下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

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調べ物とペンダント

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紫狐の変な声援を受けて戸惑う檪だったが、すっかりと打ち解けて、紫狐が入れたお茶を啜りながら談話している側では翡翠が日向ぼっこをしながら寝ている。

「あ、あのさ……寛いでるとこ悪いんだけど、しーちゃんは話は聞いてるんだよね?」

「聞いてますー。でも、今ある巻物の気は紫狐にはわからないので、ゆっきーを守ることしかできません」

「うん、そうかもしれないけど……」

「檪さん聞いてくれます?ゆっきーったらね、いっつも心配ばっかりかけるくせに、心配ばっかりしてるんですよー」

「ほう……」

「それにですね、紫狐の言うことちーっとも聞いてくれないんです。お勉強ばっかりで……」

「しかし、人間のこの年は勉学をするものと聞いておったが?」

「確かにそうですが、ゆっきーは頑張りすぎるからいけないと紫狐はいつも言ってるんですー」

「気をつけておこう」

「気をつけなくていいから!もうすぐテストだし、僕、1ヶ月も休んでたんだよ?」

「あの時は紫狐はもうどうしたらいいか分からなくて……心配したんですからね?」

「ごめん」

「ゆっきーのせいじゃないですし、元気ならいいんです。ただ、巻物が見つかった時どうなるのかが気になるんですー。いっちーは分かりますか?」

「い、いっちー?」

「檪さんて呼びにくいので。最初に字名をくれたのはゆっきーです。ゆっきーがいいと言えば檪さんはいっちーで大丈夫なのですー」

「檪、いい?」

「よ、良かろう。我……いや、自分のことをなんと呼べば良いのかもまだこの世界に則ると分からんのだが……」

「俺とかでいいんじゃないの?」

「それで良いのか!とにかく、主が決めたことに口出しはせぬが、この巻物……今は一つだが、増える度に体に負担がかかるものかもしれぬ」

「どういうこと?」

「あの小童共が今、炬燵にて守っておるが、何か入れておく箱がいる。手に持つとピリピリすると言うておった……言っておった?あれ?」

「言ってたでしょ?しーちゃん、またイメージみたいなのでいいのかな?」

「いっちーに渡せば中に持って行ってもらえますよ?」

何かいい箱はないのかなと部屋を探しても、小さな巻物だけとは限らないと聞いていたので、適当な大きさの箱がなく、紫狐と檪と一緒に家の中をうろうろとして探す。

「何をしておるんじゃ?」

「ん?箱を探してるの。ちょっとしっかりとしたものが欲しくって」

そう言って祖父にも先ほどの話をし、一緒に探してもらう。

「いざ探すとなると中々ないもんじゃのう」

「そうだね……要らないときは沢山あるのに」

靴箱の箱では小さすぎるかもなど、箱のありそうなところを中心に見ていると、玄関から入ってきた那智にも同じことを聞かれ、探す人数がだんだんと増えていく。

三郎に四郎、周太朗まで参加してしまい、祖母に「そんなの冬弥に聞けばいいのに」とサラリと言われてしまう。

「それもそっか!」

「その巻物だが、金と銀では荷が重いってことか?」

「檪……」

「あれらはまだ小さい。かといって素手で持つのは俺でもちょっと嫌な感じがする。狐の種が違うのもあるが、天の使いでも気の違うものは長く持ちたくない」

「それって持ちたくないってことじゃん」

「うぅ……」
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