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記憶
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「おい……雪翔は寝たぞ。那智よ、その雪翔を襲った輩は今どこにおる?」
「警察……ですが」
ピリピリとした雰囲気と言うよりは怒りに近い気が漏れ、流石にみんな固まっている。
かく言う自分も久しぶりに恐怖を感じた……この爺さん。いや、当主はどれだけの力を秘めているのだろう……
自分の父の兄に当たるので、本来ならばもっと気軽に話せるのだが、目の前にするとつい敬語で話してしまう。
そのくらい普段から威厳があり、尊敬をしている。
だが、こんなにも怒ったところは見たことがない。
「冬弥も呑気なものじゃが、あの子供……強さと弱さの間で揺れておる」
「それってどっち?」
「強ければ、この程度跳ね返す精神もあるじゃろう。じゃが、基本優しい子供と聞いていた。他人を傷つけたくない。そればかりじゃと弱さにもなる。まだ人の年で15ならば仕方もない。鍛えるにはまだまだ幼すぎる。それ故、儂の狐にも怯えておる」
「じいさんの狐じゃ怖いって。俺も怖いもん」
「何を言うか小童が!初めて会って、冬弥が何故子にしたのか良くわかった」
「それはどういう事ですか?」
「儂も古くからの言い伝えで聞いたのみじゃし、本人に会ってもおらんが、同じ狐と聞いて分からんか?」
「……陰陽師ですか?」
「那智様?」
「おかしいと思わなかったのか?千年祭の時の階段も、時折見せるあの気配も。ただ表か裏かはわからんが……それにイタコの家系とは聞いてたが、それだけで冬弥が養子にするはずがない」
「でも、どんな力を雪翔君が持っていたとしても、元々は人間の親が捨てたんです!」
「それもあるだろう。雪翔に自覚がなければただの人だ」
「そう。もしかしたら、今回は今までの記憶とともに、その記憶が戻る可能性もありうる」
「わ、私は……雪翔君は雪翔君で……元気でいてくれればそれで……うっ……グスッ」
「ほれほれ、泣かずとも良い。婆さんの狐は殆どが癒し狐じゃ。体の方はなんとかしてくれる。でじゃ、もう一つの方法として雪翔の記憶を消し塗り替えることも出来るが」
「それは、仙以上の者でないと。我々では一部の記憶の書き換えしか……それに暗黙のルールでは理に逆らうなとあります」
「儂が出来る」
「仙様なのですか?」
「元、天狐じゃ」
「じいさんが!?」
「昔は正体は明かしてはならんだ。最近では城に住まうもの、仙狐・天狐も本当におるのかと疑うものも出てきた。そこで久々に出た天狐の名を明かすことで、民に天狐は居ると認めさせるしか無くなった。今居る天狐も追々名が出るじゃろう。天狐のみ苗字が与えられるが、偶然にも『早乙女』の名を貰ったと聞いた」
「冬弥様にお会いになられたのですか?」
「一度家に来た。身なりはそれなりに整えてあったが、手足はやつれ、頬もこけておった。爪も割れておったの……二三日滞在すると言っておったが、置き手紙一つでまたおらんくなった。多分天狐の庭におるのじゃろう」
「あの空に浮かぶ岩……ですか?」
「よく知っておるの。あそこは誰しも入れるところではない。家に来た時も、神気がダダ漏れじゃったから、うまく扱えるように連れていかれたんじゃろう」
「ちょっと待ってよ。だったらじいさんが呼びに行けばいいんじゃん」
「儂はもう天狐の位は返しておる。それに力も衰えておるからあそこまではもう飛べん。どうする?記憶を消すか?そのくらいの力はまだまだ残っておる」
「警察……ですが」
ピリピリとした雰囲気と言うよりは怒りに近い気が漏れ、流石にみんな固まっている。
かく言う自分も久しぶりに恐怖を感じた……この爺さん。いや、当主はどれだけの力を秘めているのだろう……
自分の父の兄に当たるので、本来ならばもっと気軽に話せるのだが、目の前にするとつい敬語で話してしまう。
そのくらい普段から威厳があり、尊敬をしている。
だが、こんなにも怒ったところは見たことがない。
「冬弥も呑気なものじゃが、あの子供……強さと弱さの間で揺れておる」
「それってどっち?」
「強ければ、この程度跳ね返す精神もあるじゃろう。じゃが、基本優しい子供と聞いていた。他人を傷つけたくない。そればかりじゃと弱さにもなる。まだ人の年で15ならば仕方もない。鍛えるにはまだまだ幼すぎる。それ故、儂の狐にも怯えておる」
「じいさんの狐じゃ怖いって。俺も怖いもん」
「何を言うか小童が!初めて会って、冬弥が何故子にしたのか良くわかった」
「それはどういう事ですか?」
「儂も古くからの言い伝えで聞いたのみじゃし、本人に会ってもおらんが、同じ狐と聞いて分からんか?」
「……陰陽師ですか?」
「那智様?」
「おかしいと思わなかったのか?千年祭の時の階段も、時折見せるあの気配も。ただ表か裏かはわからんが……それにイタコの家系とは聞いてたが、それだけで冬弥が養子にするはずがない」
「でも、どんな力を雪翔君が持っていたとしても、元々は人間の親が捨てたんです!」
「それもあるだろう。雪翔に自覚がなければただの人だ」
「そう。もしかしたら、今回は今までの記憶とともに、その記憶が戻る可能性もありうる」
「わ、私は……雪翔君は雪翔君で……元気でいてくれればそれで……うっ……グスッ」
「ほれほれ、泣かずとも良い。婆さんの狐は殆どが癒し狐じゃ。体の方はなんとかしてくれる。でじゃ、もう一つの方法として雪翔の記憶を消し塗り替えることも出来るが」
「それは、仙以上の者でないと。我々では一部の記憶の書き換えしか……それに暗黙のルールでは理に逆らうなとあります」
「儂が出来る」
「仙様なのですか?」
「元、天狐じゃ」
「じいさんが!?」
「昔は正体は明かしてはならんだ。最近では城に住まうもの、仙狐・天狐も本当におるのかと疑うものも出てきた。そこで久々に出た天狐の名を明かすことで、民に天狐は居ると認めさせるしか無くなった。今居る天狐も追々名が出るじゃろう。天狐のみ苗字が与えられるが、偶然にも『早乙女』の名を貰ったと聞いた」
「冬弥様にお会いになられたのですか?」
「一度家に来た。身なりはそれなりに整えてあったが、手足はやつれ、頬もこけておった。爪も割れておったの……二三日滞在すると言っておったが、置き手紙一つでまたおらんくなった。多分天狐の庭におるのじゃろう」
「あの空に浮かぶ岩……ですか?」
「よく知っておるの。あそこは誰しも入れるところではない。家に来た時も、神気がダダ漏れじゃったから、うまく扱えるように連れていかれたんじゃろう」
「ちょっと待ってよ。だったらじいさんが呼びに行けばいいんじゃん」
「儂はもう天狐の位は返しておる。それに力も衰えておるからあそこまではもう飛べん。どうする?記憶を消すか?そのくらいの力はまだまだ残っておる」
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