下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは

文字の大きさ
74 / 87
東の浮遊城

.

しおりを挟む
言われたことに取り掛かる前に部屋に案内され、置いてあった荷物の中から、筆記用具とノートなどを取り出して机に置く。

服も羽織ものやひざ掛けを先に出し、残りはゆっくりでいいかと箪笥を見ると、先に送った服が綺麗にしまわれており、本棚にもたくさんの本が置かれていた。

廊下を進むと、いくつかの部屋が開いていたので、中を覗き込んで誰の部屋か確認し、途中の渡り廊下の隅から降りれるようになっていたので、庭に降りて散策する。

前に来た時には何もなくガランとしていたのに、荷物が置かれるだけで女中の狐も忙しく働き、とっても賑やかになっていた。

「雪翔ー」

「はーい。庭にいるー」

那智に呼ばれて返事をし、渡り廊下まで戻ろうとして花壇に刺さっている鉄の細い棒に目を留める。

一本引き抜いて見ると、長さは15cmほど。

「これだ……」と花には悪かったが一本だけ貰って那智のところに行き、棒を見せる。

「なんだ?その棒」

「花壇に刺してあったんだ」

「倒れないようにするやつか」

「多分。僕、これ欲しい」

「はぁ?そんな物どうするんだよ」

「うん……使えないかなーって思って。それより用事じゃないの?」

「あ、そうだった。広間に集まれって言われたから迎えに来た。ちょうど見かけたし」

「なんだろう?」

那智と広間に行くと、昴と胡蝶も座っており、「ここじゃ」と胡蝶に呼ばれて隣に座る。

「よう無事であったな」

「栞さんが助けてくれたから……」

「彼女はもう大丈夫じゃ。妾とあの子狐とで治したからの」

「もう起きてるの?」

「一度目は覚めたが、疲れておるのであろ。また眠っておる」

「そっか……」

「そんなに暗い顔をせずとも良い。怪我がなくて何よりじゃ」

「うん……」

「雪翔、その棒はなんだ?」

「那智さんにも聞かれたんだけど、僕、試したい事があって、さっき花壇でこれ見つけて。貰ってきちゃった」

「何に使うのかは知らんが、気をつけて持てよ?」

「うん、分かった」

「みんな揃ったようじゃの」と祖父が切り出したので前を向くと、手には色々な色の紐の束が持たれていた。

「今からこれを配る。この紐はじゃな「勝手に持ち出すなくそじじい!」」

「昴さん?」

「また勝手に城に潜り込んだんだろ」

「抜け道があるのが悪い。それに、管理がなっておらん!でじゃ、この紐じゃが、手首でも足首でも好きなところにつけてくれ。それをつけてるものの位置が分かるようになるでの」

「色は?」

「関係ない。それに儂と冬弥の気が入っておる。配る前に昴と胡蝶も気を入れてくれんか」

昴と胡蝶が気を入れ、好きな色を選べと言われたので、緑色を選ぶ。

「ミサンガみたい」

「みさ?」

「人間の世界にもこんなのがあるんだ。でもこの折り方って複雑に出来てるね」

「そりゃそうだ。一応宝物だからな。何かあればこの気を入れた者と連絡が取れるスグレモノなんだが、勝手に蔵から持ち出すの爺さん位だ」

「お爺ちゃん、泥棒見たい」

「みたいじゃなくて、真似すんなよ?」

「しないよ。でも宝物庫って言うくらいだから、これすごい価値があるの?」

「その折り方に価値があるんだ。数も限られてるし、値は付けられん」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

【完結】あやかし団地 管理人見習い日誌

双月ねむる
キャラ文芸
就活全滅で「自分には社会性がない」と思い込む凛は、遠縁の親戚に紹介され、昭和レトロな巨大団地・さくらヶ丘第一団地の『管理人見習い』として住み込みで働くことに。しかしその団地には、中庭の「靴鳴らし」、エレベーター表示盤に棲む狐など、団地限定あやかし達が当たり前のように暮らしていた。 最初は逃げ腰の凛だったが、すねた空き部屋や、ベランダの風鈴が告げるSOSなど、人とあやかしのトラブルに巻き込まれながら、少しずつ『共同体』に関わる勇気を取り戻していく。

明治かんなぎ少女の冥契 五百年の時を超えて、あなたに愛を

花籠しずく
キャラ文芸
 ――ですが、わたくしは生まれました。あなたに会うために。  月のものが来るようになってから、琥珀は不思議な夢を見る。誰かに探されている夢。きっと大切な人だったことは分かるのに、目が覚めると朧気で何も思い出せない。婚約者である志貴の言いなりの人形になる生活をし、生家とは会うと脅され、心が疲弊していたある日、家からひとり抜け出すと、妖魔のようなものに出会う。呪術師である志貴に、一時祓ってもらいはしたが、不思議と心が痛む。夢に美しい男が現れ、声に導かれるようにして、ある山のふもとの、廃れた神社の中に入ると、そこには苦しそうに蹲るあの妖魔がいた。琥珀はそれが夢に現れた、蘿月という男だと直感する。全身が黒い靄で包まれた彼の、靄を払う方法を、どうしてか琥珀は知っていた。口づけをし、息を吹き込むように、生きて、と願った。  帰ってすぐに志貴に殴られ、月のものがはじまっていたことが志貴にばれる。琥珀を穢そうとする志貴の様子に恐ろしさを覚えて、助けてと叫んだその瞬間、闇を裂くようにして、蘿月が現れた。 「琥珀は、俺が五百年待ち望んだ花嫁だ」  これは、時を超えて紡がれる愛の物語。そして虐げられた少女が、愛を知り、愛のために生きる自由を選ぶ物語。 ※R-15っぽいゆるい性描写があります。

借りてきたカレ

しじましろ
恋愛
都合の良い存在であるはずのレンタル彼氏に振り回されて…… あらすじ システムエンジニアの萩野みさをは、仕事中毒でゾンビのような見た目になるほど働いている。 人の良さにつけ込まれ、面倒な仕事を押しつけられたり、必要のない物を買わされたり、損ばかりしているが、本人は好きでやっていることとあまり気にしていない。 人並みに結婚願望はあるものの、三十歳過ぎても男性経験はゼロ。 しかし、レンタル彼氏・キキとの出会いが、そんな色の無いみさをの日常を大きく変えていく。 基本的にはカラッと明るいラブコメですが、生き馬の目を抜くIT企業のお仕事ものでもあるので、癖のあるサブキャラや意外な展開もお楽しみください!

【完結】結界守護者の憂鬱なあやかし幻境譚 ~平凡な男子高校生、今日から結界を繕います~

御崎菟翔
キャラ文芸
​【平凡な高校生 × 妖従者たちが紡ぐ、絆と成長の主従現代和風ファンタジー!】 ★第9回キャラ文芸大賞エントリー中! 「選ぶのはお前だ」 ――そう言われても、もう引き返せない。 ​ごく普通の高校生・奏太(そうた)は、夏休みのある日、本家から奇妙な呼び出しを受ける。 そこで待っていたのは、人の言葉を話す蝶・汐(うしお)と、大鷲・亘(わたり)。 彼らに告げられたのは、人界と異界を隔てる結界を修復する「守り手」という、一族に伝わる秘密の役目だった。 ​「嫌なら断ってもいい」と言われたものの、放置すれば友人が、家族が、町が危険に晒される。 なし崩し的に役目を引き受けた奏太は、夜な夜な大鷲の背に乗り、廃校や心霊スポットへ「出勤」することに! ​小生意気な妖たちに絡まれ、毒を吐く蛙と戦い、ついには異世界「妖界」での政変にまで巻き込まれていく奏太。 その過程で彼は、一族が隠し続けてきた「残酷な真実」と、従姉・結(ゆい)の悲しい運命を知ることになる―― ​これは、後に「秩序の神」と呼ばれる青年が、まだ「ただの人間」だった頃の、始まりの物語。 ​★新作『蜻蛉商会のヒトガミ様』 この物語から300年後……神様になった奏太の物語も公開中! https://www.alphapolis.co.jp/novel/174241108/158016858

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

後宮薬師は名を持たない

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。 帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。 救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。 後宮が燃え、名を失ってもなお―― 彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。

処理中です...