61 / 76
非日常
.
しおりを挟む
みんなが揃い夕飯が来たが、中々みんな口を開かずお通夜のようにシーンとしていた。
「お爺ちゃん……」
「ん?」
「まだかな?」
「冬弥は天狐じゃ。秋彪と玲じゃったか?あ奴らもそれなりに強いじゃろう。儂等は待つしかないんじゃ。その為にはこちらもちゃんと食べて力を蓄えて置かんとな」
「うん」
「雪翔、心配だろうが、食え。そしてちゃんと寝ろ。冬弥が帰ってきた時怒られるのは儂のような気がするからな!航平もだぞ?」
「はい。いただきます。雪翔も無理してでも食べないと。な?」
「そうだよね。あ、栞さんもちゃんと食べなきゃね。それは僕が怒られると思う」
「赤ちゃんの為……だものね。冬弥様達を信じましょう」
みんなで黙々と食べ、薬を飲めと言われ、飲みはしたがいつものように眠気が全然来ない。
部屋でずっと窓の外を眺めていたら、航平に寝ろと布団に連れていかれ、布団をかけられる。
航平も那智が心配だろうに、いつも他の人のことを優先して世話を焼いてくれる。そこがいい所であり、優しすぎるところでもあると思うのだが、ありがとうとしか言えず、航平には何もお返しができていない。
「航平ちゃん、明日には冬弥さん帰ってくるよね?みんなも大丈夫だよね?」
「うん。秋彪君や玲さん兄弟って血の気多そうだし、他のお社の狐の人も手伝ってくれてるとかなんとか言ってた。だから、寝よう。何かあったらみんな起こしてくれるよ」
「うん。お休み」
その後もうとうととしながら、寝たり起きたりを繰り返し、少し空が明るくなった頃、表が騒がしくなってきたので周太郎を呼ぶ。
「坊ちゃん、冬弥様がお帰りに。玲様もご一緒です」
「は、早く連れてって!航平ちゃん……は寝てるからいっか!早く!」
「は、はい」
おんぶして貰っての方が早いからとお願いして玄関まで連れて行ってもらい、使用人のみんなを避けて前に出てもらう。
「と、冬弥さん!玲さん!」
着物はボロボロになっていたが、二人共大きな怪我はなく、笑っていたので少し安心しながらも翡翠を出す。
「ひーちゃん、治せるよね?二人の怪我なおして」
「ひーたん眠……ひゃー!クサイ!」
「クサイって言わないの!早く!」
「いちごー」
「あげるからお願いだよ!」
フワフワっと飛んで冬弥の肩に乗ったと思ったら、「くちゃい!むむーーー!」と言いながらも、傷口に向かって手を伸ばしている。
「とにかく中で治療したらどうじゃ?周太郎、みんなに食事の用意と、お湯とタオルを用意させよ。他のものは京弥と栞さんを呼んでくるのじゃ」
祖父の一言で集まってきていた使用人たちもみんな動き出し、器用に肩に乗った翡翠と一緒に、冬弥と玲が客間に入る。
用意されたお湯で二人共顔や手などを拭き、座布団の上で胡座をかいたままガツガツと食事をしている。
「すごい食べっぷり……」
「すいませんねぇ。力を使うとお腹が空くんですよ」
「冬弥様……」
栞が二人にお茶を渡し、もう少しゆっくりと食べてくださいとお茶碗にご飯のお代わりも注いで渡し、雫に花、翡翠とで治療が行われている。
「冬弥様ー!」
「何ですか?寝てていいですよ?」
「し、紫狐は全く気づきませんでした!琥珀様も気付いていたのに教えてくれなかったものですから」
「気配は消してましたから。気にしなくていいですよ?それより、二人に怪我はありませんね?」
「はい!」
「紫狐は暫く父上か兄の影に入れてもらいなさい。私の中は今穢れてますから」
「冬弥様、ほかの者は?桜狐や水狐達は!?」
「中で結界張ってます。暫くかかるので、仲良くしていてください。そうですねぇ……兄上頼めますか?」
「いいよ。紫狐、一度影に入ってみてくれるかい?私の影はみんな知ってるだろう?」
「で、ですが……」
「いいから」
「分かりました」
「お爺ちゃん……」
「ん?」
「まだかな?」
「冬弥は天狐じゃ。秋彪と玲じゃったか?あ奴らもそれなりに強いじゃろう。儂等は待つしかないんじゃ。その為にはこちらもちゃんと食べて力を蓄えて置かんとな」
「うん」
「雪翔、心配だろうが、食え。そしてちゃんと寝ろ。冬弥が帰ってきた時怒られるのは儂のような気がするからな!航平もだぞ?」
「はい。いただきます。雪翔も無理してでも食べないと。な?」
「そうだよね。あ、栞さんもちゃんと食べなきゃね。それは僕が怒られると思う」
「赤ちゃんの為……だものね。冬弥様達を信じましょう」
みんなで黙々と食べ、薬を飲めと言われ、飲みはしたがいつものように眠気が全然来ない。
部屋でずっと窓の外を眺めていたら、航平に寝ろと布団に連れていかれ、布団をかけられる。
航平も那智が心配だろうに、いつも他の人のことを優先して世話を焼いてくれる。そこがいい所であり、優しすぎるところでもあると思うのだが、ありがとうとしか言えず、航平には何もお返しができていない。
「航平ちゃん、明日には冬弥さん帰ってくるよね?みんなも大丈夫だよね?」
「うん。秋彪君や玲さん兄弟って血の気多そうだし、他のお社の狐の人も手伝ってくれてるとかなんとか言ってた。だから、寝よう。何かあったらみんな起こしてくれるよ」
「うん。お休み」
その後もうとうととしながら、寝たり起きたりを繰り返し、少し空が明るくなった頃、表が騒がしくなってきたので周太郎を呼ぶ。
「坊ちゃん、冬弥様がお帰りに。玲様もご一緒です」
「は、早く連れてって!航平ちゃん……は寝てるからいっか!早く!」
「は、はい」
おんぶして貰っての方が早いからとお願いして玄関まで連れて行ってもらい、使用人のみんなを避けて前に出てもらう。
「と、冬弥さん!玲さん!」
着物はボロボロになっていたが、二人共大きな怪我はなく、笑っていたので少し安心しながらも翡翠を出す。
「ひーちゃん、治せるよね?二人の怪我なおして」
「ひーたん眠……ひゃー!クサイ!」
「クサイって言わないの!早く!」
「いちごー」
「あげるからお願いだよ!」
フワフワっと飛んで冬弥の肩に乗ったと思ったら、「くちゃい!むむーーー!」と言いながらも、傷口に向かって手を伸ばしている。
「とにかく中で治療したらどうじゃ?周太郎、みんなに食事の用意と、お湯とタオルを用意させよ。他のものは京弥と栞さんを呼んでくるのじゃ」
祖父の一言で集まってきていた使用人たちもみんな動き出し、器用に肩に乗った翡翠と一緒に、冬弥と玲が客間に入る。
用意されたお湯で二人共顔や手などを拭き、座布団の上で胡座をかいたままガツガツと食事をしている。
「すごい食べっぷり……」
「すいませんねぇ。力を使うとお腹が空くんですよ」
「冬弥様……」
栞が二人にお茶を渡し、もう少しゆっくりと食べてくださいとお茶碗にご飯のお代わりも注いで渡し、雫に花、翡翠とで治療が行われている。
「冬弥様ー!」
「何ですか?寝てていいですよ?」
「し、紫狐は全く気づきませんでした!琥珀様も気付いていたのに教えてくれなかったものですから」
「気配は消してましたから。気にしなくていいですよ?それより、二人に怪我はありませんね?」
「はい!」
「紫狐は暫く父上か兄の影に入れてもらいなさい。私の中は今穢れてますから」
「冬弥様、ほかの者は?桜狐や水狐達は!?」
「中で結界張ってます。暫くかかるので、仲良くしていてください。そうですねぇ……兄上頼めますか?」
「いいよ。紫狐、一度影に入ってみてくれるかい?私の影はみんな知ってるだろう?」
「で、ですが……」
「いいから」
「分かりました」
0
あなたにおすすめの小説
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
課長と私のほのぼの婚
藤谷 郁
恋愛
冬美が結婚したのは十も離れた年上男性。
舘林陽一35歳。
仕事はできるが、ちょっと変わった人と噂される彼は他部署の課長さん。
ひょんなことから交際が始まり、5か月後の秋、気がつけば夫婦になっていた。
※他サイトにも投稿。
※一部写真は写真ACさまよりお借りしています。
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
子持ち愛妻家の極悪上司にアタックしてもいいですか?天国の奥様には申し訳ないですが
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
胸がきゅんと、甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちだというのに。
入社して配属一日目。
直属の上司で教育係だって紹介された人は、酷く人相の悪い人でした。
中高大と女子校育ちで男性慣れしてない私にとって、それだけでも恐怖なのに。
彼はちかよんなオーラバリバリで、仕事の質問すらする隙がない。
それでもどうにか仕事をこなしていたがとうとう、大きなミスを犯してしまう。
「俺が、悪いのか」
人のせいにするのかと叱責されるのかと思った。
けれど。
「俺の顔と、理由があって避け気味なせいだよな、すまん」
あやまってくれた彼に、胸がきゅんと甘い音を立てる。
相手は、妻子持ちなのに。
星谷桐子
22歳
システム開発会社営業事務
中高大女子校育ちで、ちょっぴり男性が苦手
自分の非はちゃんと認める子
頑張り屋さん
×
京塚大介
32歳
システム開発会社営業事務 主任
ツンツンあたまで目つき悪い
態度もでかくて人に恐怖を与えがち
5歳の娘にデレデレな愛妻家
いまでも亡くなった妻を愛している
私は京塚主任を、好きになってもいいのかな……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる