」
「その気の回しを普段からして欲しいものじゃのう」
のじゃピンさんは溜息混じりにいうと黒崎さんは「ふん」と返す。
「どうするんだ? 行くのか? 行かないのか?」
黒崎さんは私に高圧的に聞いてくるが、私の答えは決まっています。
「当然行きます」
私はすぐさま行こうとしてキーホルダーのスイッチを入れようとするが、キーホルダーの目の部分が赤く光っていた。
「おや? これは?」
「!? マズイな……」
それをみた黒崎さんは眉を顰める。
「充電切れだ」
「え!?」
言われたその言葉に私は驚く。
「正しくは、もう少しで切れるというサインだな」
「それはどのくらいですか?」
「恐らくだが、15分だな」
「15分ですか」
私は手を顎にあてて考える。
「ここから警察署の外に出るのに約5・6分、出てから署を離れるのに数分掛かると想定して長くて後5分程しか使えないですね。 これからのことを考えると厳しいですね」
少し唸りながら考える私にのじゃピンさんが溜息混じりにいう。
「まったく……そこはしっかりしといてほしいのじゃ……リンゴさんや、ちょいとそれを貸してくれぬか?」
「はい」
私はキーホルダーをのじゃピンさんに渡すと、彼女はそれを宙に浮かせて手に持っていたホウキを振りキーホルダーに魔力を注ぐ。
「まあ、応急処置じゃな。 さすがにフル充電をしてしまうと魔法の維持が出来んのとわたしゃの魔力がもたんから、すまんが一時間分じゃがいいかのう?」
「いえ、全然助かります。 一時間もあれば節約しながらなら十分です」
私はのじゃピンさんからキーホルダーを受け取る。
「すみません。 ついでと云ってはなんですが、もうひとつお願いしてもいいですか?」
「なんじゃ?」
「先程頂いた『情報』を変わりに『確認』してきてもらってもいいですか?」
私は先程教えて頂いた情報の真意が気になり頼んでみる。
「ここまで話をしたんだ断る訳ないよな?」
「いちいち勘にさわる言い方じゃのう……お主にいわれなくても助けるといったじゃろう」
のじゃピンさんは額に少し青筋をたてながら返す。
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