下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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全ての始まりと終わり

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帰り道、良かったわねーと御機嫌の栞が言うと、冬弥はまだ何も終わっていませんよ?と意味深なことを言う。

「だって学校に行けるんだよ?」

「それはいい事です。ですがまず、担任の交代と校舎内での雪翔の不安になるべき場所での対応策も必要、何度も倒れるわけにも行かないでしょう?」

「ほとんど旧校舎だったし」

「雪翔、お前学校で今後何も無いと言いきれるか?」

「?」

「那智、行けばわかることですよ。今後、家と違って車椅子でも大変なことが沢山出てきます。人間関係も。それを乗り越えていかないといけないんですが、前のようなイジメなどがあればすぐに報告してくださいね?」

「うん……」

「いいですか?パパに報告ですよ?」

「冬弥……しつこい!」

帰りに学校に持っていくカバンが、前のだと持てないのでとショッピングモールに寄る。

「俺は一度戻って弁護士と話してくるから、夜に行く」

「母屋に来てくださいね」

ふっと消えたので、ちょっと便利だなと思いながら、カバン専門店に行って車椅子の取っ手にかけられるようなのがないかと見て回る。

「お弁当が入るものがいいです。後は常備薬の巾着とかすぐに取り出せる物……」

「ねえ、あれはダメ?」と四角い形で肩紐がついているので、調節すれば車椅子の左右の持ち手に掛けられそうなカバンを指さす。

これですか?と掛かっているのを取って見せてくれる。

底もしっかりしてるから、お弁当と水筒と入るよ?と栞にも見せる。

「色はどうします?確かカバンは自由でしたよね?」

「黒がいいけど……この紺もいい色だし」

「二つ買います?」

「一つでいいよ!」

「そうですか?」と中を見る。

「これならポケットもあるので使いやすそうですねぇ」と調整して後ろにかけてくれる。

「一度取ってみてください。学校では一人で出来ないと困りますからねぇ」

上半身をひねるとちゃんと取れたので大丈夫と言って、結局黒に決める。柄はなく、メーカーの印が前もらったものと同じ大鍋の刻印がおしてある。

長い紐がついた小さいポーチを薬入れにするのに、それも一度車椅子にかけて見る。

「椅子の横に収まるからいいんじゃない?」

栞に言われてカバンとポーチを買って、ショッピングモールを出てから、洋食屋さんへと行く。

「ここのオムライス、絶品なんですよ!」

「通りはするけど来たことはないわよね?」

「僕も初めて」

オムライス三つ頼んでセットのドリンクはコーラにし、ふわふわのオムライスに、今度作ってと言うと、賢司が前も卵をしてくれて、なかなか上手くできないと冬弥が珍しくしょんぼりしていた。

「居酒屋でよく作るそうで、卵料理は負けますねぇ」

「あ、私も食べました玉子焼き。美味しかったですよ」

「教えてもらうとか?」

「教えてもらいましたよ?やり方はわかるんですよ。でもなかなかうまく行きません」

パクパクと食べてコーラを飲んでいると、窓をコンコンとされ、見ると何故かお爺ちゃんが手を振っている。
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