下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは

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守り

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「そうだったんだ。ありがとう。もう戻ってもいいよ?あとは僕がこの子達見てるから」

「影にお戻し下さい。その方が癒しも早いかと」

「そうなの?だったら影に戻しておくよ。お疲れ様」

そう言うと姿がフッと消え、ポケットのキーホルダーが少しだけ重くなるのを感じた。

「雪翔、どうやって戻すんだ?」

「うーん、分かんない!しーちゃんに連れてってもらおうかなって思ってるけど」

「それがいいじゃろう。周太郎呼んできてくれんか」

周太郎が呼びに行っている間に、祖母が小さい鍋でお粥を持ってきてくれたので、それを食べるのに器に移していると、「ひーたんのイチゴ!」といきなり翡翠に飛びかかられる。

珍しく小さくてクリクリとした目には涙が溜まっており、ごめんねと言って頭を撫でて影に戻ってもらったのだが、その後ろで号泣していたのは紫狐だった。

「う"ぅ"……ゆっぎーぃ、じごはごのばばべをざばざなびのばどおぼって……」

「し、しーちゃん……何言ってるか分かんない……」

「ゆっきーーー!」と飛びついてくるので、紫狐にもごめんねと謝り、金たちを中に入れてほしいと頼む。

影に二人を入れて出てきた紫狐は、京弥の中にいたのでなんの影響も受けていないこと、自分が気を失ってしまってからずっと影から外に出ていたことなどを話してくれた。

「それと、冬弥様が、那智様がお戻りになるまでは御館様のお屋敷でちゃんと寝ているようにとの伝言でした」

「うん、そうする。でも三日も寝てたんだね僕」

「熱も無かったし、普通にただ眠ってるだけだったから、周太郎が見ていてくれたのよ。さ、周太郎も安心したでしょう?あなたも休みなさい」

「ですが、坊っちゃまをお部屋にお連れしたりしないと……」

「京弥も力はあるのよ?安心して寝なさいな。寝ないなら花ちゃんを……」

「い、いえ。では失礼します」と逃げるように部屋を出ていってしまった。

「何で花ちゃん嫌がるの?」

「周太郎がまだ幼い頃に、裏で薪を拾っておったんじゃが、その時に転けたんじゃ。足を切ってしまって、縫わねばと思って花に頼んだんじゃが、花が感覚を麻痺させるのを忘れて傷を塞いだもんじゃから、家に悲鳴が響き渡ってのぅ。それ以来、花の治療の世話にならんようにと必死じゃの」

「そうねぇ、あのころはまだ花ちゃんもすべてうまく使いこなせなかったし」

「周太郎さんは、歳をとるの?」

「普通よりは遅いが、儂等よりはやはり先に……じゃな」

「航平ちゃんみたいな感じ?」

「それとはまた違うが、儂等はなかなか年は取らん。元天狐と仙人じゃから、使用人には仙の末席に入ってもろうとる。末席は普通の民より歳をとるのが遅い。じゃが、ほかの民と何ら変わらんのじゃ。病気もするし怪我もする。その怪我が命取りになることもある」

「お爺さん!」

「もう知っても良いじゃろ?風の一族も仙の端くれじゃ。この家におる風の一族は儂が入れた。頭目はまだ見ておらんじゃろうが、そのうち会えるようにしよう」

「ただいまー」と玄関で声がし、部屋に秋彪が入ってきたので振り向くと、頬に大きな絆創膏が貼ってあり、腕や足にも包帯が巻かれている。

「秋彪さん!」

「よう、起きたか?」

「起きたかじゃなくて、その怪我大丈夫なの?」

「腕はヒビが入ってたけど、婆ちゃんが治してくれた。少し痛むけど問題は無いな」

「ごめんね……」

「何で雪翔が謝るんだよ。あの変なやつ、あいつが社を荒らしに来たから、あいつのせいだって!」

「社を荒らす?何それ。僕聞いてない……」

ヤバイと言った顔をしたが、聞いてしまったものは仕方が無い。ちゃんと話してほしいと頼み、みんなで机を囲んで話を聞くことになった。

「えっと、那智がみんなを逃がしただろ?その時に兄貴と俺と分かれて、俺は冬弥さんの方に行ったんだ。で、あいつが逃げたから追いかけてたんだけど見失って戻ってみたら、東……冬弥さんの社で兄貴と冬弥さんが苦戦してて、加勢しようとしたんだけど、他の社を見て来いって言われて、那智の社と兄貴の社までは何とかなったんだけど、俺の社でめちゃくちゃ暴れてくれたらしくて、俺も本気を出さなきゃいけなくて……」

「それでお主の社を壊しておったら意味無いわ!」
「お爺ちゃん……」

「あっちでは地震で一部崩れたことになってるんだけどさ、本殿じゃなくてよかったよ。人もいなかったし……」

「僕が変な力持ってたからみんなに迷惑かけちゃったんだ」
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