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守り
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目が覚めると、祖父の家に作ってもらった自分の部屋だと言うことがわかり、体を起こす。
「ぼ、坊ちゃん!」
「周太郎さん……僕、どのくらい寝てたの?」
「三日です。もう心配で心配で……すぐに御館様たちに知らせてきます」
バタバタと周太郎が出ていき、横にあった桶の水とタオルで軽く顔を洗う。
「雪翔!良かった……」
「京弥さん!冬弥さん達は?」
「今あんまり社は離れない方がいいから戻ってもらった。代わりに秋彪君が来てるよ」
「秋彪さんは怪我は?」
「彼もボロボロでね、合う着物がなかったから、今栞さんの御両親の家に見繕いに行ってる。元気なものだよ」
「そっか……みんな戻っちゃったのか……」
「あ、那智は航平君と南の家に行ってるよ。親子手続きの事もあるから。今夜にでも戻ってくると思うけど、雪翔はもう少しここで休んでいった方がいい」
「でも……」
「昴さんの治療は終わってるけど、まだ動くのは早いと思うんだ。花ちゃんが毎日治しに来てくれるから、せめてあと一日だけでも大人しく寝ててくれたら嬉しいんだけど」
そう言われてしまうと、「はい」としか返事ができず、横になろうとした時に祖父母が入ってきた。
「雪翔。どこか痛まんか?何かおかしなところはないか?」
「な、無いと思う」
両腕をがっしりと握られブンブンと前後に振られるので、その手を離してほしいと思いながら、祖母に目をやると、ちゃんと分かってくれていたのか、祖父を退けてくれる。
「あのね、金ちゃんと銀ちゃんは広間でまだ寝てるの。疲れたんでしょうねぇ。お布団に入れても全く起きなかったのよ?それと、白龍と黒龍だったかしら?戻ってきて話を聞いたのよ。私達は見てないけど、ちゃんと岩戸の中に入ったそうよ。今は岩戸も冬弥が術で塞いでいるから、誰にも開けることは出来ないわ。だから安心して寝てなさい」
「うん、でも、どうやって帰ればいいの?」
「城から帰れる。昴が迎えに来てくれるで、それまで雪翔はゆっくりとしておればいい」
「あ、京弥さんの影に入ったしーちゃんは?」
「今、あのチビちゃんたちを見てるよ。翡翠も出てきてしまってね、呼んでこようか?」
「僕、見に行きたい」
「じゃが、車椅子もないしのう。こっちにも一つ置いておかねばいかんの。周太郎、連れて行ってやってくれんか。儂等も一緒に行くとしよう」
「じゃあ私はお茶の用意でもしてきますね」
ほほほほほっ!と出ていく祖母に、呑気にした祖父に見えるが何か隠しているように、少し雰囲気がピリピリとしている。
部屋の中では金も銀も気持ちよさそうに寝ており、隅には白龍と黒龍が姿を現して座っていた。
「白!黒!怪我は無い?」
「雪翔の事ずっと待っておったみたいじゃ。儂等が戻っても良いと言っておったんじゃが、主の命しか聞かんと言うての……」
「白も黒も、そう言う時はお爺ちゃん達の言う事聞いてよ……」
「申し訳なかった。だが報告ができていない」
「そんなの後で良かったのに。疲れて無いの?」
「我等は大きな怪我がない限りこれで十分です。主の体は……」
「主ってやつやめてよ。みんなと同じように呼んで欲しいんだけど……」
「それは御命令か?」
「う、うん」
「承知した」
黒の方が話がわかるなと思いながら、祖父から聞いた話をして、それがちゃんと冬弥達に見えていたのかと聞く。
「この二人は、今は二人で一人分の力が出るが、まさか主……雪がそこまで力を使えるとは思っていなかった」
「我らの姿はちゃんと見えていたと聞くし、あの光の中、岩戸の戸が少し開いて中に入ったのは確認しました。その後、あとをつけようかとも思いましたが、我らもこれ以上離れない方が良いと判断し、暫く見張った後黒が冬弥様を呼びに行き、封をしてもらいました。この後、金と銀が眠りにつき、翡翠は二人の治療で今縁側で眠っております」
「ぼ、坊ちゃん!」
「周太郎さん……僕、どのくらい寝てたの?」
「三日です。もう心配で心配で……すぐに御館様たちに知らせてきます」
バタバタと周太郎が出ていき、横にあった桶の水とタオルで軽く顔を洗う。
「雪翔!良かった……」
「京弥さん!冬弥さん達は?」
「今あんまり社は離れない方がいいから戻ってもらった。代わりに秋彪君が来てるよ」
「秋彪さんは怪我は?」
「彼もボロボロでね、合う着物がなかったから、今栞さんの御両親の家に見繕いに行ってる。元気なものだよ」
「そっか……みんな戻っちゃったのか……」
「あ、那智は航平君と南の家に行ってるよ。親子手続きの事もあるから。今夜にでも戻ってくると思うけど、雪翔はもう少しここで休んでいった方がいい」
「でも……」
「昴さんの治療は終わってるけど、まだ動くのは早いと思うんだ。花ちゃんが毎日治しに来てくれるから、せめてあと一日だけでも大人しく寝ててくれたら嬉しいんだけど」
そう言われてしまうと、「はい」としか返事ができず、横になろうとした時に祖父母が入ってきた。
「雪翔。どこか痛まんか?何かおかしなところはないか?」
「な、無いと思う」
両腕をがっしりと握られブンブンと前後に振られるので、その手を離してほしいと思いながら、祖母に目をやると、ちゃんと分かってくれていたのか、祖父を退けてくれる。
「あのね、金ちゃんと銀ちゃんは広間でまだ寝てるの。疲れたんでしょうねぇ。お布団に入れても全く起きなかったのよ?それと、白龍と黒龍だったかしら?戻ってきて話を聞いたのよ。私達は見てないけど、ちゃんと岩戸の中に入ったそうよ。今は岩戸も冬弥が術で塞いでいるから、誰にも開けることは出来ないわ。だから安心して寝てなさい」
「うん、でも、どうやって帰ればいいの?」
「城から帰れる。昴が迎えに来てくれるで、それまで雪翔はゆっくりとしておればいい」
「あ、京弥さんの影に入ったしーちゃんは?」
「今、あのチビちゃんたちを見てるよ。翡翠も出てきてしまってね、呼んでこようか?」
「僕、見に行きたい」
「じゃが、車椅子もないしのう。こっちにも一つ置いておかねばいかんの。周太郎、連れて行ってやってくれんか。儂等も一緒に行くとしよう」
「じゃあ私はお茶の用意でもしてきますね」
ほほほほほっ!と出ていく祖母に、呑気にした祖父に見えるが何か隠しているように、少し雰囲気がピリピリとしている。
部屋の中では金も銀も気持ちよさそうに寝ており、隅には白龍と黒龍が姿を現して座っていた。
「白!黒!怪我は無い?」
「雪翔の事ずっと待っておったみたいじゃ。儂等が戻っても良いと言っておったんじゃが、主の命しか聞かんと言うての……」
「白も黒も、そう言う時はお爺ちゃん達の言う事聞いてよ……」
「申し訳なかった。だが報告ができていない」
「そんなの後で良かったのに。疲れて無いの?」
「我等は大きな怪我がない限りこれで十分です。主の体は……」
「主ってやつやめてよ。みんなと同じように呼んで欲しいんだけど……」
「それは御命令か?」
「う、うん」
「承知した」
黒の方が話がわかるなと思いながら、祖父から聞いた話をして、それがちゃんと冬弥達に見えていたのかと聞く。
「この二人は、今は二人で一人分の力が出るが、まさか主……雪がそこまで力を使えるとは思っていなかった」
「我らの姿はちゃんと見えていたと聞くし、あの光の中、岩戸の戸が少し開いて中に入ったのは確認しました。その後、あとをつけようかとも思いましたが、我らもこれ以上離れない方が良いと判断し、暫く見張った後黒が冬弥様を呼びに行き、封をしてもらいました。この後、金と銀が眠りにつき、翡翠は二人の治療で今縁側で眠っております」
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