下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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南へ__

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祭りからこっそりと抜け出し、荷物を車椅子の取っ手にかけ、鞄も斜めにかけて路銀をしっかりとしまい、南の屋敷付きの風の一族の重次と一緒に祭りの会場から音が聞こえなくなるまで走ってもらう。

「もう音は聞こえないね」

「寂しいのであればやはりやめておきますか?」

「会えなくなるわけじゃないし、言わなかったのは悪いと思うけど、行こう!」

「どちらから回られます?」

「冬から回っても吹雪って言ってたってことは、三月には冬も行きやすいってことだよね?だったら南から」

「そうですね……ここからまっすぐ進んで、海を渡ると早いですが、船に乗るとあちらの屋敷にバレてしまうかも知れません」

「海を渡らないといけないの?」

「街道で行くと、前見た海には出ませんので」

「うん、街道行こう」

車椅子を押してもらいながら、順調に進んでいくが、座ってるだけの自分より、重次のが大変だろうと、所々で休憩を入れて進み、朝日が昇る頃には東と南の境にまで来ていた。

「早いね……」

「ここまでは道も整ってますから。だんだんと舗装されていない道も出てきますから、その時に荷馬車が通ったら乗せてもらいましょう」

重次に言われ、わかったと返事をしてから街道の横にある木の椅子付近で朝ごはんを作っている人たちがいたので、その近くで荷物に入っていたおにぎりを食べる。

「宿がない時は自炊だよね?」

「私の影の中に必要なものは一式揃ってますし、市場があればそこで少しずつ買うのもいいと思います」

「街なんてあるの?」

地図を広げてみても、大ざっぱにしか書いていないために町があるのかどうかが分からない。

所々の印が町だと言うが、既に南の国に入っているので、冬だと言っても中心に行けば行くほど暖かくなるという。
そのため、食料もこまめに買う必要があると言われ、痛むといけないからだと納得するが、最初の町に着くまでは徒歩で二日。荷馬車に乗れても一日はかかると言う。

食後にまだ舗装された道を進むが、人通りも少なく、荷馬車が通る気配もない。それどころか少しずつ道が悪くなっていく。

「重次さん、大丈夫?」

「大丈夫です。坊っちゃまを担いで山を登れと言われると困りますが」

「それにしても人通り少ないね。普段もこんな感じなの?」

「ここは中心街道ですので、普段は賑わっており、茶屋や団子屋に飯屋まで所々にあります。やはりまだ祭りの本番なので行商人も通らないのでしょう」

「そっか。向こうは元旦の祭りだもんね。各地でするんでしょう?」

「はい。南でもしていまして、南のお館様ご夫妻が仕切られております。天狐と仙狐が各地においでになるので、持ち回りで祭りを仕切るのですが、東の本家は多分来年だったかと」

「何するの?準備とか?」

「一年かけて準備をするんです。我々も手伝いますが、役人達も秋をすぎる頃からは岩戸の規制や祭りに出す催し物などの確認で大忙しです」

「城は何にもしないんだ」

「そう言われるとそうですが、四代大名家と言われるほど、坊っちゃまの屋敷は有名ですから。あ、そうだ、これをお持ちください」
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