黄泉津役所

研修期間

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「やだー、私も食べたいです」

「あら、早いお着きだね。すぐに持ってくるよ」

スーツをビシッと着たとても綺麗な黒髪の女性が、じーっと見てくるので、食べる手を止めて立ち上がり「井筒丈史です」とお辞儀をする。

「私は……」

「お待たせ。さ、食べとくれ」

俺、名前をまだ聞いてないんだが……

「いただきます！」

きな粉をたっぷりとつけて、食べる度に美味しいと連呼しながら食べた美女。

「あの、良かったら……」とおしぼりを渡す。

「口の周りにきな粉がついてるよ」

「ありがとう」

「慌てて食べるからだよ。丈史君も食べちゃって」

「はい」

おやつを食べ終わったところでお茶を入れ直してくれ、「私は八上と言います。今日は神長からここで働くのを口説いてこいと言われてきたのですが……大宜都さん、この子……」

「でしょでしょ？」

女性二人でなにやら盛り上がっているところ悪いのだが、この子だの、やっぱりだの、なんの話しをしているのか見えないお花畑が見えてしまう。

「口説きに来られたんですよね？お断りします。なので、プリントとか教科書とかにこの役所の名前が出てこないようにしてください」

「勿体ないわ！是非働いてちょうだい」

「勿体ないとか意味わからないんですけど」

「そうね。オーラと言えばいいのかしら？あなた素晴らしいわ」

「はぁ……」

今度は占い好きか？
そんなオーラは俺には無い！
得意だとするのならば、教室で先生に当てられないように気配を消す努力ができることくらいだ！

「とにかくね、働くって言ってもらわないと私も困るのよ」

俺は困らん！

「今人が足りなくて。働きっぷりも聞いたわよ。それに、あなた……丈史君だったわね？とーってもはっきり話せる子だし、そういう子が必要なのよぉぉぉ」

確かに言いたいことはなるべく言う性格ではある。

だからといって友達がいない訳でもなく、家族とも仲良しで、性格がキツイと言われたこともなければ、冷たいと言われたこともない。

言葉は選んでるつもりなのだが……この人達には選んで話していたら堂々巡りかもしれないかな？

「盛り上がってる所すいませんけど、俺は人間で神様って見た事ないし、本当に皆さんが神様なのか、俺をからかってるだけなのかも分かりませんし。変なところで働くより、普通にコンビニとか探すんでお断りします」とカバンを持って立ち上がる。

お花畑トークをいつまでも聞いていても仕方がない。