下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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盛夏

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土間へ行くと、呑気にお茶を飲んでいる紫狐がいたので夜心配したと伝えると、「罰です!」と言われてしまった。子供じみているが、ずっと一緒にいるので、怒っているのも良く分かっている。

「紫狐は何も聞いてなくて、何も知らないことにしました。那智様がそうしろと言ったからですよ?でも、校舎に入るなら金と銀と阻止します」

「分かった。那智さんはなんて?」

「必ず隆弘さんと居るように伝えなさいと言われました」

「そっか。あ、栞さんは?」

「何も知りません、今は畑にお野菜を取りに行ってます……紫狐が心配するのもわかってほしいですー。」

そう言って泣きながら影に戻ってしまう。

ごめんね、しーちゃん。と言って、米が炊けていたのでぬか漬けを出して切り、お皿に盛り付けていく。

「おはよう、もう切ってくれたのね。助かるわ」

「朝ごはん何?」

「いつもと同じよ。と言いたいところだけど、暑くなってきてみんな食欲落ちてるみたいだから、お握りにしようかなって思ってるの」

「それなら僕もできるよ」

出来たおにぎりは三種類。鮭フレークにごまを混ぜたもの、梅としそをまぜたもの、最後はおかか。

ラップで包んで握るので手も汚れないから早く出来る。

一人一個ずつかな?と数えていると、特大おにぎりが最後に出てきた。

「海都君専用?」

「そう、あの子だけは食欲落ちないのよねぇ。ああ、今日の夕方なんだけど、弁護士さんが来るって使いが来たわ」

「うん……僕、午前中に隆弘さんに街の本屋さんまで連れてってもらうから」

「そうなの?気をつけていくのよ?」

なんにも疑っていない栞に嘘をつくのは気が引けたが、言うと止められてしまう。

朝ごはんを食べて車椅子を乗せてから、行ってきますと出掛ける。町の中心街までは車で30分は掛かるので、早く出ても何も言われないだろう。

学校の近くの公園に車を止めて、車椅子で移動する時に、栞に嘘をついてしまったと隆弘に言う。

「仕方ないさ。街は無理だけど、同じ本屋があるからそこに寄って帰ればいい」

ゆっくりと校庭の見えるところまで移動すると、野球部が練習していて、違う場所でもクラブ活動が行われていた。

「もう少し行くと校門だが……大丈夫か?」

「うん。ここからも校舎は見えるけど、あまり実感がないかな。僕はクラブとかしてなかったのかな?」

「してなかったよ」

「あそこは何?」

と指を指したところは旧校舎の一部と言われ、嫌な感じはしたがそのことには触れずに校門まで移動する。

「大きいね……」

「大学もここから入れるから。車のやつは許可がいるけど、違う入口に駐車場もあるし、サークルの部室もある。この学校かなりでかいんだよ」

「大学ってどんな感じ?」

「どんなと言われてもなぁ。学部によって違うと思うぞ?サークル活動は盛んだな。俺はどこにも入ってないけど。で、どうだ?何か思い出せそうか?」

「さっきちらっと見えた旧校舎……あそこが何だか嫌な感じがした……」

「そこでお前はいつもやられてたらしい」

「中には入れないんだよね?」

「守衛室があるだろ?そこに学生証や入門証見せないといけないんだ。それに今日は見るだけの約束だろ?」

「そうだね……」

「車に戻るぞ?本屋に行く時に学校の周り一周するから見るといい」
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