黄泉津役所

浅井 ことは

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祭り

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あっという間にひと月が過ぎ、京都に行っていた闇之助も戻り、志那さんに貰った札のひとつは家に。
残り二つは小さなお守りとなっていて、主に世話をする祖母と祖父に渡し、桃ちゃんも元気に過ごしていたので、あの変な手紙のことなどすっかり忘れていたのに。

「おとーちゃんしんぶん。たけちゃんお手紙」と朝のお手伝いと毎日ポストから新聞を持ってきてくれる桃ちゃん。

まだたまに着物を着たがるが、祖母がお祭りに着ていく浴衣を買ってくれたと言うので、それまでは楽しみにしておくと普通の洋服を着ている。

「久しぶりの葉っぱだ。闇之助ー!葉っぱ来たよー」

「うるさいなぁ朝から」

「葉っぱの手紙。葉っぱといえばタヌキだよね?」

「んな訳あるか!」

手紙はまだ見てないのだが、封を開けた瞬間落ちたのが葉っぱだったので、便箋を見ると『さみしい』と書いてある。

「気持ち悪っ!」

「あー!」と頭をボリボリ。

「今まで乗ってなんだったの?」

「前まではお前への脅しと思ってたんだよ。だけどこれ、アイツだわ」

「あいつ?」

あいつじゃ分からないんだけど、珍しく変な顔をするので「任せていいの?」とだけ聞く。

「この件は俺が何とかする。桃花は?」

「朝ごはんタイム!」

「月末に祭りがあるだろう?あれ、桃花も連れてくのか?」

「楽しみにしてるよ?浴衣も用意したって」

「中止にしたらダメか?」

「闇之助が嫌われていいなら中止にするけど」

ガクッとした闇之助が、とりあえず考えると言いながら下に降りて行ったので、制服に着替えて荷物を持っていくと、「たまご、れたす、おにぎり」と食べ物の名前もだいぶ覚えて楽しそうに食べているが、ご飯を急いで食べて「行ってきます」と弁当を貰って闇之助の送り。

もう周りも気にならなくなったのか、最初の頃に言い訳していた自転車が壊れただの、色んなめんどくさい事が無くなった。

「いってらっしゃぁーい」と風太と桃ちゃんの元気な見送りで、闇之助に送って貰って学校に着いたのは八時丁度。

「よし、いつもの時間!」

「丈史、前から思ってたんだが、お前って決まった時間好きだな」

「学校って時間割通りじゃん。だから、多少のズレはあっても時間通りに全部終わるとスッキリするんだよね。じゃあ行ってきます」

「おい、帰りはバスで来いよ」

「え?」

ちょっと面倒臭いなと思っていると、「葉っぱのやつに会ってくるから、バスでバイトにいけ」と言われて「分かった」と教室に向かう。

やはり早い時間はほぼ人が居なくて、少し取り残されたようなそんな空気感が実は好きだったりする。

十五分頃になると半分以上が登校するので、その間の時間に席でのんびりするのが日課なのに……

「なんで机の中まで葉っぱなんだよっ!」

机を下に向けて中を出し、放棄とちりとりで朝から掃除。

俺のほのぼのタイムを返してくれ!



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