天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

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決断

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「王のお墓みたいなのは別でないの?」

「ありますが、今中心の城はあのような状態なので、こちらで安置し出来上がった時に移動となると思いますが、その墓も人間界で見る博物館のようになってます」

「へぇ。でも、一般の人は入れないんでしょ?」

「入れませんが、数年に一度祈りの儀式がある時は扉が開かれます」

「1周忌とか三回忌みたいな感じかな?」

「そんな感じです。あ、奏太様お食事にします?それともニコルさん見に行かれます?」

「先に食事かな?お腹空いちゃった」

食堂に行くと珍しくみんなが集まっており、葬儀の話をしているようだったので、邪魔をしないように離れて座る。

「王子、お食事なんですが食べられそう?」

「エマさん。動いてていいの?」

「はい。何かしていた方が気が紛れるので」

「そっか。俺ちょっとガッツリと食べたいかな?ノアは?」

「私も同じもので」

すぐに用意された食事は、牛のステーキにサラダとスープ。珍しくお米もあると言うのでお米にしてもらう。
流石にお茶碗はなかったので、茶碗によく似た容器に入れて持ってこられる。

「鉄板ステーキだ。レストランみたい」

「人間界での鉄板ステーキですね。ジャガイモなど乗ってますし」

「数日なのに懐かしく感じるよ」

お代わりもしていいというので、ステーキもお代わりしてお腹いっぱいになったところで、冷たいコーヒーをもらう。

「奏太、腹いっぱいか?」

「うん、美味しかったよ」

「じゃあ、血をくれ」

「はい?」

各王と話し合った結果、かなり薄めれば一般の者に使ってもすぐに排出され体には残らないだろうとの結論が出たそうで、結月の実験でも証明された為、今重傷の者限定で治療に使うと言う。

「そうなら、そうと言ってよ。なんで血をくれとか単語でいうの?ビックリするんだけど」

「結月はいつもそんな言い方だろ?」

「ルーカスさん、起きていいの?」

「ああ、何とかな。病人食にも飽きたし、もう動いてもいいらしい」

「で、俺の血をとるのは構わないんだけどさ、それみんなに言うの?」

「言ったら混乱するから特別万能薬とだけ言っておく」

「分かった。ユーリさん、しっかりと監視しといてね?何に使うか分かったものじゃないんだから」

「厳重に監視しておきます」

「酷い……」

「今までの行いのせいって気付こうよ」

そう言って、どのくらいとるのかを聞き、ルーカスの寝ていた部屋で血の採取となった。
それもまた変化をしなければならないらしく、遊ばれるのが嫌で角が生えてくるイメージを持って集中すればなんとか時間もかからずに変化ができたので、血を取ってもらう。

「これでみんなが元気になるといいんだけどね」

「なる。もう誰も死なせん」

「うん」

「この血で何百、何千人と助かるんだ。お前のお陰でな。礼を言う」

「いいよ。それよりもあっちの城のこと聞いた?後、仮設テントとかの事も」

「ああ、数は足りんが何とかなるだろう。それとな……ノアの言うようにやはりあの子の親は置いていった可能性が高い。みんながここに来ることは幻界のこちらの地域では広まってるし」
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