下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは

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南中心街から秋へ

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「そうなのですねー」

「し、しーちゃん!ここ、男湯……」

「いやぁ、気持ちいいですねぇ。温泉は。紫狐は気にしないので気にしないでくださいぃー」

「気にするから!しーちゃん女の子だし」

「みんなもあちらで浸かってますよ?いっちーは、初めてらしくて、檜の湯がお気に入りみたいですー。ひーちゃんもそこに居ますー」

「はぁ。入るなら入るでちゃんと言ってよね。ひーちゃんは乾かす時に大変なんだから」

「それなんですが、いっちーが、術で乾かしてくれると言ってますー」

「そ、そうなんだ……」

檜の湯の方を見ると、器用に泳いでいる翡翠と……檪。

「なんで檪まで泳いでるの!」

「あ、ホントですねー。楽しそうですー」

「しーちゃんも呑気に……」

「今回は勘弁してあげてくださいー。珍しく湯に入るという事は、これから冷えると思ってもらってもいいですー。ひーちゃんが寒い寒いって言うので、いっちーが、星読みをしたのですが、やはり降ると言ってましたー」

「雪が降るんだよね?」

「はいー」

「ここでも降らないことはないんです。なので、時期的にも檪様のいうことが当たってるかもしれません。それに翡翠様は勘が良いので、まだ本能でしょうが……」

「前も、臭いって言ったところに行ったら本があったし、言葉がちょっと残念だけど、当たるんだよね。翡翠って……」

「それなのですが、何故ライオンの時には何も言わなかったのでしょう?」

「あ、それなら中で騒いでました。大きいから怖いって」

「ちゃんと教えてよー。僕だってびっくりしてたんだから!他に何か言ってなかった?」

「えーと、早く次の街に行くほうがいいといっちーが。何故かは聞いてませんけど」

「明日も食後に出発する?」

「そうですね。この街にも木炭は売ってますから、買い付けておきましょう。後ろに布団を敷いて、余裕があるので、もう一つ火鉢も買っておきましょうか」

「薪は何に使うの?」

「野宿対策です。なければ一番いいのですが、足止めされる可能性はないともいい切れませんから」

夕餉は、寒いからか鍋で、中には魚の肉団子が入っており、野菜も沢山入っていて味噌味だった。
あちらで言う味噌鍋のようなもので、ご飯と漬物が付いていて、別に猪肉が置いてあったので、火のついた鍋に入れて火を通してから食べる。

「あっつ!でも、美味しい!」

「結構上質な部分ですね」

「そうなの?そんなに臭みもないね」

「処理の仕方がうまいのでしょう。外はかなり風が出てきましたね」

「うん。やっぱり降るのかな?」

「今夜は暖かくして早めに休んでください。こちらには暖房というものが、こういった火鉢しかないので。暖炉のある家もありますが、一般的に使われているのは火鉢です」

「みんな寒くないのかな?」

「地域によって使い方は一緒ですが、火の起こし方が違いますから。お屋敷では常に火をつけてますが、町民や農村に行くにつれ、炭がなく暖を取れない所もあります。坊っちゃま、可愛そうだからと思うかもしれませんが、なにがあっても絶対に炭や薪を渡してはいけませんよ?」

「どうして?」

「一つに渡せば、必ず他のものも貰えると思って寄ってきます。そうすると、何もなくなれば荷台まで暖を取るために燃やされてしまいます。これがどういうことか分かりますよね?」

「うん……」
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