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守り
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「今日って何かあるの?」
「祝い事じゃないの。定期的に集まって報告会ですって。今迄東の社でしてたらしいんだけど」
「そんなことしてたんだ」
「周りの小さなお社からの報告もあるみたいで、最近はみんな前より忙しいみたいよ?」
「へぇ」
先に荷物を置いてくると言って部屋に戻り、着替えて戻るといつの間にかみんなが集まっていた。
「よっ!久しぶり」
「うん、玲さんが最後?」
「俺のとこ一番遠いからな」
「早く出ればいいだけだろ?兄貴はいつもギリギリなんだよ」
「間に合ったんだからいいだろ?」
兄弟で騒いでいる間に、料理ができたから早く来てと言われてリビングに行く。
「雪翔君と私はこっちね。酒盛りしながら話すわよ?いつもそうだから」
その言葉通り、冬弥が日本酒を出したら、みんなも張り合うように出し、飲み比べながら摘みを食べているようにしか見えない。
「はい、雪翔君のご飯」
「ありがとう。チキンの香草焼き?」
「そうなの。また本見て作ったんだけど」
「美味しそう。それにいい匂いだよ」
「ほんと?じゃ食べましょうか」
サラダがついていて、ご飯と味噌汁でお腹が一杯になり、ごちそうさまと薬を飲んで居たら、キィー!キーッと音がするので、窓から外を見る。
「ねえ、門が開いてるみたい」
「兄貴閉めなかったのか?」
「いや?その前に門は飛び越えたから開けてもない」
「見られてたらどうするんだよ」
「大丈夫だろ?」
「僕閉めてくる」
「結界内ですけど気をつけてくださいよ?」
「うん」
手伝いをすることは楽しいし、頼られてる感じがするので嬉しくもある。
玄関の横にあるスロープを降りて、玄関を開けて門まで行くと、目の前にはあの男。
「何でいるの?結界の中なのに」
「本体ではないですから。呼ばなくていいんですか?」
「だ、誰を?」
「皆さんを」
目を細めてニタっと笑う姿は蛇のように気持ち悪く、目の前に立っていて欲しくない気持ち悪さがこみ上げてくる。
「雪翔、何してるん……あなたどうやって……」
「夜分にお邪魔してます。結界の歪から来ました。元々式神、紙を通して入ったので分からなかったでしょう?」
「本体は外ですか。こちらに用はありません。お引き取りを!」
冬弥がきつい言い方をしたのでみんなが出てきて、それぞれに帰れと文句を言っている。
「雪翔、こっちに来なさい」
「う、うん。でも、なにかに足を掴まれてるみたいで……」
「では」
と一言言ったと思ったら、目の前に黒い穴が開き、その中に吸いこまれるように体が浮き、足から中に入っていく気持ち悪い感覚がした。
「や、やだ!冬弥さん!助けて!」
「雪翔!」
何か見えない壁があるのか、冬弥達みんながその見えない壁を叩いているようで、玲や那智は体当たりをしている。
「やめて!離してー」
もがけばもがくほど、強い力で引っ張られるので、せめてもの抵抗にと門の柵を掴む。
「諦めなさい」
「やだ!みんなが助けてくれるもん!」
強い力で更に奥に奥にと引っ張られ、手で柵を掴んでいてもだんだん痺れて指が少しずつ離れていき、もうダメだと思って、目を瞑った瞬間バリーンとガラスの割れたような音がした。
「雪翔!」
「冬弥さ……パパ!」
「もう少し辛抱してください。今助けます!」
その瞬間強風が吹き始め、目を開けていられなくなり、手の感覚だけを頼りに必死でしがみつく。
何もかもが吸い込まれる。
そんな感覚と共にふと止まった風に気を取られ手から力が抜けてしまう。
「あ……!」
「クソっ」
那智が投げた車椅子、玲が何かを言い白い玉が飛んできたと思ったら、そのまま一瞬で黒く渦巻く影の中に吸い込まれてしまった。
「冬弥さん、助け____」
「雪翔──────!」
(終)
※本作品は下宿屋 東風荘6に続きます。
「祝い事じゃないの。定期的に集まって報告会ですって。今迄東の社でしてたらしいんだけど」
「そんなことしてたんだ」
「周りの小さなお社からの報告もあるみたいで、最近はみんな前より忙しいみたいよ?」
「へぇ」
先に荷物を置いてくると言って部屋に戻り、着替えて戻るといつの間にかみんなが集まっていた。
「よっ!久しぶり」
「うん、玲さんが最後?」
「俺のとこ一番遠いからな」
「早く出ればいいだけだろ?兄貴はいつもギリギリなんだよ」
「間に合ったんだからいいだろ?」
兄弟で騒いでいる間に、料理ができたから早く来てと言われてリビングに行く。
「雪翔君と私はこっちね。酒盛りしながら話すわよ?いつもそうだから」
その言葉通り、冬弥が日本酒を出したら、みんなも張り合うように出し、飲み比べながら摘みを食べているようにしか見えない。
「はい、雪翔君のご飯」
「ありがとう。チキンの香草焼き?」
「そうなの。また本見て作ったんだけど」
「美味しそう。それにいい匂いだよ」
「ほんと?じゃ食べましょうか」
サラダがついていて、ご飯と味噌汁でお腹が一杯になり、ごちそうさまと薬を飲んで居たら、キィー!キーッと音がするので、窓から外を見る。
「ねえ、門が開いてるみたい」
「兄貴閉めなかったのか?」
「いや?その前に門は飛び越えたから開けてもない」
「見られてたらどうするんだよ」
「大丈夫だろ?」
「僕閉めてくる」
「結界内ですけど気をつけてくださいよ?」
「うん」
手伝いをすることは楽しいし、頼られてる感じがするので嬉しくもある。
玄関の横にあるスロープを降りて、玄関を開けて門まで行くと、目の前にはあの男。
「何でいるの?結界の中なのに」
「本体ではないですから。呼ばなくていいんですか?」
「だ、誰を?」
「皆さんを」
目を細めてニタっと笑う姿は蛇のように気持ち悪く、目の前に立っていて欲しくない気持ち悪さがこみ上げてくる。
「雪翔、何してるん……あなたどうやって……」
「夜分にお邪魔してます。結界の歪から来ました。元々式神、紙を通して入ったので分からなかったでしょう?」
「本体は外ですか。こちらに用はありません。お引き取りを!」
冬弥がきつい言い方をしたのでみんなが出てきて、それぞれに帰れと文句を言っている。
「雪翔、こっちに来なさい」
「う、うん。でも、なにかに足を掴まれてるみたいで……」
「では」
と一言言ったと思ったら、目の前に黒い穴が開き、その中に吸いこまれるように体が浮き、足から中に入っていく気持ち悪い感覚がした。
「や、やだ!冬弥さん!助けて!」
「雪翔!」
何か見えない壁があるのか、冬弥達みんながその見えない壁を叩いているようで、玲や那智は体当たりをしている。
「やめて!離してー」
もがけばもがくほど、強い力で引っ張られるので、せめてもの抵抗にと門の柵を掴む。
「諦めなさい」
「やだ!みんなが助けてくれるもん!」
強い力で更に奥に奥にと引っ張られ、手で柵を掴んでいてもだんだん痺れて指が少しずつ離れていき、もうダメだと思って、目を瞑った瞬間バリーンとガラスの割れたような音がした。
「雪翔!」
「冬弥さ……パパ!」
「もう少し辛抱してください。今助けます!」
その瞬間強風が吹き始め、目を開けていられなくなり、手の感覚だけを頼りに必死でしがみつく。
何もかもが吸い込まれる。
そんな感覚と共にふと止まった風に気を取られ手から力が抜けてしまう。
「あ……!」
「クソっ」
那智が投げた車椅子、玲が何かを言い白い玉が飛んできたと思ったら、そのまま一瞬で黒く渦巻く影の中に吸い込まれてしまった。
「冬弥さん、助け____」
「雪翔──────!」
(終)
※本作品は下宿屋 東風荘6に続きます。
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