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ひと夏の思い出編
111色 リゾートに隠れた森
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ホテルのロビーを後にしたわたしゃたちは、早速、ノワさんの捜索に移る。
「で、見つかりそうか」
前を歩いていたマコトさんが足を止め聞いてくる。
「まさかのノープランじゃったのか?」
マコトさんのまさかの発言にわたしゃは眼を見開いて驚く。 しかし、そんなことお構いなしに彼は言葉を続ける。
「お前がナニか策があるんだろう」
「他力本願じゃのう」
「カッコつけて出てきといて、それってダサすぎるでしょ」
わたしゃとシーニさんはマコトさんに白い眼を向ける。
「まあ、とにかく、わたしゃにできることをやるかのう」
「なにか手があるの?」
「『魔力感知』じゃ」
シーニさんの問に答えると、早速、魔力感知を発動させる。
「かなり難しいから、あまり使わんが、残り香ならぬ残り魔力を探ってみるのじゃ」
「残留魔力の感知はわたしとマコトは得意じゃないから、お願いするしかないね」
シーニさんはそういうと、杖で魔法陣を出し、そこからなにかを取り出した。
「みつけたら教えて、その近くに怪しい魔力がないか探ってみるから」
小型タブレットのようなモノを取り出して操作をする。
数十秒程、魔力感知をすると、すこし離れた場所に残留魔力を感じた。
その場に向かうと、薄っすらとだが何処かに向かっているようにノワさんの魔力が続いており、しばらくそれを辿った。
「……ここは」
辿り着いた場所はリゾート地の端に位置する森のようなところだった。
「この中に入っていったのかな?」
「わからん、なぜか不自然に魔力が途切れておる」
「なに?」
わたしゃの言葉に二人は疑問の表情を浮かべる。
「もしかして」
シーニさんはなにか気付いたのか、タブレットを振るように掲げながら歩くと、タブレットから音が鳴った。
「やっぱり!」
すこし離れた場所で立ち止まり画面を確認する。
「なにかフシギな魔力を感知したみたい」
「なんの魔力だ?」
マコトさんの問にすこし考えた後、シーニさんは答える。
「この反応的にナニか『隠れてる』のかな?」
「そうか」
その言葉を聞いたマコトさんは刀を鞘から抜くと迷わずにその場所を振り斬る。
すると、そこからナニかが斬れて開いた。
「これは、もしや『空間魔法』かのう?」
突然、現れた裂け目に驚きながらもわたしゃは冷静に分析をする。
「さて、はいるか」
マコトさんは迷わず入ろうとするが、わたしゃたちは止める。
「待たんか、すこしは警戒せい」
「いくらなんでも警戒心なさすぎだろう」
わたしゃたちは交互にマコトさんを注意する。
「…………」
マコトさんは立ち止まると、さっさとしろと云わんばかりに腕を組む。
「まったく……キミってやつは」
シーニさんは溜息をつくと、魔法陣から数本の棒を出し、それを空いた空間の上と下にはめ込む。
「閉じないように止めておこうか」
「つっぱり棒じゃのう」
どう見てもつっぱり棒にしか見えない棒をみてついツッコミをいれてしまった。
「そして、念の為に目印の魔道具も置いておこうか」
シーニさんは入り口の前に水晶玉のような魔道具をおいた。
「魔力放出に反応する魔道具だよ。 もし、この場所が分からなくなったらこれが帰り道を教えてくれるからね」
一通り準備を終えたわたしゃたちは空間の中に足を踏み入れた。
中に入ると特に普通の森と変わりない感じだった。
「普通の森と変わらないみたいだね」
「そうじゃのう、じゃが、フシギな感覚がするのじゃ」
周囲を警戒しながら互いに言葉を交わす。
「……ふん、さっさとこんなくだらん事を済ませてリゾートをみてやるか」
「キミさ、楽しみたいなら楽しみたいって素直にいいなよ」
後ろでいつものように緩い会話をはじめる。
「なにが楽しみたいだ、ガキじゃあるまいし」
「お主ら、いい加減にせんか、早くいなくなったノワさんをみつけて…」
夫婦漫才をやめない二人に呆れながら振り返ると、わたしゃは衝撃な光景を目にした。
マコトさんも後ろをみて固まっていた。
『シーニさんがいなかったのだ』
「!? マコトさん!!!」
「わかってる!!!」
互いに呼びかけ、反射的に背中合わせになる。
「アオイはどこだ!?」
「聞きたいのはこっちじゃ! ついさっきまでお主が隣で話しておったろう!?」
互いにパニックになりながらも、わたしゃはホウキをマコトさんは刀を取り出して構える。
「おかしいのじゃ、なんでわたしゃの魔力感知に引っ掛からんかったのじゃ」
「そんなこと今はどうでもいい、とにかくわかることは思ってた以上にマズイってことだ」
マコトさんの云う通り、かなり不味い状況だ。 まさか、シーニさんが真っ先にいなくなってしまうなんて想像できるはずがなかった。
「とりあえず、早く引き返してあいつらをこのリゾートから避難させるぞ! アオイの捜査はその後だ!」
「親友を後回しとは感心できんが、そうもいってられんようじゃのう……」
救えるものから救う、マコトさんが真っ先に考えること、それが魔導警察としての正しい判断だ。
「!?」
わたしゃたちに向けてナニかが迫ってきた。 それをマコトさんが鞘から刀を抜き斬る。
「……これは」
地面に落ちたそれを見ると、植物のツルだった。
「植物魔法か? なら、マズイな……」
マコトさんも気付いたのか顔を顰める。
「この森全て何者かの縄張りってことじゃな」
知らず知らずの内に何者かの縄張りに踏み入れてしまっていたようじゃ……
「とにかく森からでるのじゃ」
わたしゃはホウキに乗り、その後ろにマコトさんも立ちながら乗る。
「俺のことは気にせずに飛ばせ」
「わーとる」
ホウキを全速力で飛ばして入ってきた場所まで飛ぶ。
後ろからツルが追いかけてくるが、それをマコトが叩き斬っていく。 すると、前方の道が植物で塞がれた。
マコトさんはそれを斬る為に斬撃を飛ばすが、植物の壁が厚く全てを斬ることが出来なかった。
「しっかり掴まるんじゃぞ!」
前方の壁にぶつかるギリギリでホウキの軌道を90°曲げて方向転換をする。 上から森を脱出する為にスピードを上げるがまたしても植物の壁が道を塞いだ。
マコトさんはもう一度斬撃を飛ばすが、全て斬れず、直ぐに再生されてしまった。
「クソッ! いくらなんでも再生が早すぎるだろ!」
マコトさんはイラつきを隠せずにいるが、直ぐに冷静になりわたしゃに次の行動を告げる。
「こうなったら、本体を叩くぞ。場所を探ってくれ」
「もうとっくにやっておるし向かってるのじゃ」
マコトさんに言われる前から、いや、シーニさんがいなくなった直後から魔力感知を最大限張っていたのだ。
「何者かの魔力は上手く探れんが、『シーニさんの魔力』なら探れるのじゃ」
「で、どうなってるんだ?」
わたしゃはシーニさんの魔力を追いながら答える。
「どこかに向けて動いてるのじゃ」
「なに?」
マコトさんはわたしゃの言葉を聞きながら追尾してくるツルを斬っていく。
「それにお主も気付いてると思うが、『誘われ』とるのう」
「だろうな」
彼も気付いていたようだが、シーニさんの魔力を追いかけてから追尾が緩くなったのだ。 まるで、誘い出すように。
「そっちがその気なら乗ってやるだけだ」
「まあ、かなり危険じゃが、そうするしかないのう」
「桃山、ちなみにだが、転移魔法は使えるのか?」
マコトさんも恐らく気付いてるだろうが、質問に答える。
「ナニか謎の魔力のせいか、わたしゃの魔力コントロールが乱れておって森の外に出ることはできんのじゃ」
「やはりそうか」
そう一言だけ返すと、再度周囲の警戒に戻ると異変に気が付く。
「!?」
「どうした?」
マコトさんはわたしゃの反応に気付き聞く。
「……止まったのじゃ」
「止まった?」
「うぬ、シーニさんの魔力の動きがこの先で止まったのじゃ、それに、『別の魔力』も感じるのじゃ」
「その魔力はいなくなった野和のか? この森にいるナニかの方か?どっちだ?」
彼の問に感覚を研ぎ澄まして、この先の気配を読み取り、推測ではあるが答える。
「恐らく、『両方』じゃ」
「……! そうか、なら都合がいい」
「?」
わたしゃの顔は見えていないはずだが、心境を察したのかマコトさんは答える。
「行方不明者の発見と犯人の特定、これが同時にできるんだ、これほど好都合な事はない」
「じゃが、警戒は怠ってはいかんぞ」
「ああ」
そう一言返すと同時に木々が無数に並んでいる場所を抜け、開けた場所にでた。 そこも森の中なのは間違いないが、湖とでもいえばいいのだろうか、しかし、不自然なことに木々が大きな円形になくなっている場所だった。
「……なんだ、ここは」
マコトさんも唖然とした声をだす。
わたしゃたちが驚いたのはそれ以外にまるで何かの儀式の場所の様な、しかし、神秘的にも見える場所だったからだ。
「!? おい! みろ!」
マコトさんが声を上げ、示した場所をみると、誰か倒れていた。
「アオイ!!」
そう叫ぶやいなや、マコトさんはわたしゃのホウキから飛び降りる。
「こら! 警戒を怠るなといったはずじゃろ!」
慌てて止めるが、聞こえてないのか、シーニさんの元へ駆け寄る。
「なんだ、これは?」
倒れているシーニさんの体に数本のツルが絡まっていた。 しかし、ただ絡まってるだけではないとわたしゃたちはすぐに気が付く。
「下手に触らん方がいいかもしれんのう」
ホウキから降りずに観察する。
「それにこいつは…一体なんだ?」
マコトさんが驚愕したもう一つのことは『空中に浮かぶノワさん』だった。 彼もシーニさんと同じ様に数本のツルが絡まっていた。
「意識はないんだよな?」
「そうじゃな、意識はないがしっかりと浮遊魔法で浮いてるのう」
「こいつは本当に変わったやつだな」
彼のフシギな体質は気になるが、今はこの状況をどうするかを考える。
「!!」
突然、マコトさんは刀を構え臨戦態勢に入る。
「! どうしたのじゃ?」
わたしゃが聞き返すと険しい顔で答える。
「桃山、さっきお前はこいつら以外の魔力も感じるっていったよな?」
「!?」
わたしゃも可笑しなことに気が付く。
「そのナニかはどこだ?」
彼の質問に答えることはできなかった……何故なら、わたしゃたち以外いないのだ。
唯一できるのは、自分も臨戦態勢をとることだけだった。
「気を抜くでないぞ」
「わかってる」
互いに警戒の言葉を交わした直後、空中にいくつもの魔法陣が現れる。
「!?」
それに、驚く間もなく、そこからツルがわたしゃたちに向け迫ってきた。
「桃山!」
「わかっとる!」
わたしゃに合図するとマコトさんは身体強化魔法をカラダに掛け、その上にさらにわたしゃは身体強化魔法を付与した。
「はっ!」
マコトさんは迫ってくるツルを素早い動きで交わし、その中のひとつのツルに飛び乗りそのまま駆け上がりその先の魔法陣を斬る。
わたしゃも迫ってくるツルをホウキに乗り交わしながら、魔法陣に魔弾をぶつけ破壊していく。
「クソッ! キリがない」
いくら斬ろうとも増える魔法陣にマコトさんイラつきを隠せないでいた。
「本体はどこだ!? まだ、みつからないのか!?」
「さっきから探しておるが、魔法陣のせいで正確な位置が分からんのじゃ」
近くにいるのは間違いないはずなのにみつけられないでいると、わたしゃは少し可笑しなことに気が付く。
「マコトさん?」
わたしゃがツルを避けながらマコトさんをみると、彼の動きがすこし『鈍くなっている』気がした。
そんな疑問を確信づけるかの様に突然、マコトさんは片膝をついた。
「……くっ!」
「!!」
その隙を見逃す訳もなくマコトさんはツルに掴まってしまった。
「しまっ……!」
「マコトさん!!」
わたしゃは慌てて助けようとマコトさんの下に急降下すると、それを見越していたかの様に地面からツルが伸びてきてホウキを掴む。
「うそじゃろ!?」
悲鳴に近い叫びを上げたわたしゃは突然止まった反動でホウキから空中に投げだされる。
「ぬゅあ!!」
そのまま地面に叩きつけられると思ったが、わたしゃのカラダをツルが捕まえる。
「……!?」
一瞬、助けてくれたのかと思ったが、そうでないことに直ぐに気が付く。
「……! ……魔力が『吸われて』おる」
シーニさんたちも恐らく同じなのだと気付きカラダからチカラが抜けていくのを感じる。
「……く……エクス……チェン……ジ……」
わたしゃはチカラを振り絞り、魔法を唱え、近くの岩と自分を交換する。
「……はあ……はあ……こりゃまいったのじゃ」
なんとかツルから抜けたはいいものの、わたしゃは苦笑いを浮かべる。
「警戒が甘かったようじゃな……」
マコトさんの動きが鈍くなった理由が今分かった。
地面からも魔力が吸われているのだ。
「……これは……思ったより……マズイかも……しれん……の……じゃ……」
カラダから完全にチカラが抜け地面に倒れ、わたしゃの意識がゆっくりと遮断された。
「で、見つかりそうか」
前を歩いていたマコトさんが足を止め聞いてくる。
「まさかのノープランじゃったのか?」
マコトさんのまさかの発言にわたしゃは眼を見開いて驚く。 しかし、そんなことお構いなしに彼は言葉を続ける。
「お前がナニか策があるんだろう」
「他力本願じゃのう」
「カッコつけて出てきといて、それってダサすぎるでしょ」
わたしゃとシーニさんはマコトさんに白い眼を向ける。
「まあ、とにかく、わたしゃにできることをやるかのう」
「なにか手があるの?」
「『魔力感知』じゃ」
シーニさんの問に答えると、早速、魔力感知を発動させる。
「かなり難しいから、あまり使わんが、残り香ならぬ残り魔力を探ってみるのじゃ」
「残留魔力の感知はわたしとマコトは得意じゃないから、お願いするしかないね」
シーニさんはそういうと、杖で魔法陣を出し、そこからなにかを取り出した。
「みつけたら教えて、その近くに怪しい魔力がないか探ってみるから」
小型タブレットのようなモノを取り出して操作をする。
数十秒程、魔力感知をすると、すこし離れた場所に残留魔力を感じた。
その場に向かうと、薄っすらとだが何処かに向かっているようにノワさんの魔力が続いており、しばらくそれを辿った。
「……ここは」
辿り着いた場所はリゾート地の端に位置する森のようなところだった。
「この中に入っていったのかな?」
「わからん、なぜか不自然に魔力が途切れておる」
「なに?」
わたしゃの言葉に二人は疑問の表情を浮かべる。
「もしかして」
シーニさんはなにか気付いたのか、タブレットを振るように掲げながら歩くと、タブレットから音が鳴った。
「やっぱり!」
すこし離れた場所で立ち止まり画面を確認する。
「なにかフシギな魔力を感知したみたい」
「なんの魔力だ?」
マコトさんの問にすこし考えた後、シーニさんは答える。
「この反応的にナニか『隠れてる』のかな?」
「そうか」
その言葉を聞いたマコトさんは刀を鞘から抜くと迷わずにその場所を振り斬る。
すると、そこからナニかが斬れて開いた。
「これは、もしや『空間魔法』かのう?」
突然、現れた裂け目に驚きながらもわたしゃは冷静に分析をする。
「さて、はいるか」
マコトさんは迷わず入ろうとするが、わたしゃたちは止める。
「待たんか、すこしは警戒せい」
「いくらなんでも警戒心なさすぎだろう」
わたしゃたちは交互にマコトさんを注意する。
「…………」
マコトさんは立ち止まると、さっさとしろと云わんばかりに腕を組む。
「まったく……キミってやつは」
シーニさんは溜息をつくと、魔法陣から数本の棒を出し、それを空いた空間の上と下にはめ込む。
「閉じないように止めておこうか」
「つっぱり棒じゃのう」
どう見てもつっぱり棒にしか見えない棒をみてついツッコミをいれてしまった。
「そして、念の為に目印の魔道具も置いておこうか」
シーニさんは入り口の前に水晶玉のような魔道具をおいた。
「魔力放出に反応する魔道具だよ。 もし、この場所が分からなくなったらこれが帰り道を教えてくれるからね」
一通り準備を終えたわたしゃたちは空間の中に足を踏み入れた。
中に入ると特に普通の森と変わりない感じだった。
「普通の森と変わらないみたいだね」
「そうじゃのう、じゃが、フシギな感覚がするのじゃ」
周囲を警戒しながら互いに言葉を交わす。
「……ふん、さっさとこんなくだらん事を済ませてリゾートをみてやるか」
「キミさ、楽しみたいなら楽しみたいって素直にいいなよ」
後ろでいつものように緩い会話をはじめる。
「なにが楽しみたいだ、ガキじゃあるまいし」
「お主ら、いい加減にせんか、早くいなくなったノワさんをみつけて…」
夫婦漫才をやめない二人に呆れながら振り返ると、わたしゃは衝撃な光景を目にした。
マコトさんも後ろをみて固まっていた。
『シーニさんがいなかったのだ』
「!? マコトさん!!!」
「わかってる!!!」
互いに呼びかけ、反射的に背中合わせになる。
「アオイはどこだ!?」
「聞きたいのはこっちじゃ! ついさっきまでお主が隣で話しておったろう!?」
互いにパニックになりながらも、わたしゃはホウキをマコトさんは刀を取り出して構える。
「おかしいのじゃ、なんでわたしゃの魔力感知に引っ掛からんかったのじゃ」
「そんなこと今はどうでもいい、とにかくわかることは思ってた以上にマズイってことだ」
マコトさんの云う通り、かなり不味い状況だ。 まさか、シーニさんが真っ先にいなくなってしまうなんて想像できるはずがなかった。
「とりあえず、早く引き返してあいつらをこのリゾートから避難させるぞ! アオイの捜査はその後だ!」
「親友を後回しとは感心できんが、そうもいってられんようじゃのう……」
救えるものから救う、マコトさんが真っ先に考えること、それが魔導警察としての正しい判断だ。
「!?」
わたしゃたちに向けてナニかが迫ってきた。 それをマコトさんが鞘から刀を抜き斬る。
「……これは」
地面に落ちたそれを見ると、植物のツルだった。
「植物魔法か? なら、マズイな……」
マコトさんも気付いたのか顔を顰める。
「この森全て何者かの縄張りってことじゃな」
知らず知らずの内に何者かの縄張りに踏み入れてしまっていたようじゃ……
「とにかく森からでるのじゃ」
わたしゃはホウキに乗り、その後ろにマコトさんも立ちながら乗る。
「俺のことは気にせずに飛ばせ」
「わーとる」
ホウキを全速力で飛ばして入ってきた場所まで飛ぶ。
後ろからツルが追いかけてくるが、それをマコトが叩き斬っていく。 すると、前方の道が植物で塞がれた。
マコトさんはそれを斬る為に斬撃を飛ばすが、植物の壁が厚く全てを斬ることが出来なかった。
「しっかり掴まるんじゃぞ!」
前方の壁にぶつかるギリギリでホウキの軌道を90°曲げて方向転換をする。 上から森を脱出する為にスピードを上げるがまたしても植物の壁が道を塞いだ。
マコトさんはもう一度斬撃を飛ばすが、全て斬れず、直ぐに再生されてしまった。
「クソッ! いくらなんでも再生が早すぎるだろ!」
マコトさんはイラつきを隠せずにいるが、直ぐに冷静になりわたしゃに次の行動を告げる。
「こうなったら、本体を叩くぞ。場所を探ってくれ」
「もうとっくにやっておるし向かってるのじゃ」
マコトさんに言われる前から、いや、シーニさんがいなくなった直後から魔力感知を最大限張っていたのだ。
「何者かの魔力は上手く探れんが、『シーニさんの魔力』なら探れるのじゃ」
「で、どうなってるんだ?」
わたしゃはシーニさんの魔力を追いながら答える。
「どこかに向けて動いてるのじゃ」
「なに?」
マコトさんはわたしゃの言葉を聞きながら追尾してくるツルを斬っていく。
「それにお主も気付いてると思うが、『誘われ』とるのう」
「だろうな」
彼も気付いていたようだが、シーニさんの魔力を追いかけてから追尾が緩くなったのだ。 まるで、誘い出すように。
「そっちがその気なら乗ってやるだけだ」
「まあ、かなり危険じゃが、そうするしかないのう」
「桃山、ちなみにだが、転移魔法は使えるのか?」
マコトさんも恐らく気付いてるだろうが、質問に答える。
「ナニか謎の魔力のせいか、わたしゃの魔力コントロールが乱れておって森の外に出ることはできんのじゃ」
「やはりそうか」
そう一言だけ返すと、再度周囲の警戒に戻ると異変に気が付く。
「!?」
「どうした?」
マコトさんはわたしゃの反応に気付き聞く。
「……止まったのじゃ」
「止まった?」
「うぬ、シーニさんの魔力の動きがこの先で止まったのじゃ、それに、『別の魔力』も感じるのじゃ」
「その魔力はいなくなった野和のか? この森にいるナニかの方か?どっちだ?」
彼の問に感覚を研ぎ澄まして、この先の気配を読み取り、推測ではあるが答える。
「恐らく、『両方』じゃ」
「……! そうか、なら都合がいい」
「?」
わたしゃの顔は見えていないはずだが、心境を察したのかマコトさんは答える。
「行方不明者の発見と犯人の特定、これが同時にできるんだ、これほど好都合な事はない」
「じゃが、警戒は怠ってはいかんぞ」
「ああ」
そう一言返すと同時に木々が無数に並んでいる場所を抜け、開けた場所にでた。 そこも森の中なのは間違いないが、湖とでもいえばいいのだろうか、しかし、不自然なことに木々が大きな円形になくなっている場所だった。
「……なんだ、ここは」
マコトさんも唖然とした声をだす。
わたしゃたちが驚いたのはそれ以外にまるで何かの儀式の場所の様な、しかし、神秘的にも見える場所だったからだ。
「!? おい! みろ!」
マコトさんが声を上げ、示した場所をみると、誰か倒れていた。
「アオイ!!」
そう叫ぶやいなや、マコトさんはわたしゃのホウキから飛び降りる。
「こら! 警戒を怠るなといったはずじゃろ!」
慌てて止めるが、聞こえてないのか、シーニさんの元へ駆け寄る。
「なんだ、これは?」
倒れているシーニさんの体に数本のツルが絡まっていた。 しかし、ただ絡まってるだけではないとわたしゃたちはすぐに気が付く。
「下手に触らん方がいいかもしれんのう」
ホウキから降りずに観察する。
「それにこいつは…一体なんだ?」
マコトさんが驚愕したもう一つのことは『空中に浮かぶノワさん』だった。 彼もシーニさんと同じ様に数本のツルが絡まっていた。
「意識はないんだよな?」
「そうじゃな、意識はないがしっかりと浮遊魔法で浮いてるのう」
「こいつは本当に変わったやつだな」
彼のフシギな体質は気になるが、今はこの状況をどうするかを考える。
「!!」
突然、マコトさんは刀を構え臨戦態勢に入る。
「! どうしたのじゃ?」
わたしゃが聞き返すと険しい顔で答える。
「桃山、さっきお前はこいつら以外の魔力も感じるっていったよな?」
「!?」
わたしゃも可笑しなことに気が付く。
「そのナニかはどこだ?」
彼の質問に答えることはできなかった……何故なら、わたしゃたち以外いないのだ。
唯一できるのは、自分も臨戦態勢をとることだけだった。
「気を抜くでないぞ」
「わかってる」
互いに警戒の言葉を交わした直後、空中にいくつもの魔法陣が現れる。
「!?」
それに、驚く間もなく、そこからツルがわたしゃたちに向け迫ってきた。
「桃山!」
「わかっとる!」
わたしゃに合図するとマコトさんは身体強化魔法をカラダに掛け、その上にさらにわたしゃは身体強化魔法を付与した。
「はっ!」
マコトさんは迫ってくるツルを素早い動きで交わし、その中のひとつのツルに飛び乗りそのまま駆け上がりその先の魔法陣を斬る。
わたしゃも迫ってくるツルをホウキに乗り交わしながら、魔法陣に魔弾をぶつけ破壊していく。
「クソッ! キリがない」
いくら斬ろうとも増える魔法陣にマコトさんイラつきを隠せないでいた。
「本体はどこだ!? まだ、みつからないのか!?」
「さっきから探しておるが、魔法陣のせいで正確な位置が分からんのじゃ」
近くにいるのは間違いないはずなのにみつけられないでいると、わたしゃは少し可笑しなことに気が付く。
「マコトさん?」
わたしゃがツルを避けながらマコトさんをみると、彼の動きがすこし『鈍くなっている』気がした。
そんな疑問を確信づけるかの様に突然、マコトさんは片膝をついた。
「……くっ!」
「!!」
その隙を見逃す訳もなくマコトさんはツルに掴まってしまった。
「しまっ……!」
「マコトさん!!」
わたしゃは慌てて助けようとマコトさんの下に急降下すると、それを見越していたかの様に地面からツルが伸びてきてホウキを掴む。
「うそじゃろ!?」
悲鳴に近い叫びを上げたわたしゃは突然止まった反動でホウキから空中に投げだされる。
「ぬゅあ!!」
そのまま地面に叩きつけられると思ったが、わたしゃのカラダをツルが捕まえる。
「……!?」
一瞬、助けてくれたのかと思ったが、そうでないことに直ぐに気が付く。
「……! ……魔力が『吸われて』おる」
シーニさんたちも恐らく同じなのだと気付きカラダからチカラが抜けていくのを感じる。
「……く……エクス……チェン……ジ……」
わたしゃはチカラを振り絞り、魔法を唱え、近くの岩と自分を交換する。
「……はあ……はあ……こりゃまいったのじゃ」
なんとかツルから抜けたはいいものの、わたしゃは苦笑いを浮かべる。
「警戒が甘かったようじゃな……」
マコトさんの動きが鈍くなった理由が今分かった。
地面からも魔力が吸われているのだ。
「……これは……思ったより……マズイかも……しれん……の……じゃ……」
カラダから完全にチカラが抜け地面に倒れ、わたしゃの意識がゆっくりと遮断された。
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萌の物語が始まる。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
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「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
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合成師
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里見瑠夏32歳は仕事をクビになって、やけ酒を飲んでいた。ビールが切れるとコンビニに買いに行く、帰り道でゴブリンを倒して覚醒に気付くとギルドで登録し、夢の探索者になる。自分の合成師というレアジョブは生産職だろうと初心者ダンジョンに向かう。
そのうち合成師の本領発揮し、うまいこと立ち回ったり、パーティーメンバーなどとともに成長していく物語だ。
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